表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/114

78 悪夢顕現

ゴブリン→小緑鬼

オーガ →大牙鬼


…ほぅ?

 その咆哮を聞いて、ある者は身体を硬直させ、またある者は腰を抜かし、更にある者はその場から逃走しようとする。


(なんて威圧だ…っ!)


 力が抜けて屈しそうになる足を無理矢理踏み締めて、俺はその場で立ち竦む。


チラッ…


ピクピク…


「…っ!?」


 唯一自由に動かせた目で周囲の状況を見てみると、歯鼠や角兎といった一部の G ランク(最弱)魔物が口から泡を吹いて倒れていた。

 本来危機に敏感な歯鼠や耳の良い角兎には、先程の咆哮は致命的な攻撃となったのだろう。


「「「「「ギャギャギャ~!!」」」」」


 人や四足魔物が恐慌をきたす中、「勇者」や特異個体ウリボアに蹂躙されていたゴブリンは沸き立つ。

 それはまるで、劣勢に立たされた軍に一騎当千の英雄が加勢したような熱狂ぶりであった。


ノソリ…


 そんな緩慢な動作で森から、乾いた血のような色の肌のオークより更に一回り巨躯が姿を現す。

 牙を生やした厳つい顔に、頭には2本の角。

 鍛え上げられた筋骨隆々の肉体に、右手には血の染み付いた丸太の棍棒を持つ。


「オーガだ…。」


 ついに森から全身を現した〈初心者の森〉の主、オーガ。

 その威容は、〈初心者の森〉で狩りをする冒険者に「絶望」を感じさせるには十分であった。


ポゥ…


 オーガに奪われた視界の端で、何かが光った。


「っし、先手必勝おぉっ!」


 誰もがオーガの威容に動けない中、そう叫んで「勇者」が果敢にオーガに攻め掛かる。


ゴォンッ!


 矢のように飛び出し、俺の目には辛うじて追えた「勇者」が振るった黒剣を、オーガは右手の丸太で受け止めた。

 

「何っ!?」


 そのことに「勇者」も驚愕する。


「ガアアァッ!」


ブンッ…!


 右手の丸太で「勇者」の黒剣を受け止めたまま、オーガは空いていた左手を振るう。


ドンッ!…パリンッ


「ぐはあぁっ…!?」


…ドーンッ!


 オーガの拳を受け、時を戻すかのようにパーティーの元に吹き飛ばされた「勇者」。


「「勇者」様っ…!」


「いてて…、やっぱりソロ討伐はまだ無理かぁ…。」


 悲痛な声で叫び「勇者」を助け起こす「聖女」だが、当の「勇者」本人は大したダメージを受けていなさそうだ。


「「勇者」様、私達も共に戦います!」


「“達”って…、勝手に数に含めないで欲しい…。

 まぁ良いけど。」


「私は「聖女」様が協力すると言うから手を貸すのだ!

 …勘違いするなよ?」


「う~ん…、仕方ないかぁ。

 分かった、トドメは僕に任せて!」


 どうやらオーガには「勇者」パーティー全員で対処に当たるようだ。

 

「ガ?…ゴガァアアァッ!」


 倒したと思った「勇者」が思ったよりダメージを受けておらず、数を増やして再び向かって来ることに対し、オーガは困惑したような鳴き声を洩らした後二度(ふたたび)の咆哮。


「「「「「ギャギャギャ~ッ!!」」」」」


 それは最初のような圧力は伴わなかったが、ゴブリンの軍団が呼応するように動き始める。


「っ、予定通りオーガは「勇者」に任せる!

 憲兵隊及びその他の者は、引き続き魔物を掃討せよ!」


「う、うおおぉっ!!」


 オーガを首魁としたゴブリンの軍団と、「勇者」を擁立しバーンさんが総括する憲兵隊・冒険者連合の二つの軍団が雌雄を決するべく、今最初で最後の激突をする。




















 …かに思われた。


「プゴォオオォッ!!」


 「勇者」の台頭とオーガの出現により忘れられていたが、元々この戦いは三つ巴の様相を描いていた。

 人の将が「勇者」、二足の魔物の将がオーガだとして、四足魔物の将は何か?

 三つ巴と表現したが、別に四足魔物は人や二足の魔物のように四足魔物で纏まっているわけでは無い。

 しかし言ってしまえば“寄せ集め”に他ならない四足魔物にも“将”たり得る存在はいた。

 そう、特異個体ウリボアである。


ズシーンッ!


「「「ギギャ~ッ!?」」」


 オーガの咆哮で逃げから一転して己に群がり始めたゴブリンを、特異個体ウリボアはその巨体を支える強靭な脚で容赦無く踏み潰す。

 そして…


カッ!


「プゴォオオオオォッ!?」


 突如光りだし、己の身に起きていることに驚くような鳴き声をあげる特異個体ウリボア。


フッ…


 姿が見えなくなる程の発光が収まる。


「『ブゴガァアアァッ』!」


ビリビリビリッ!


 それは咆哮と言うよりは絶叫に思えたが、その声はオーガの咆哮と遜色の無いものだった。


ズンッ…!


「何だよ…、あれ…。」


 一歩踏み出したソイツを見て、誰かが呟く。


ズンッ、ズンッ!


 大地の感触を確かめるように歩む、小山のような巨体。


「フシュルルルッ…!」


 蒸気を吐き出す口元には、下顎から伸びる2本の丸太並みの太さの鋭い牙。


「馬鹿な…、アイツは…!」


 オーガの咆哮を受けても硬直するだけだった冒険者が、目を見開き及び腰になる。


「知っているのか!?」


 逆にアイツの脅威を察っせ無い冒険者が、震える冒険者に訊ねる。


「あ、ああ…。

 アイツは…巨象魔猪(エレファントボア)、D ランク魔物だっ…!」


 戦場に不測の事態(イレギュラー)は付きもの。

 出現が予想されていたオーガは「勇者」パーティーが対処に向かった。

 ならイレギュラーで発生したもう一体の D ランクは誰が対処するのか?


「ブゴオォッ!」


ドドドドッ!


「「「うわああぁっ!?」」」


 突進され、宙を舞う冒険者達。

 それが答えであった。

ウリボア→“幼”魔猪

エレファントボアのイメージはブル○ァンゴ。


成長限界から経験値取得で別魔物になるとか。

…ポ○○ンかな?


いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんばんは。 >限界突破進化は卑怯じゃね? まぁ人間にない強みを持ってるから魔物な訳ですし、多少はね? ん?つまりオークっぽい見た目のラストもハイオークっぽい感じに進化出来る可能性が?(失礼
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ