7 冒険者登録…?
作者は巨乳好き、はっきり分かんだね!
作者「お尻も良いよね」
商業ギルドで“今”就ける職がないと言われ打ちのめされた俺は、羽根飾りの憲兵の思惑通り(←違う)向かいの冒険者ギルドへとやって来ていた。
意外と人のいない建物内を進み、とりあえず入り口から見えたカウンターに向かう。
「ようこそ!
依頼ですか、登録ですか?」
すると、商業ギルドのいかにも「仕事のデキる大人の女」といった雰囲気であった受付嬢と違い、幼さの残る顔の活発そうな受付嬢が、元気に用件を訊ねてきた。
くりっとした茶色の瞳を期待に輝かせる様は、瞳と同じ色の癖毛の頂点に跳ねる毛も相まって、良く懐いた狼種が尻尾を振っている姿を連想させた。
(受付嬢ってのは美人しかいないのか?)
タイプは真逆であれど、商業ギルドと冒険者ギルド双方で美人受付嬢にあたるなど、俺にはそうでなければあり得ない話だ。(←自分で言ってて悲しくなったのは内緒だ)
たゆんっ♪
そして制服をしっかり着込み、さほど大きく動いてもいないのに何故か弾む、女神ニュグラスの眷属かといった具合の女の象徴。
(ふおおぉっ…、って見ちゃダメだ見たらダメだ…!)
見合いでの失敗を繰り返さないように、俺は必死に目線を逸らす。
「?」
「あ、登録で。」
訊ねたことに返答が無いことに首を傾げた受付嬢に、焦った返答が素っ気なくなる。
「新規登録ですね。
ではこちらの登録用紙に記入をお願いします。
名前以外は任意になりますが、記入していただくと、依頼の紹介や依頼者への推薦が行い易くなるので是非。」
頭頂部に立つ毛(確か“アホ毛”と言うんだったか?)が、しょんぼりしたように垂れ下がったように見えた受付嬢が、幾つかの項目の書かれた紙を渡してきた。
(うっ、頭が…!)
つい先ほど、商業ギルドでのやり取りを思い出した俺は、突然頭に痛みが走るような感覚に顔をしかめた。
「あっ、文字が書けなくても言って貰えば私が代筆しますよ?」
痛みは幻のようにすぐに消えたが、顔をしかめたのを見ていたらしい受付嬢が、理由を勘違いして補足する。
「いや、自分で書け…やっぱり頼む。」
自分の名前とスマト村くらいは書ける筈だが、商業ギルドの一件で自信がなくなった。
「はい、承りました♪
ではまずお名前から。」
頼られるのが好きな性格なのか、嬉しそうにする受付嬢。
たゆんっ♪たゆんっ♪
止めろ!俺が正気の内にな!!
「ラストだ。」
荒ぶる内なる俺を抑えるのに必死で、またしても素っ気ない口調になってしまった。
「ラストダさんですね?」
あまりにも素っ気なさ過ぎて、名前だけ言ったと勘違いされる始末。
「すまん、ラストが名前だ。」
「あっ、失礼しました!
頭文字はRの方ですか?」
「いや、Lの方だ。」
「「最後」、ですか…。」
俺の名前の意味に気付いた受付嬢が、俺の名前から何を想像したのか、悲痛な表情で呟いた。
「そ、親父とお袋が『自分たちが“つくる”最後の子供』っていう、ある種の戒めに付けられた名前だよ。」
そりゃ、毎年一人産んでいたら世話が大変だしな。
「そ、それは…!?
お盛んなご両親のようで…。」
悲惨な想像から一転、俺が冗談めいて話した名前の由来に、受付嬢は頬を染め、目を泳がせながら必死に話を続ける。
(何だこの娘、冒険者ギルドにいたら襲われるぞ?)
わたわたと初心な反応をする受付嬢に、今まさに襲いたくなっている筆頭が余計な心配をする。
村のおっさん共が年頃の娘たちに、わざと下世話な話を聞かせたがる理由をこの年で知ることになるとは。
(街ってすげぇな…。)
「それで、名前の次は?」
街に対する偏見を深めた俺は、このまま受付嬢と戯れていたかったが、早急に金を稼がなければならないので、登録作業の続きを促す。
「う~…、もうっ!
えっと、次は出身ですっ!」
恨めしい視線を俺に向け唸る受付嬢だったが(怖いどころか、その表情もグッとだ)、仕事を放棄するわけにも行かず、吹っ切れたように言う。
「スマト村だ。」
「フラワーフィールズ王国内ですね。
村の名前はその他に記載しますね。」
どうやら出身は国単位でのものらしい。
それもそうだ。
一々村単位で記名していても、半年後には記名された村が存在しなくなるなど、いくらでもあり得る話だ。
「使用武器は…、槍っと。」
スマト村とこの街が属する国の名前を初めて知り、いわゆる裏事情というやつを知ったかぶりしていると、いつの間にか次の項目が誤って記入されていた。
「待て待て、俺は武器を持ったことなんか無いぞ!?」
斥候なんかは短剣を武器にするらしいが、細工ナイフや鉈を武器というのは抵抗がある。
しかもそれらではなく槍。
そういった正真正銘の武器など、俺が15年生きてきた中で一切縁が無いシロモノだ。
「また私をからかおうとしてもムダですよ?
これ見よがしに背負っていて何を今さら。」
魔鬼を討ち取ったような自慢気な顔で指定した後、やれやれといった態度の、最初に比べ大分砕けてきた受付嬢。
そして受付嬢の態度としてはどうかという、しかし個人としてはむしろ魅力的に感じる彼女に、俺は告げる。
「背中の“これ”か?
これは槍じゃない、鍬だ。」
「………、クワ?」
おめでとう。
受付嬢はなんとセーメーホケンにジョブチェンジを果たした。
ウソだろ…。
一話で登録が終わらない、だと…?
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。