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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
3章  白の大樹

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77 二つの無双 ※別視点あり

おい、タイトル矛盾しとるぞ!


前半「勇者」ワタル視点です。

─ 「勇者」ワタル視点 ─


「喰らえ、〈ソウルイーター〉!」


ズバァアッ!


「「「「「ギギャ~ッ!?」」」」」


 突撃して来るゴブリンに向かって、僕はもう1本の剣〈魔剣・ソウルイーター〉を振る。

 この〈魔剣・ソウルイーター〉はストーリーの『知恵の皮を被った愚者』編で、ボスの「悪魔・リズテレス」が使用していた武器だ。

 本来は「古の勇者」が封印した「魔王・フォールン」の武器らしいけど、『知恵の皮を被った愚者』編の舞台である〈魔導国家ワイスマンス〉に封印・保管されていた。

 この剣の封印を解くには、[日本で最も高い電波塔は?]という日本人じゃないと伝わりにくいヒントで4桁のパスワードが必要だった。

 しかも総当たりで確かめようにも一人三回までという制限があったらしく、長らく封印が解かれないままだったらしい。

 僕は二回目で封印を解除して〈ソウルイーター〉を無事ゲット出来た。

 

(まさか“ツリー”じゃなくて“タワー”の方だったのはビックリしたけどね…。)


 それはさておき、気になる〈ソウルイーター〉の能力だけど…


ググッ…


(おっ、今ので結構奪えたみたいだ。)


 リズリットさんの『アローレイン』で弱っていたこともあってか、今の一撃で何体か倒せたらしく、自分の身体に力が漲る感覚が分かった。

 〈ソウルイーター〉の武器スキルは、その名の通り『魂喰い(ソウルイーター)』だ。

 これは常時発動(パッシブ)スキルで、〈ソウルイーター〉で倒した敵の身体能力から1割を、〈ソウルイーター〉の所有者に還元するという“魔”の剣に相応しいスキルだ。

 ゲームと違ってステータスの確認が出来ないから気になってはいたけど、今の感覚的に〈ソウルイーター〉のスキルは正常に作動していることが分かった。

 この剣(〈ソウルイーター〉)があれば、レベルやステータスの概念が無いこの世界でも、僕は擬似的なレベルアップをすることができる。


(まさに“チート”だね!)


 この世界に召喚されて「勇者」に相応しい身体能力を得た僕らだけど、異世界転移系のラノベの主人公の気持ちが良く分かった。


「「「ギギィイッ!」」」


 数を頼みに、僕に襲い掛かって来るゴブリン。


「無駄だよっ!」


ズバンッ!


 さっき上がった力で、襲い掛かって来たゴブリン数体を一刀両断する。


ググッ…


 また、更に力が漲る感覚。

 敵を倒せば倒す程強くなっていくのを実感して、僕は思わず笑みを浮かべる。


「さあっ、僕を倒してみなよ!」


 臆したように様子を伺うゴブリンに、僕はそう挑発して斬り掛かって行った。





















─ ラスト視点 ─


ズバッ!


「ギャッ!?」


「えぇい、異世界の人間は化け物かっ!?」


 ゴブリンを斬り捨てつつ、ジョンが言う。

 

「フッ…!」


ドスッ!


「ギャウンッ!?」


 隙と見てジョンに跳び掛かろうと、身を屈めたウルフの横腹を突く。


「おっ、悪い!?…っし!」


 自分が殺られかかっていたことに気付き、ジョンは気合いを入れ直したようだ。

 …集中力が途切れかかっているのは、何もジョンだけには限らない。

 (推定)「勇者」の攻撃である光の柱に、乱れた陣形へのゴブリンの突撃。

 ただでさえ混戦の最中、「勇者」の戦い様が異様過ぎた。


ズバババッ!


「「「「ギャギャ~ッ!?」」」」

 

 「勇者」が禍々しい黒い剣を横薙ぎに一振すると、あの青年のどこにそんな膂力があるのか複数のゴブリンを両断し、剣が当たっていない周辺のゴブリンも剣圧で吹き飛ぶ。

 それは一度や二度で終わらず「勇者」の戦う一帯は、ゴブリンが木葉のように舞い…まさに斬擊の竜巻に襲われているような有り様だった。

 

「ギャッギャ!」


 「勇者」の斬擊を掻い潜り、1体のゴブリンが「勇者」に肉薄する。

 

「『防護(プロテクト)』。」


カンッ!


「ギャッ!?」


 「勇者」に振り下ろした錆びたナイフを透明な壁に阻まれ、驚愕したような反応をするゴブリン。


「「勇者」様の邪魔はさせません。」


「セラフィアさん、ナイス!」


ズバッ!


 哀れ、勇敢で幸運なゴブリンはここで力尽きた。

 信頼か過信かは分からないが、自身は防御を捨てた攻撃一辺倒の立ち回りで、見る間にゴブリンを減らしていく「勇者」。

 しかしゴブリンを蹴散らすのは人だけでは無い。


「プゴフゴォオォ~ッ!」


ドドド、ドゴォーンッ!


 魔法の矢やゴブリンの投擲で怒り狂った特異個体のウリボアが、ゴブリン…というよりは自身以外の動くものに手当たり次第に踏みつけ、体当たり、突進などの攻撃を行っていた。

 攻撃自体はウリボアでお馴染みであるが、特異個体のウリボアの巨体で行われるそれらの攻撃は最早別物である。


「「「ギャワワワ~ッ!?」」」


 どちらかと言えば見た目は線の細い青年の「勇者」に対し、特異個体ウリボアの巨体はゴブリンには明確な脅威に映るようで、戦うことはせず逃げ惑うゴブリン。


「ははっ、馬鹿め!」


「ゴブリンなんかが、人様の真似をするからそうなるんだ!」


 倒されていくゴブリンを見て、鬱憤を晴らすように嘲る盾を所持していない冒険者。

 きっとゴブリンの投擲に脅かされたのだろう、…調子の良いことだ。

 そして森から平野を侵食するように出て来ていたゴブリンも、最初に比べ半数程に数を減らした時、


「勝てる…?勝てるぞぉ…っ!」


 身近な厄災であるスタンピードで健闘していることで、比較的若い冒険者が思わずといったように言う。


「あっ、馬鹿野郎!?」


 勝てると言った若い冒険者を、その近くにいたそろそろ中年に差し掛かりそうないかにもなベテラン冒険者が罵倒する。

 若い冒険者が言ったのはいわゆる“フラグ”であり、冒険者は意外とそういう験を担ぐ。

 

「『ゴガァアアァッ』!!」


ビリビリビリッ…


 空気を振るわせ物理的に圧力を伴うような咆哮が、森の中から叩き付けられた。



先の話をするから~…。

???「笑ってやがる…」


いつも読んでいただきありがとうございます。


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