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73 スタンピード発生

説明回です。

【 対スタンピード布陣 】

            ●

      ┏━━┓┏━━━┓┏━━┓

      ┃左翼┃┃憲兵隊┃┃右翼┃   

      ┗━━┛┗━━━┛┗━━┛

         ┏━━━━━┓

         ┃遠距離部隊┃

         ┗━━━━━┛

         後方支援・防衛隊

       ┏━━━━━━━━━━┓

          街外壁及び門

 〈初心者の森〉のスタンピードは、大きく分けて二つの波がある。

 まず第一の波は歯鼠に角兎、ウリボアにウルフと言った移動力に優れた四足の魔物が向かって来る。

 歯鼠や角兎は単体ランクはGと最弱だが、とにかく数が多いためスタミナの配分に気を付けなければならない。

 ウルフは牙や爪が脅威ではあるが…正直なところ森の中で遭遇した時の厄介さは無くなり、数も歯鼠や角兎並みにいるわけでもないので、的が大きくなった分スタンピードの魔物で一番相手取り易いくらいだ。

 フィールドが森から平野になったことで弱体化したウルフとは逆に、厄介さを増すのはウリボアだ。

 森の中では逆手に取られがちな突進は、障害物の無い平野ではその威力を発揮する。

 他の魔物との戦闘中にウリボアの低い位置からの掬い上げるような突進を食らってしまえば、体勢を立て直す間も無く歯鼠や角兎の波に呑まれてしまうことだろう。

 そして第二波のゴブリン、オーク…そしてオーガの二足魔物。

 と言っても第二波は略々(ほぼほぼ)ゴブリンだけと言っても良い。

 しかしウルフより弱い F ランク魔物と言えど、ゴブリン…と言うか二足魔物は人と同じように(道具)を使ってくる。

 大体が森での調達が簡単な木の棍棒になるのだが、たまに魔物にやられた冒険者やマナーの悪い冒険者の棄てた武器を振るってくるゴブリンもいる。

 ゴブリンは武器の手入れなどしないので武器としては粗悪も極まるが、粗悪故に雑な斬り口や錆びなどが原因で破傷風などのリスクが非常に高くなっている。

 そのため身体が資本の冒険者は負傷を放置出来ず、ゴブリンに一撃を貰っただけで戦線を離脱することになってしまうのだ。

 そんな厄介なゴブリンであるが肉体的な強度が低く、体格的に生物共通の弱点である首の位置が斬り落とし易い高さなのが救いだ。

 しかし下を向いているばかりにもいられない。

 ゴブリンに混ざるオークは(平均的な)成人男性より頭一つ分以上の体格を誇り、皮膚の下の分厚い脂肪は打撃を緩和し刃を鈍らせる。

 またその体躯から繰り出される一撃は、たとえ素手であっても簡単に人の命を奪う。

 高い耐久性に高い攻撃力、倒す早さが求められるスタンピードにおいて一番厄介と言える性質だ。

 そしてオークの完全上位互換な魔物がオーガだ。

 今回のスタンピードでは「勇者」一行が相手をするようだが、〈初心者の森・深層〉の(ボス)魔物なだけあって、通常なら大勢の犠牲者を出して討伐できれば良い方の結果で、最悪は街に被害が出てしまうほどだ。

 …まぁ、街には元 A ランクのギルマスが居るのでその前に何とかするのだろうが…。

 とにかくそんなオーガは「勇者」に任せて、俺達はひたすら雑魚(オークは例外)狩りである。


「…まさか、お前と肩を並べて戦うことになるなんてなぁ。」


 槍を持ったジョンが沁々とした様子で、俺にそう話し掛けてきた。

 俺が配置されたのは左翼の右端、全体から見ると中央寄りの場所だ。

 連携の問題で前衛部隊は左翼・中央・右翼と分かれてはいるが、一番負担の架かる中央寄りには D ランク(ベテラン冒険者)が集められていた。

  E ランクの俺が中央寄りとは不相応だと思うが、そもそも D ランク冒険者もそう多く居るわけでもなかったので仕方が無い部分もある。

 最前列にならなかっただけでも良しとしよう。

 ジョンも新人ではないがベテランと言うわけでもないということで、最前列からは外されたようだ。


「ああ、俺としちゃ不本意だけどな…。」


「何だ?他の奴らは今にも前に飛び出して行きたそうに見えるぜ?」


 本当に「どうしてこうなった!?」と内心で頭を抱える俺に、ジョンは戦意を滾らせる他の冒険者を眺めて言った。


「俺は手柄がどうとかより、ニーニャとマリ姉とそれなりに生活していければ十分なんだよ…。」


 冒険者はランクが上がるごとに信用度も上がっていくという性質上、こういった時に手柄を上げて手っ取り早くランクを上げたいという気持ちも分からなくは無い。

 しかし実を言うと E ランクになれば信用度としては一応地方村の農民程度であり、日常的に狩りをしていれば自動的に上がる D ランクは街人程度の信用はある。

 俺は現在 E ランクではあるが、それで日常生活に不便を感じたことは今のところ無いので、許されるのであればニーニャとマリ姉と共に街の中に隠っていたいくらいだ。


「その生活の場を守るために、態々壁の外に出て来ているんだろ?」


「…そうだな。」


 憲兵隊のように「街を守る」などという大それた志は持てないが、ニーニャとマリ姉との生活を守ると思えば戦意が湧いてくるのが、何だか可笑しく感じた。


「…ところで、前にいる奴らは何なんだ?」


 中央に布陣する憲兵隊の隊列の更に前。

 居並ぶ男達のせいで見えにくいが、そこには兵士には見えない(明らかに街人の格好の)男女十数人が、怯えた様子でそこに留まっていた。


「ああ、…このスタンピードを引き起こした犯人と関係者だと。

 どうせ処刑するなら魔物と戦わせろってことらしい。」


 …馬鹿なことをしたものだ。

 しかし疑問もある。


「あんなにビビっているのに逃げ出さないのか?」


「そりゃ無理だ。

 凶悪犯用の鎖鉄球を足に付けてるからな。」


 俺の疑問にあっけらかんと答えるジョンに引きかけるも、スタンピードを引き起こして街を危機に曝すのは立派な凶悪犯罪だと思い直す。

 

「それに万が一生き残った場合釈放されるって伝えているらしいから、そりゃ必死で戦うだろうよ。」


 …ジョンの発案ではないだろうが、中々にえげつないことを考えつくものだと思う。

 街を守る正義の味方である憲兵隊の黒い面に戦慄く俺だが、それもここまでだった。


ザワリッ…!


 森が騒ついた。


カンカンカンカンッ!


 直後街から響く警鐘。

 誰かが叫ぶ。


「魔物が出てきたぞっ!」


 スタンピードが始まった。

(ウリボアに)敢えて言おう。

「ロケット生肉」である!


伝われっ…、この想い…!  byFURU


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狩り場に存在してるときに枯らしてから倒すのがセオリーなくらい厄介な奴らじゃないか! ドス生肉「よんだ?」 ホーミング生肉「にがさない」 蜂「隙あり」 猫「秘薬もらっていきますね?」
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