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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
3章  白の大樹

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70 スタンピード発生予告

ガヤガヤ…ガヤガヤ…


「うっ…、…何だ?」


 昼間にマリ姉にこき使われたお返しに、夜ベッドでマリ姉をこき使った翌朝。

 俺は家の中まで聞こえてくる、街の喧騒で起こされる。


コンコン、ガチャ


「ご主人、おはよ。」


 ノックの後返事をする前に部屋の扉が開き、ニーニャが顔を出して挨拶してきた。


「ああ、ニーニャおはよう。」


 返事をする前に扉を開けたらノックの意味が無いという注意はさておき、俺は未だに気絶したように眠るマリ姉を起こすことにする。


ユサユサ…


「マリ姉、起きてくれ。」


 横になるマリ姉の肩を揺すって起こそうとする俺だが…


…ユサユサ


「……。(ジー…)」


 俺は一拍遅れて揺れる、マリ姉の女性の象徴を凝視してしまう。


「……。(ジー…)」


「あ…!」


 そしてそんな俺を、自分の胸元に手を添えて凝視するニーニャ。


「ぅうん…、あさぁ~…?」


 俺が気不味くなる直前の絶妙なタイミングで、マリ姉が悩ましい声を上げて目を覚ます。


「おはようマリ姉。」

「マリア、おはよ。」


むくり…


「うん…おはよ~、ふぁ…。」


 俺とニーニャの挨拶に返すマリ姉だったが、身体は起こしたものの欠伸をして眠そうだ。


(…やり過ぎたか。)

「…ご主人、やり過ぎ。」


 俺が内心思ったことを心なしかジト目のニーニャに言われ、ニーニャが獣人種であることを思い出した。

 獣人種は総じて人間種より身体能力に優れる…ということは聴力なども優れているわけで、人間でも僅かに聞こえる壁一枚向こうの情事の音など聞こえないわけが無かった。

 そして昨晩は(というか“も”?)盛り上がっていた自覚がある。


「……。(ジトー…)」

「……?(ジー…)」


 何か言いたげだけどジト目で無言のニーニャと、状況が分かっていないマリ姉が「とりあえず」と、俺に視線を向けていた。

 

「…スンマセンでした、以後気を付けマス。」


 元より分が悪く更に2対1…圧倒的戦局不利に、俺は二人に降伏を示したのであった。



 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。



ガヤガヤガヤガヤ


 ところは変わって冒険者ギルド。

 ギルドには朝の混雑というには更に多くの冒険者達が、事情の知っていそうな者は臨戦態勢、事情の知らなそうな者は情報を収集しているか不安そうにしているかの大体3グループに別れているようだ。


「あっ、ラストさん!こっちこっち!」


 カウンターの向こうではなく依頼板(クエストボード)の横に立ち、冒険者への対応を終えたリタに呼ばれる。


「おはようリタ、…その格好は?」


 呼ばれて冒険者達を掻き分けてリタの元に辿り着いた俺は、リタがギルドの制服ではなく冒険者のような出で立ちをしていたことが気になり訊ねる。


「それは後です、…とりあえずこちらをご覧下さい。」


 リタに促され依頼板を見る俺達。

 依頼板を見た感じ今日は常設依頼すら貼り出されておらず、代わりに一枚の緊急ギルドクエストが貼り出されていた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


       〈緊急ギルドクエスト〉

    ※このクエストは強制依頼となります


   依頼内容:スタンピードへの対応

    

   詳細割り当て

   Fランク以下:住民の避難誘導協力

   Eランク  :街の防衛(討ち漏らしの掃討)

   Dランク~ :オーガ以外の魔物の討伐


   パーティーの場合、パーティーメンバーの平均

   ランクでの割り当てとなります。


   ※上記は基本的な割り当てとなります。

    職員に声を掛けられた方は上記の割り当てと

    異なる場合があります。


   報酬:一律金貨1枚(100万ゴールド)

   ※ 功績により別途、特別報酬が出る可能性

    あり。


   その他:

   本クエストは憲兵隊及び勇者パーティーとの合

   同作戦になります。

   また、悪質又は意図的な妨害行為が認められた

   場合、その場で処分対応することへの理解と協

   力を厳命することとします。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「スタンピードだとっ!?」


 俺はクエスト内容を読んで、思わず大声を出してしまう。


「まさか、このタイミングでっ…!?」


 いつも朗らかな笑みを浮かべるマリ姉が、子供の時にも見たことが無い程顔を歪めた。

 もうすぐ魔引きが行われる、といった直前で発生したスタンピード。

 確かに、これにはメリットとデメリットが存在していた。

 メリットとしては、魔物の大群と戦うための物質がギルドでは既に用意されていたこと。

 デメリットとしては、この場(ギルドホール)にいる冒険者の一部がそうなのだが、使い込まれた雰囲気の無い武器や無難な短剣…酷い者に至っては解体用ナイフしか装備していない者が居た。

 そしてそういった状態の者の多くはベテラン…ランクで言うと丁度Dランク帯の者に思えた。


(魔引きの告知が仇になったか…!)


 ベテランということは、風物詩とも言える魔引きへの参加回数は多いだろう。

 時期が分かっているのであれば、その前に装備…特に武器は万全にしていたのだろう。

 

『備えあれば憂いなし』


 しかし今回の場合は、備えてしまったが故に予定を外したスタンピードに副武器(サブアーム)を使うことになってしまったのだ。

 …解体用ナイフの奴は、まぁ…単なる偶然が重なったアホだな。

 

(…しかし何で今なのか?)


 スタンピードというのは言ってしまえば、エサを求める魔物の大移動でしか無い。

 時期的にはまだまだ余裕があり、実際森にはまだ多くの実りが残っていた。

 …もしかして、マリ姉が大袈裟なくらいの反応を示したのはそのせいだろうか?


「…でも何で分かった?」


 ニーニャが首を傾げてリタに訊ねるが、俺はニーニャの質問が分からない。


「確かに…、魔物はまだ森から出て来ていない。」


「っ!?」


 マリ姉の呟きで、俺はようやくこの状況が不自然であることに気付けた。


「はい。

 …実はこのスタンピード、まだ発生していません。」


 ならば何故まだ発生していないスタンピードに対する緊急ギルドクエストが発令されるのか?


「昨晩この街で大量の〈魔物誘引剤〉が散布されました。」


「っ、なんてことを…!?」


 …俺もマリ姉に激しく同意だ。

 一体どんな集団自殺志願者が居たというのか…。


「このスタンピードは人為的に引き起こされた…謂わば、この街に対する攻撃です。」

街への攻撃✕

集団自殺 ✕

単なる人災○


「単なる」言ってもシャレにならんのよ…。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
64話  「スマト村は依頼受け付け拒否」  スマト村はこの街に近い為、魔引きで空いた場所にスマト村周辺の魔物が流入するだけで制裁の効果が薄い。ってなってたんだけど 今回のこれで 「このスタンピードは…
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