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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
3章  白の大樹

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65 穏やかなる日常

前回との差ぁ…

前回の64話に結構評価がついたのですが、別視点…需要あるんですかね?


※昨日のメンテナンスにより、いつもより短めでお送りします。

 パーティー結成以来、最大の成果を上げた翌日。

 サプライズでマリ姉に杖を用意する計画がおじゃんになったので、開き直ってニーニャとマリ姉と三人連れ立って、すっかり常連となった〈相棒に屋〉にやって来た。


「いらっしゃ…って、またお前さんか。」


 店に入ると、気を入れて損したといった様子のガンキンに出迎えられた。

 確かに最近は頻繁に訪れていたが、物は買っているし店としては上客の類いだろうと自負しているのだが?

 あんまりな物言いに、俺は以前から気になっていたことを次いでに聞いてみる。


「ガンキンはいっつもここ(〈相棒に屋〉)に居るが、仕事は暇なのか?」


 〈相棒に屋〉は職人ギルドの店で、店番は持ち回りと聞いたような気がするのだが…。


トントン


「仕事ならこうしてやっているだろう?」


 支払いカウンターを指先で叩いて、今まさに仕事中だと答えるガンキン。

 俺が聞いたのはそういうことじゃないのだが…、まぁ好都合だ。


「この前見て貰った細剣覚えてるか?」


「ああ、あのナマクラ剣だろ?

 ありゃどうにもならんぞ。」


 俺が修理を頼もうとしていると思ったのか、先じて忠告するガンキン。

 鍛治種族と言われるドワーフですら匙を投げる宝剣とは…、それは果たして剣と言えるのか。

 剣の定義については、また後で機会があったら考えることにして…


「あれの剣身…魔鋼を使って片手杖を作れないか?」


「片手杖だぁ?…ああ、そういう。」


 魔法を使いそうもない俺が杖を求めたことに、何か得体の知れないものを見る表情になったガンキンだが、俺がマリ姉に視線を向けたのを認めると納得がいった様子となった。


「出来ないこたぁ無ぇが、ちと時間がかかるぜ?」


 専門外だと断られる可能性も考えていた俺は、時間がかかろうとも出来るとガンキンが答えたことに安堵する。


「構わない。…いくらくらい掛かる?」


 俺はガンキンに顔を寄せ、マリ姉に見えないように人差し指と親指で円を作って見せて訊ねた。


「ふ~む…、素材は持ち込みだから…」


 少し考えたガンキンは「これくらいか?」と、指を3本立てて見せた。

 魔鋼を用いた杖の製作がそんなに安いわけが無いので、おそらく指一本当たり10万ゴールドの30万ゴールドの見積りだろう。

 俺が現在使用している槍と同等の値段、素材持ち込みでこれなら本来の見積りは…。


(いや、考えるのはよそう。)


 今大事なのは、30万ゴールドでガンキンにマリ姉の杖の製作を依頼するか否かだ。

 そして俺の答えは勿論、


「最高の杖を頼む。」


「勿論さぁ。」


 早速ギルドカードを見せてギルカ(ギルドカード)払いを提示した俺に、ガンキンは頼もしい笑みを浮かべ親指を立てたのであった。


 …………………。

 …………。

 …。


 ガンキンに素材(例の細剣)を預けて用事を済ませた俺達は、食材の買い出しをするべく街の大通りを通称「市場通り」に向かって進んでいた。


「あ~、やっとスタート地点に着いた~…。」


 不意に聞こえた、若い男の声に注意を引かれた。


「だから私は辻馬車の利用を提言したではありませんか…。」


「ジャンヌ、《……》様に失礼ですよ?」


「まぁまぁセラフィアさん、その辺で。

 リズリットさんの提案を蹴ったのは、僕自身ですから。」


「ワタル貴様っ…、《……》様になんという─」


「お止めなさい、《……》様のなさることですよ?」


「《……》(仮)は非効率、《……》は盲目、守護騎士は堅物…。

 はぁ…、大丈夫かしらこのパーティー。」


 などと良好とは言えない会話をする、男剣士・女僧侶・女騎士・女魔術師の定番編成パーティーとすれ違う。

 それだけならば良くあるハーレムパーティーなのだが、俺はリーダーらしき青年の容姿が妙に気になった。

 不自然な程はっきりとした色合いの茶髪に黒目、成人しているには(あどけ)ない顔つきに真新しい上質そうな装備。

 パーティーの編成も相まって、これで黒髪であれば古の勇者そのままではないか?

 …まぁ、「勇者の末裔詐欺」が横行する程度には黒目の人間はいる。


「…考え過ぎ、か。」


「どうしたの、ご主人?」


 俺の呟きを聞き取ったニーニャが、俺を見上げて訊ねてきた。

 俺が気になったすれ違ったパーティーは、雑踏に紛れて既に見えなくなっている。


「…いや。

 さっきすれ違ったパーティーの、魔術師の格好がまともなやつだったなって。」


 きっと何処かの貴族のボンボンが、金に飽かして高名な僧侶と魔術師を雇い、装備を揃えただけの良くある話。

 女騎士は男に対する態度と、魔術師が守護騎士と言っていたことから、僧侶の護衛かなんかだろう。

 つまりは気にするだけ無駄だということだ。

 しかし何故か本当のことを話すのが躊躇われて、俺は適当に誤魔化した。


「ん、マリアは痴女。」


「まさかの私ぃ!?」


 突然…そして容赦なくニーニャに(言葉で)刺されたマリ姉が、自身に降り掛かった言われ無き中傷に突っ込むのも、最近の〈白の大樹〉では日常(良くあること)だった。

雉も鳴かずば撃たれまい。

マリアは鳴かずとも刺される。


ハーレムパーティーの会話について補足

馬車使用の言い出し→リズリット(魔術師)

リズリットに便乗(辻馬車)→ジャンヌ(騎士)

馬車使用を蹴る→ワタル(剣士)

言及ナシ(ワタルに追従?)→僧侶


※お詫び

 来月から更新ペースが低下することが予想されます。

 なるべく毎日更新出来るようには努力するので、今後とも応援よろしくお願いします。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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