表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/114

62 戦利品

2025/1/28

感想で指摘があったので幕間追加しました。


オ「これどうする?」

ラ「んなもん要らん。」

オ「お前の戦利品よ?」

ラ「ノー厄介!」

オ「貴族の謝罪受け入れないん?」

ラ「…ノー。」

オ「バラして売ったらバレないし金になる。」

ラ「………イエス。」

オ「(…ニヤリ)」




派閥二分論争はどこの世界・時代にもありますねw



 ケインとの決闘を終えて数日、俺達(白の大樹)が日常に戻って初めての休日。

 俺達は今日、ギルマス(ケイン?カトリーヌ嬢?)に貰った〈宝剣・クーゲルシュライバー〉をガンキンに見せていた。


「何だこのナマクラは?」


 破損していることを先に伝えた上で、ガンキンは剣身を一目見ただけでそう断じた。

 しかしガンキンは俺の要望通りに、〈クーゲルシュライバー〉を調べ始める。


コン、キンッ…


「……う~む、剣身は魔鋼で柄は純金か…。」


 ガンキンはまず、手の平サイズのハンマーで剣身を軽く叩き、〈クーゲルシュライバー〉を構成する各部の材質に“あたり”をつけた。


(やっぱり柄は金だったのか…。)


 貴族家に伝わる宝剣というだけあって、ワンチャン勇者が使った聖剣の素材の神界金(オリハルコン)であることを期待したが、まぁ…現実なんてこんなもんだ。


「…ん?

 マコウ…?」


 柄が金であることが確定し素材としての売却を考えようとして、剣身の材質が知らないものであったことに引っ掛かった。


「魔石の粉を混ぜた鋼さ。」


 ガンキンがナマクラと断じたので剣身の材質からは興味が失せていたが、単なる金属じゃなさそうだ。


「その魔鋼ってのは凄いのか?」


「魔鋼ってやつはな、混ぜもんが入った分刃物の素材としちゃ鋼より落ちる。」


(駄目じゃねぇかっ!?)


 ガンキンの説明に、またもや期待を裏切られて俺は肩を落とす。


「だがな、魔石を混ぜたことで魔力の通りが鋼より格段に良くなっていてな。」


「ほぅ…?」


 続く説明に俺は気を取り直して分かったような反応をしてみるが、〈白の大樹〉の前衛組は魔法に縁が無いので無用なメリットでしかない。


「つっても魔銀(ミスリル)には到底及ばないがな。」


(だと思ったよ!?)


 二度期待が外れたのだ、三度目は無い。

 それはさておき…、つまり魔鋼は人工劣化魔銀と言える素材らしいという認識で良さそうだ。


「確か金も魔力の通りがそこそこ良かった筈だな、…それに柄のこの紋様。」


 ガンキンは俺が「売るしか活用手段が無い」と思った純金の柄にも着目する。

 ガンキンの言い方だと、魔力の通り(?)は鋼<金<魔鋼<<魔銀の順といった感じだ。

 

「剣身の材質といい…、こりゃ魔力を通して使うことが前提の細剣だ。

 つまり一種の魔剣だな。」


「魔剣だとっ!?」


 魔剣と言えば、古の勇者に倒された古の魔王の〈魔王剣・ソウルイーター〉が有名だ。

 四度目にきたまさかの事実に、俺は目を剥いて驚く。


「と言ってもピンキリのぎりぎりキリに入るかって代物だがな。」


「あーーっ!!知ってたよチクショウ!」


 期待と失望の感情の乱高下に、俺は久々の情緒不安定になった。

 俺の反応で遊んでいるならまだしも(いや、良くはないが…)、ガンキンは真面目にそうしているので身構えることも出来ないのだ。


「それで?」


「うおっ!?…いきなり「すんっ…」ってなるんじゃねぇよ。」 


 これが情緒不安定の真骨頂である。


「いや、魔剣の一種ってことは魔剣では無いんだろ?」


 ガンキンをびびらせたことで溜飲を下げた俺は、ガンキンに説明の続きを求めた。

 その説明によって、この壊れた細剣をどうするかを決める。


「ああ…魔剣ってのはそのほとんどがダンジョンから出てくるいわば天然品でな、これまでどんな鍛治職人が魔剣を作ろうとしては失敗した。」


 ダンジョンが何故存在するのかは全くの謎だが、ダンジョンの存在意義には「神々の試練である」という説が、「ダンジョンとは巨大な箱魔物(ミミック)である」という説と大体二分されている。

 ダンジョンでドロップする魔剣などの再現不可能なアイテム…これらが神々によって作成されたものであるというのが、ダンジョン=神々の試練派の根拠の一つに挙げられる。

 対するダンジョン=魔物派は、人が作ったアイテムの形だけを模倣した魔物特有の器官という主張をしている。

 確かに一部の魔物は理屈の不明な器官を持っていることは事実…例えば〈縄蛙(ロープフロッグ)の舌〉なんかがネタとして有名だ。

 因みに俺は神々の試練派寄りの考えだ。


(現在の人類が作れない=神々の作…安直だが納得はしやすい。)


「…ん?ほとんど、だと?」


「良く気付いたな。」


 ニヤリと笑うガンキンを見て、俺は思い浮かんだ考えに戦慄する。


「勇者の聖剣と魔王の魔王剣、この二振りは人工魔剣の完成形だ。」


 最強の剣と最凶の魔剣が人工魔剣。

 聖剣が魔剣であることもそうだが、ガンキンは何故それを知っているのか?


「…ドワーフの国にもな、あるんだよ。

 魔銀と黒魔鉄(アダマンタイト)の合金で勇者が作った聖剣の試作品がな。」

 

 ほとんどの魔剣は黒魔鉄製と言われている。

 そのため黒魔鉄は別名魔剣鉄とも称される、実在が確認されている金属の最上位金属だ。


「…これは推測何だがな、お前さんの持ってきたこれ─」


 ガンキンが散々ナマクラと評した〈宝剣・クーゲルシュライバー〉を指差す。


「聖剣の試作品の更に試作…、実験的に作られた内の一本じゃねぇか?」


 散々期待外れであった細剣…それは最後の最後、やはり俺の逆の期待(?)を大幅に裏切ってきたのであった。

 

テンプレファンタジー金属の三巨頭、参戦!


ボールペン、お前実は凄い奴だったんだな…。



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
……つまりは、厄介なもの。 というか、ケインや貴族と離れたいなら、ギルマスに託す一択のような。手放しても持っていても厄介すぎる。 なぜにガンキンに見せに行ってるのか、わからん 使えないなら、要らな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ