5 大通りを逝く
ちょっとパロってみた。
2024.12.4
☆5評価頂きました!
まだ話数が少ない内からの最高評価ありがとうございます!
(これは毎日更新を続けねば…!)
※現在のストックは23話までです。
門を抜けると、そこには未知の光景が広がっていた。
「ほへぇ~…。」
門から真っ直ぐに伸びる大通りに、そこを縦横無尽に行き交う人々。
大通りの両脇には、村ではファムさん家でしか無かった石造りの建物が、人一人がやっと通れるという間隔を空けて隙間無く並ぶ。
(これが、街か…!)
村出身の俺は田舎者丸出しの姿を晒しながら、商業ギルドを目指して、大通りを人に流されながら歩いていく。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
「い、意外と遠い…。」
確かに、商業ギルドの場所を教えてくれた羽根飾りの衛兵は、距離について一切話していなかったが、しばらく人の流れに翻弄された俺は、歩くだけにも関わらず疲労困憊となっていた。
どんっ
「うわっ!」
ドサッ…
立ち止まり、少し息を整えていた俺に、前から歩いて来た男がぶつかってくるも、逆に俺の腹に弾かれ尻餅をついた。
「あ、スマン。」
ぶつかって来たのは男の方だが、なんとなく俺から謝る。
「ちっ、立ち止まってんじゃねぇよ!」
立ち上がった男は、俺にそう吐き捨てると、その場からそそくさと歩き去って行った。
「体がでかくてすみませんねぇ…。」
誰に言うでもなく俺は呟くと、ぶつかって来た男の言うことも一理あるので、再び人の流れに乗って歩き始めた。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
更に歩くこと数分。
「いらっしゃい、いらっしゃい!
今朝仕入れたばかりの新鮮な野菜だよ!」
道行く人々に威勢良く呼び掛ける青果屋のおっさん。
「う~ん…兎肉が安いけど、たまには豚肉を子供たちに食べさせたいのよねぇ。」
肉屋に吊るされた肉を前に、何を買うか悩む奥さん。
「宜しくお願いしま~す!
宜しくお願いしま、ありがとうございま~す!」
少しみすぼらしい身なりの、ビラを配る成人間近といった年頃の少年少女。
「おっちゃん、一つくれ!」
「毎度、120ゴールドだ。」
そして香ばしい匂いを漂わせる屋台から、腰に剣を下げた革鎧の男が串焼きを買って行く。
どうやらこの辺は商店が集まる区画らしい。
(ということは商業ギルドももうすぐだな。)
店が集まっているから、店が加入している商業ギルドもある。
そんな単純な考えしか出来なかった俺は、
『商売を束ねる組合だからといって、商業区画にある必要は全く無い。』
ということに気が付くことは無かった。
「宜しくお願いしま~す!」
「んぉ?何々…。」
ビラ配りの少女が押し付けるように渡して来たビラを読む。
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【突撃!ステーキ!!】
《肉厚ステーキ、30分間食べ放題!》
「突撃!ステーキ!!」の誇る、肉厚でステキなステーキのお得な食べ放題!
ラビ・ウルフ・ピグは勿論オークに果ては“あの”ミノタウロス!
当店のメニューどれを、何枚食べても、30分以内に全て食べ切れば「今だけ」なんと代金たったの“5,000ゴールド”ポッキリ!
食いしん坊共、この夢の機会を見逃すな!!
※時間以内に食べ切れなかったステーキは通常料金での提供になります。
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…どうやら、街の何処かにある食事処が、期間限定で開催している企画らしい。
(オークにミノタウロス…、高級品じゃないか。)
討伐の困難な凶暴な魔物だが、希少品なだけあり、ラビやウルフなどより格別に旨いらしい。
(だとしても高くないか?)
串焼きは100ゴールドで買えると聞いていたが、先ほど屋台で串焼きを買っていた男は、120ゴールドという値段に文句も言わなかった。
だとすると食事処での食事一回分500ゴールドは、600ゴールドと考えられる。
ミノ肉ステーキが一皿いくらなのかは不明だが、5000ゴールドもするとは思えない。
また30分という時間では、一皿10分で食べても三皿しか食べられず、最後の一皿が時間を過ぎた場合、5000ゴールドに通常料金が追加になってしまう。
「ま、俺には関係ないね。」
あれこれ考えたがどちらにしても、所持金総額1500ゴールドの俺には無駄な情報であり、ついつい受け取ってしまったビラを、丸めて投げ捨てた。
「ど、どうぞっ!」
食事処のビラを投げ捨てた俺だったが、ビラ配りの少年少女達にカモ認定されたらしく、すぐさま、顔を真っ赤にした少女がビラを差し出して来た。
何故か必死さを感じ、差し出されたままのビラを受け取ると、少女は逃げるように人混みに消えて行く。
(どれどれ…、っ!?!?)
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《あなたの抱ける嬢が必ず見つかる!?》
他店で断られたプレイも当店はNGナシ!
あなたの内で燻る獣を解き放ちませんか?
【淫獣の宴】
※当店は“抱く”ことを主眼にした娼館です。
その他不都合は承服しかねる場合があります。
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言葉少なに、店名がデカでかと真ん中に書かれたビラは、少々特殊そうな娼館のものだった。
そしてこのビラを配っていたのは、丁度多感な年頃の少女。
(そりゃあ、顔を真っ赤にして逃げていくわけだ。
それにしても…。)
視線を足元に落とすと、村の女たちに(同年代の野郎もだが)オークと言われ嫌われる原因となった、少し出っ張った自分の腹が見えた。
「余計なお世話だっ!」
見た目から判断して渡されたビラに、俺は人々の行き交う往来の中心で、想いを叫ぶのだった。
タイトルは誤字ではありません!
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