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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
3章  白の大樹

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55 ケインの暴走(笑)

誤字報告ありがとうございます。


前回のあらすじ

ケ「マリア寄越せ!」

ラ「やだ。」

ケ「は?キレそう。」

オ「ステイ、ビークール。」

ケ「ぐぬぬ…っ!」

ラ&マ「プーッ!クスクス…。」

ケ「ブチッ、決闘じゃあぁ~!」

 マリ姉に貴族の力関係についてレクチャーして貰っていたら、俺にマリ姉とイチャついているのを見せつけられたと勘違いしたケイン。


「貴様のような野蛮人が、マリア(攻撃魔法使い)を所有すること自体が間違いなのだっ!」


 ケインの第一声から察することはできていたが、ケイン…というより毒草?子爵家はいかにもな貴族主義者らしい。

 マリ姉のような極一部の例外を除き、攻撃魔法を使える者には貴族の血が流れていると言われている。

 平民の認識でもそうであるのだが、ケインのような貴族主義者は例外というものを決して認めようとしない。

 つまり攻撃魔法を使える者“全て”には貴族の血が流れており、攻撃魔法を使えることが貴族の証明という考えなのだ。

 

「さっきも言ったが、身分こそ奴隷だがマリ姉は仲間だ。

 所有しているつもりは無い。」


 本音を言うと、街の人々の視線や各種手続きがいちいち煩わしいので、マリ姉を解放できるのであればさっさと解放したい。


「ふん、口ではそう言うが…ならば何故マリアを解放しない?

 …そうか分かったぞ!

 貴様はマリアを縛りつけているのだろう?

 魔物のようなその容姿では、マリアを引き留めることなどできないだろうからな。」


 マリ姉が奴隷のままであることに対して、ケインは俺を貶しながら勝手な理由付けをする。


「可哀想なマリア、我が妻となれば奴隷などというものから解放してやれるのに…。」


「いや、無理だろ。」


 演技じみて宣うケインに、ギルマスが冷静なツッコミを入れた。


「おいお前、マリアが仲間だと言うならばマリアの意志を尊重するのであろう?」


 ギルマスのツッコミを無視して、ニヤリと悪い笑みを浮かべたケインが俺に問いかけてくる。


「ああ。」


 俺は頷く。


「ふっ…ならばマリアに命令しろ。

『これまでに受けた全ての命令を破棄し、自らの本音を偽りなく口にしろ』とな。」


 …なるほど、良く考えられた命令だ。

 だが問題ない。


「マリア『これまでに受けた命令を破棄し、自らの本音を偽りなく口にしろ』。」


「っ!?」


 俺が渋るとでも思っていたのだろう。

 一言一句ケインの言った命令を、俺がマリアに命令したことに、驚いた様子を見せるケイン。

 

「「可哀想」なんて一体どの口がいえるのかしら?」


「っ!?」


 俺の命令に従いマリ姉がいきいきとして話し始めた言葉に、ケインは目を更に見開く。


「大体私がいつアンタなんかの妻になったっていうの?」


「いや、それはこれからそうなる─」


「そもそもアンタには婚約者がいるでしょ?

 なのにいくら私が断ってもしつこく…ほんっと~にしつこく言い寄って来てくれちゃって!」


「それは君が遠慮して─


「遠慮なんかするもんですか!

 私は「嫌だ」って「迷惑だ」ってはっきり言ったこともあるわよね!?

 おかげで魔術学校を退学しないといけなくなるし!」


 なんとなく理解し始めていたがマリ姉の吐露で、こいつ(ケイン)が件の子爵家令息であることがはっきりした。

 そして大分鬱憤を溜めていたのだろう。

 ケインが口を挟む隙を作らないと言わんばかりに、マリ姉は更に畳み掛ける。


「私は私の意志でラス君の傍にいるの!

 私は構わないのにラス君ったら、今のいままで「命令」なんてしてこなかったんだから。

 本当に私の意志を尊重しているのは果たしてどっちなのかしら?

 ねぇ…、「農民の男なんかより遥かに優れた貴族」である子爵家令息様?」


ポスッ


 一息で言い切ったマリ姉は、非常にイイ笑顔で俺の肩に凭れ掛かる。


「………。」


 惚気を多分に含んだマリ姉の言葉の毒に、貴族家令息であるが故に耐性のなかったらしいケインは唖然とするのみだ。


「いくら坊っちゃまの想人であっても聞き捨てなりませぬな。」


 口から魂が抜けてしまっているような主人に代わり、セハスが目が笑っていない笑顔でマリ姉を咎める。


「あら、私は命令に従っただけよ?

 なのにあなたはそれを咎めるの?」


 咎められたマリ姉はどこ吹く風といったように流し、逆にセハスに「お前の主人の自業自得だろ?」と刺しにいった。

 …正しくは命令したのは俺なのだが、俺に命令しろと言ったのはケインで、それが俺の挙げ足取りに失敗して自爆しただけだ。

 それをセハス咎めるということは、主人であるケインの行動を咎めているということになる。

 かなり無理矢理な屁理屈だ。


「くっ…、それは─」


「フ、フフフ…。」


 セハスがマリ姉に何かを言い返そうとしたタイミングで、口から魂を飛ばしていたケインが蘇生する。


「〈魅力〉とは…、随分な外法を使う。

 いや、醜い魔物のようなお前にはらしいといえば良いのか?」


(イカれたか…。)


 おかしな笑い声をあげたかと思えば、ケインは荒唐無稽なことを言い始めた。

 マリ姉にボロクソ言われたのが余程ショックだったとみえる。(因みに俺への罵倒は慣れた言葉なのでノーダメージだ)


「おおっ…、貴様のような下衆は我が貴族の義務として成敗してくれよう!」


「いや…、私の話聞いたでしょ?」


 呆れて天を仰いで呟くマリ姉。


「聞いていたとも、だがそれは君の本当の意志じゃない。

 我がこの醜い野蛮人を懲らしめて、君を正気に戻してあげよう。」


「あなたが正気じゃないのよ。」


 俺も同感。


ペショッ…


「ん?」


 ケインが手袋を片方、俺達の間に置かれたテーブルに投げつけた。


「拾いたまえ、決闘だ。」


 前髪をかき上げながら、そう俺に言い放ったケイン。


(なんだそのポーズ。)


 カッコいいと思っているのだろうか?

 俺はそうどうでもいいことを疑問に持ちながら答えた。


「普通に断るが?」

 

 と。

ケインは厨二病、はっきりわかんだね!



いつも読んでいただきありがとうございます。


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