51 思い出の味?
モブに肉がついていく…、何故だ!
昨日のPV数がいきなり倍近くになっていて不思議に思った作者です。
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いつかもそうだったような気もするが、この串焼きにされているオーク肉は多分…昨日俺達が倒してギルドに売却したオークの一部だ。
「いらっしゃい!
〈ノーブルの串焼き屋〉に無い串焼きは無いぜ!」
客が来たことに気が付いた店主が、決まり文句(?)を言いながら、焼き網に落としていた視線を上げる。
「おっ?」
「…ん?」
「あっ…!」
顔を上げた店主は俺達を見て面白そうな反応をし、俺は店主にそんな反応をされる理由が分からなかったが、ニーニャは何やら気付いたような反応をする。
「あん時のデカい兄ちゃんと白猫の嬢ちゃんか!?
また来てくれたんだな。」
メニューの既視感と俺とニーニャを知っているらしき店主。
「…あっ、あの時の!」
ここに至って、俺はようやく思い出した。
ニーニャを保護した日、ニーニャがねだった串焼きの屋台のおっちゃんだ。
あの時はニーニャに頼られるという人生初の経験に浮かれていて、ニーニャの求めるまま、ろくに店も見ずにオーク串を購入したのだったか。
「覚えていたのか…。」
あの時から今日までは数ヶ月の期間が空いている。
その間この屋台に客が一人も来ないというのはあり得ないし、通りすがる街人を含めると、たかが一見の客であった俺とニーニャを覚えているとは思わなかった。
「そりゃお前さんみたいなデカい男が、白猫の嬢ちゃんみたいな可愛子ちゃんを連れて歩いていれば…なぁ?」
俺の呟きが聞こえたらしき屋台の店主…ノーブルが、むしろ忘れる方がおかしいといった返しをする。
…多少注目されていたことは自覚していたが、どうやら俺の自覚以上にあの時の俺とニーニャは目立っていたらしい。
クイクイ…
「ねぇご主人…。」
ノーブルと話し続ける俺に、空腹で元気が出ないのか、ニーニャが控えめに催促してきた。
「おっと、しまった!
客にひもじい思いをさせたままとは、〈ノーブルの串焼き屋〉の名折れだな!」
「あ、悪いニーニャ。
オーク串4本に、えっと…肉串と野菜串をお任せで10本くらい。」
俺はニーニャに謝り、おどけるノーブルに慌てて注文する。
注文した後に10本は多いかと思ったが、昼飯代わりだ。
(それに余ったら晩飯で食えば良い。)
そう思いはしたものの結局、食べ盛りのニーニャを主に、マリ姉もタレの研究がてら俺と同じ本数を食べ、買った串焼きは一本たりとも余ることは無かった。
…という未来を知らない俺は串焼きが焼けるのを待つ間、ノーブルから様々な話を聞かされたのであった。
そのほとんどが「串焼きに使っている甘珠瓜は末姫様のために品種改良された、その名も〈王女甘珠瓜〉という」や、串焼き屋台はノーブルの趣味でやっていること、東隣の国の麦が不作だったこと、ノーブルの本業がしばらく忙しくなりそうだということ…等の、俺達には直接的には関係しない話であった。
…しかしその話の内の一つ、というより警告が問題だった。
(ニーニャの所在を聞いて回る“自称「商会役員」の男”ねぇ…。)
ニーニャに関わりのある商会というと、〈アーコギ商会〉が思い浮かぶ。
男は商会名を明言しなかったらしいが明らかに怪しいので、ノーブルはその男の質問に「知らない」と答えたそうだ。
いくら田舎の街と言ってもそれなりに人は多いわけで、そうそう特定されるものではないが、俺達は思っていたより目立つことがわかったため楽観は出来ない。
「ご主人どうしたの?」
ノーブルの話を聞いて表情が強張っていたりしたのだろうか?
夢中で串焼きを頬張っていたニーニャが、いつの間にか串焼きを食べるのを止めて、俺の顔を覗き込んでいた。
(いかんな…、ニーニャに心配をかけてばかりだな。)
スマト村のウリボア退治の後もそうだったが、落ち込む俺をニーニャが慰めようとしてマリ姉に相談した結果が、あの日の逆夜這いだったらしい。(マリ姉の供述)
今でさえ際どいことをしているのに、これ以上マリ姉に変なことを吹き込まれても困る。
「いや、皆大変だなって思ってな。」
俺が聞き流した話の中には、話の当事者の生死が関わるようなものもあったので、俺がそう思ったのもあながち間違いではない。
ただ…他に意識を向ける優先度が高い問題があるだけだ。
「…“それ”旨いか?」
ふとニーニャの持つ食べかけの串焼きに意識が向き、俺はついニーニャに訊ねた。
「ん、…ご主人も食べる?」
味を訊ねたことで、俺がその串焼きを食べたがっていると勘違いしたのだろう。
頷いたニーニャは食べかけのそれを、俺の方へと差し出してくる。
「い…いや、今は腹がいっぱいでな。」
一口味見する程度も出来ないほどではないものの、焼いた甘珠瓜を食べたら吐く未来しか見えないので断る。
(ノーブルぅっ!甘珠瓜は野菜じゃねぇだろ!?)
本職不明の趣味屋台のオヤジに、俺は内心で抗議の念を送るのであった。
「ぎゃああぁっ、か…辛っ!?
み…水、誰か水をちょうだいぃ~!」
マリ姉はレッドクローの串焼きを食べて悲鳴を上げている。
てか、何で食べた!?
「ゴクゴク…ぷはっ、治ったぁー!」
「水代わりにポーション飲んでんじゃねぇ!?」
「え、…どうしよう?」
「いや、買い直すだろ。」
「モグモグ…。」
大騒ぎする俺とマリ姉。
その横ではニーニャが、マイペースに甘珠瓜の串焼きに舌鼓を打っていた。
「モグ…。
あま…、うま…。」
辛さは痛感なのでポーション飲むのは正解だったり?
(それにしてもマリ姉のポンコツ化が激しい)
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