50 パーティーで街歩き
翌朝
ラ「ニーニャ、どうしてあんなことを?」
二「ん…、マリアがそうしろって。」
ゴツンッ!
マ「痛った~っ!何でぶつの!?」
ラ「変なことをニーニャに吹き込むな!」
マ「…でも良かったでしょ?」
ラ「………。」
マ「ニヤニヤ」
…ゴツンッ!
マ「二度もぶった!」
※ep49が削除済みのため、話の繋がりに違和感があるかもしれませんがご了承下さい。
─ 現在 ─
酔ったマリ姉にそそのかされたニーニャに襲われかけた翌朝、マリ姉を交えたニーニャとの話し合いの結果、「本番は無し」かつ「マリ姉との頻度を越えない」ことを条件として、俺は「ニーニャと男女としての触れ合いに応じる」ということに決まった。
今日の予定を聞くわけではないニーニャの「どうする?」という質問は、つまり「今日は触れ合いを行うか?」ということだ。
条件を満たしている限り、ニーニャが求めるのであれば俺に拒否権は無いのだが、触れ合いが確約されたことで、こうして俺に可否を委ねる程度には落ち着いた。
しかしマリ姉とした後、毎度ニーニャと触れ合いの相談をするというのは、当人達が良いと言っていても気にせずにはいられないのが俺だ。
(俺の運も偏り過ぎだろ…。)
村にいた時は想像も出来なかった現状。
もしかしたらマリ姉とは再会できたかも知れないが、その場合疎まれる者同士身を寄せ合って生きていくか、やはり村を出ていったことだろう。
どちらにしてもそこにニーニャはいないだろうし、この街で冒険者登録したとしてもリタやギルマスと親しくなることも無かった可能性は高い。
ほぼ無一文でクソ兄貴に村を追い出されたのがこれまでの人生のドン底だとすると、マリ姉とニーニャがいてリタに好意を持たれている今は絶頂も絶頂だ。
(…そうか、俺は怖いのか。)
ドン底から数ヶ月で絶頂に至ったように、人生の幸・不幸には大小の差はあれど波がある。
幸福の絶頂にある今、揺り戻しでどんな災難が降り掛かるのか想像するのも恐ろしい。
だから俺は無意識に揺り戻しが小さくなるよう、与えられる幸福を遠慮しているのだ。
(二人いっぺんにすることがあるのに遠慮とは…。)
ニーニャに決定権を委ねてもらっている以上、ニーニャの求めを連続で断るのは憚られる。
結果ニーニャとの触れ合いのペースは大体週二、さらにその内1回は三人一緒のベッドで目覚めることになる。
Eランク冒険者にあるまじき所業である。
(これから“揺り戻し”を意識して生活してみるか?)
「ねぇ、ご主人?」
しかし前回のニーニャの求めは断っている。
いつも以上に悩む俺にニーニャが焦れてきたようだ。
「…うん。
ニーニャ、今夜は頼む。」
「ん!」
揺り戻しを意識すると考えておいてのこれだ。
どうせ俺が多少気にしたところで、本当に揺り戻しがあるのかは分からない。
いや、あるのかも知れないがそうと気付けない以上、対策のしようも無い。
変に気にしてマリ姉やニーニャと気不味くなるくらいなら、降り掛かる不幸はその時持てる力ではね除ければ良い。
何だかんだ言っても、結局のところ開き直りである。
「マリ姉、そろそろ起きて。」
「ん~…、あと5日…。」
「ニーニャ、頼む。」
「ん。」
シャキーン!
…プス
「痛ったあ~い!」
割りと良くある朝のやり取り。
…しかしまさかこの直後揺り戻しに見舞われるなど、このときの俺達は誰一人として予期していなかったのだ。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
手分けして用意した朝食
(パン→昨日購入
ベーコンエッグ→俺作
サラダ→ニーニャ作
鶏がらスープ→マリ姉(昨晩)作)
を食べて、使用した食器を片付けたら街に繰り出す。
今日は狩りには出ないが、今晩と明日の朝用のパンに、狩りで使う消耗品等の買い出しだ。
「古布に、砥石に油…」
「回復薬に〈マナの実〉、後は…」
キュルルル~…
「…お腹空いた。」
俺とマリ姉が買った物の確認をしていると、ニーニャの腹が可愛い音を立てて空腹を訴えてきた。
カーン…
ここで分鐘が鳴る。
この前の鐘は11回鳴っていたので現在時刻は11時30分、少し早いが昼飯を摂っても問題ない時間だ。
「ん~…、じゃあ適当に買って摘まむか?」
「ん!」
「いいわよ。」
俺の提案に空腹のニーニャは勿論、マリ姉も否やは無いようだ。(マリ姉の場合通常なら決定権は無い、という野暮はナシだ)
「んじゃ、屋台通りに行くとしよう。」
…………………。
…………。
…。
屋台が軒を連ねる街の大通りの一角、通称「屋台通り」にやってきた俺達。
「お願いしま~す!」
俺がこの街に初めて来た時のように、少年少女が道行く街人にビラを押し付けている。
「さてと…、どこから買う?」
屋台通りに出店する屋台は入れ替わりが激しい。
おかげで飽きが来ることは無いのだが、気に入った屋台が次は無いということもざらにある。
まぁ、その度に良さげな店を探すのも屋台の醍醐味とも言える。
「クンクン…!?、あっち!」
ニーニャが獣人らしく良い匂いを見つけたらしく、手を引くニーニャに逆らうことなくついて行く。
「あそこ!」
ニーニャが指差した屋台は、どうやら串焼きを売っているらしい。
・コケトリス串 100G
・ ラビ肉串 120G
・ ボア肉串 250G
・ ウルフ肉串 50G
:
屋台に立て掛けられている看板には肉に野菜、果ては果物まで様々な串焼きのメニューが書かれていた。
「どれにするんだ?」
豊富というよりは無節操という方が当て嵌まるメニューの内、何を買いたいのかニーニャに訊ねる。
(まさか全種類とは言わないよな?)
串焼き一本一本の具材は其なりのサイズがあり、メニュー全種類を食べるとなると腹がはち切れてしまうこと間違い無しだ。
…それに甘珠瓜の串焼き(300G)等は、俺は食べたいとは思えない。
「これ!」
ニーニャが差したのは看板ではなく、やっつけで貼られた紙だった。
「どれどれ…」
ひとまずゲテモノで無かったことに安心しながら、貼られた紙に書き殴られた文字を読む。
数量限定!(※本日限り・次回入荷未定)
・オーク肉串 500G
「…。」
何だか既視感があるのは気のせいだろうか?
※オーク肉串は揺り戻しではありません。
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