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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
2章  ラスト、パーティーを結成する

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44 個別依頼

ストックが切れました。(やべ…(汗))

 冒険者に復帰してから3日目。

 復帰初日は薬草採取とゴブリンの討伐をこなし、復帰2日目はウルフの討伐と角兎を狩れた。

 1ヶ月も寝ていたこともあり、端折った部分もあるが概ねチュートリアルに沿った依頼を受けていた。

 そして3日目の今日はウリボア狩りになるのだが…。


「それならスマト村からの依頼がありますが…。」


 そう言ってリタに紹介された依頼は、スマト村の畑を荒らすウリボアの討伐依頼であった。

 内容としては、畑を荒らしているのは山から出てきた“はぐれ”のウリボア1体の討伐で、報酬は銀貨3枚(3,000ゴールド)と、常設依頼の5割増しとなっている…のだが。


「う~ん…。」

 

 この街(ベビーリーフタウン)からスマト村までは1日の距離がある。

 1日で討伐を完了したとしても最低3日はかかることになる。

 そうなると常設依頼で3日ウリボアを討伐した方が、討伐報酬としても素材の売却額としても遥かに高額の収入になるのだ。

 つまりこの依頼は最低でも銀貨6枚(6,000ゴールド)の報酬でなければ、確実に塩漬け(長期未受注)の依頼になる可能性が高い。

 リタがこの依頼を紹介する際に言い淀んだのもそのせいだろう。

 ならば何故俺が悩んでいるかと言うと…。


(依頼主はファムさんか…。)


 ファムさん()には村の作物の売却だけでなく、俺個人としてもファムさん家の爺さんに読み書きと計算の勉強を世話になった。

 それだけでなく、こういった個別の依頼はランクポイントが常設依頼より遥かに高くつくというのも悩みの種だ。

 というのも、冒険者は根無し草故に信用が低いが、一定以上のランクとなるとランクに比例して信用も上がる。

 また、現在俺達のパーティー(白の大樹)はマリ姉が仮加入となっていて、パーティーで活動した際のランクポイントが三分割となっている。

 通常であればそれは構わないのだが、現在マリ姉はギルドカードが凍結されているので、その間のランクポイントが無駄になってしまうのだ。

 奴隷を揃えての寄生等防止の為に必要な措置ではあるが、常設依頼のポイント三分割の内一分割分を損失するとなると、マリ姉が攻撃魔法使いである以上、俺とニーニャに加わるポイントは微々たるものにしかならない。

 つまるところ、報酬()を取るか信用(ポイント)を取るかということだ。


「悩むなら受けたら良いじゃない?」


「ん、ご主人のしたいようにやる。」


 悩む俺にマリ姉とニーニャがGo サインを出す。


「だけどなぁ…。」


 金銭的余裕があるわけでもないのに俺の我が儘で依頼を受けるのは躊躇われる。

 それにウリボア1体に攻撃魔法使い含む三人は過剰戦力過ぎる。


「でしたらパーティーを分割してはどうでしょうか?」


 パーティーと言ってもメンバーは他人同士だ、受けたい依頼が割れることや誰かが用事で抜けることもある。

 そういう時にはパーティーの分割だ。

 そうすることでランクポイントの分散等のデメリットを気にすることなく、依頼を受ける自由度が増すというわけだ。

 ならば何故パーティーを組むかというと、パーティーとして所属をはっきりさせることで搾取…例えば新人を無理矢理依頼に同行させ、散々こき使った挙句報酬の分け前無しというような事態を防止するためらしい。

 それでも加入するパーティーによっては同じことの場合も多々あるようだが…。

 話が逸れたが、とにかくこれでファムさんの依頼を受けない理由は限りなく解消された。


「コソッ(マリ姉、気不味くないか?)」


 俺はマリ姉に小声で、俺の抱く懸念を訊ねた。

 ニーニャが俺に向ける好意を受け止められるようになったが、そのきっかけが…その…マリ姉との情事で…、獣人のニーニャは匂いでそのことに気付いているわけで…。

 つまり端的に言うと、ニーニャ的には好いた男と致した女と行動しろというわけ(マリ姉は犯罪奴隷のため単独行動が認められていない)で…。


「ああ!

 そういうことならラス君が目覚めるまでの間に、ニーニャちゃんと話し合っているわ。」


「ん、私とマリア一緒。」


 俺の懸念は杞憂だったようで、知らぬ間に(と言っても1ヶ月もあれば打ち解けるか…)仲良くなっていたニーニャとマリ姉。

 なんなら俺が離れている内に“何か”が進むような気がしてならない。(ニーニャの言う“一緒”というのが意味深に聞こえた)


「そうか…ならすまないが、俺のいない間は好きに過ごしてくれ。」


 「依頼を受けてくれ」とは言わない。

 マリ姉は勿論(奴隷なので命令になってしまう)ニーニャもそれを言ってしまったら、きっと毎日休みなく依頼を受けようとするだろう。

 だから…というのもあれだが、依頼を受けるも受けないもニーニャ次第という卑怯な言い方になってしまった。


「ん、頑張る!」


「ニーニャちゃんには、怪我一つさせないわ!」


 俺の内心を知ってか知らずか、やる気満々といった様子のニーニャとマリ姉。

 その様子が余計に、俺の後ろめたさを強くする。

 

(てかマリ姉…、ニーニャ“には”って。)


 まるで万が一の時は自分を犠牲にしようというマリ姉の内心が垣間見えた気がした。


「ああ、ニーニャもマリ姉も無理はしないでくれよ。」


 だから俺は二人に向けてかけた言葉で、特にマリ姉に釘を刺した。


「リタ、その依頼受けようと思う。」


「はいっ、了解しました!」


 依頼の受注のためリタに向き合った視界の端、マリ姉が一瞬苦笑していたように見えたのは気のせい…ということにしておこう。

 

 

 

 

実はラストの個別依頼の受注は2件目だったり。

(1件目はニーニャのチュートリアル)




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