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37 8年越しの真相

マリ姉の過去編ダイジェスト的な?

(視点は主人公から変わりません。)

 さて…これ以上は関わりたく無いと言うように、バーンさんがそそくさと退散したことで、救護院の俺の病室には、俺とマリ姉の二人きりである。(ニーニャは街中の依頼に行っている。)


「クスン…ラス君ごめんなさい。」


 ようやく涙は止まったようだが、泣き腫らした顔のままマリ姉が俺に謝ってきた。


「いや、俺も知り合いが奴隷になるとか嫌だったし…。」


 俺はマリ姉に自分の気持ちの都合であることを伝え、マリ姉にそれほど気にするようなことではないといった返しをしたが、半分本当の半分嘘だ。

 善良な…今は冒険者を自称する俺だが、散々俺の影口を叩いたり嫌がらせをしてきた村の連中が借金奴隷に落ちようが、俺の構うところではない。

 ならば何故自分を殺しかけたマリ姉を、大金を諦めてまで引き取ったのかと言えば、それはバーンさんが去り際俺に耳打ちしたようなことを期待しての、下心も多分に含んでのことだ。

 この際、善良どころか下衆だという謗りは甘んじて受けることにする。

 俺だって成人した男だし、その相手が好み(巨乳)に更に美しく成長した初恋の女性(ヒト)であるなら『倍プッシュ、ドン!』だ。

 …しかし同時にトラウマもあるわけで、


「えっと、久しぶり…だなマリ姉。

 …魔術師になったんだな。」


 下衆なことを考えはしても実際には手を出す度胸も無く、日和(ひよ)ったことしか言えない俺。(だからこそ“善良”を自称する)


「うん…、私もあの後魔術学校に入れられたから…。

 でも結局魔術師には成れなくて…、あの時ラス君を傷つけただけになっちゃった…。」


ズクッ…


 マリ姉の口から8年前のことが出てきたことで、とうの昔に閉じた筈の傷が開こうとする。


「マリ姉、あの時マリ姉は…俺に何を言おうとしたんだ?」


 聞いたことで更に傷を負うかも知れないが、だからといってこれからマリ姉を奴隷として連れることを考えると、聞かなければいつまで経っても気不味いままだろう。


(マリ姉とは…8年前までみたいな関係で居たい。)


 願わくはそれ以上の関係が望ましいが、マリ姉が犯罪奴隷となった今、俺が求めてしまえば叶ってしまう。

 しかしそれは隷属による仮初の関係で不健全なような気がして嫌だった。

 だから俺の初恋は8年前に散ったことにして、それ以前の何気無い話をして笑い合う緩やかで心地の良かった関係を望むのだ。


「う~ん…どこから話せば良いのか分からないんだけど、───」


 そう前置きをしてマリ姉は、あの日より少し前からのマリ姉の8年間を語り始めた。


 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。


 マリ姉の語った話を要約する。

 そもそもの始まりは、俺がマリ姉に求婚することを決めた春の交流会だった。

 その時俺はマリ姉に婚約者の有無を聞いたのだが、俺とマリ姉が婚約者に関する話をしていたのを見ていた者がいた。

 交流会の結婚相手探しという性質上、暫定売れ残りである俺と、女子としてはかなりの売れ残りであるマリ姉がくっ付こうと(婚約の話を)するのは問題無い。

 しかしそれを問題にしたのが目撃者である、当時12才のウィッチハント村の少年だった。

 その少年はマリ姉を苛めていた中心人物であり、そのせいで交流会に参加できる上限となる12才になっても婚約者がいなかった。

 苛めておきながらも売れ残り同士で嫁の当てにしていたマリ姉が、俺に言い寄られていると焦った少年(…もうガキで良いか。)はその後、マリ姉が採集のために森へ一人で入ったことを見計らい、マリ姉を傷物にしようと襲い掛かった。

 自らに向けられた刃に恐怖したマリ姉は、攻撃魔法を発現させガキを追い払ったことで事なきを得る。

 しかし森から戻った時には、ガキによってマリ姉が攻撃魔法を使いガキを襲ったことにされており、マリ姉が攻撃魔法を発現したことは直ちに国に報告され、村を追放されるように魔術学校への入学が決められた。

 魔術師(攻撃魔法を使える者)の確保は国の政策といっても、魔術学校への入学には金が掛かる。

 魔術学校は貴族の学校という面も持っており、平民だからといって…否、平民だからこそ優遇などされることは無く、マリ姉は「奨学金制度」という平民では見ることの無い額の、国への借金を背負うこととなった。

 この奨学金という制度上、魔術学校卒業後はほとんどの平民は国、または貴族の元で勤めることとなり、魔術師であるという一点で結婚相手の自由もあったものでは無くなる。

 そういった魔術学校に関することを国の役人に聞かされて知ったマリ姉は、だから8年前のあの日、


『ごめんね、私はラス君と結婚出来ないんだ。』


 という、断りの返事になったのだとマリ姉は語った。


「そうだったのか…。」


 8年越しに自らのトラウマとなった出来事の真相を聞き、俺は憤りを何にぶつけたら良いのか分からず天井を仰いだ。

 直接的な原因と言えばマリ姉の伝え方が悪かったのと、マリ姉の話を聞かずに逃げた俺で7:3くらいの割合になるのだろうが。

 それ以前にマリ姉が魔術学校に入学させられた原因の、マリ姉が攻撃魔法を発現したのはウィッチハント村のガキのせいだし…。

 じゃあガキが凶行に走った原因は、俺とマリ姉が仲良くしていたことで。

 俺とマリ姉が仲良くなるきっかけが、スマト村とウィッチハント村の子供(同年代)連中になる。

 つまり俺とマリ姉を引き合わせたのがガキ含む子供連中であり、俺とマリ姉が拗れた(俺の主観だが…)のもガキ含む子供連中のせいなのだ。

 まさに「卵が先か、ニワトリが先か」という話になってしまうのだ。


「…あれ?」


 卵という言葉で、マリ姉の言葉に疑問が浮かぶ。


「なあ…マリ姉、魔術師に成れなかったってどういうことだ?」

 

 魔術学校に入るから…と俺はマリ姉に振られ(裏切られ)(たと思って)、トラウマとなった。

 そしてマリ姉は攻撃魔法を使え(魔術師の条件を満たし)ている。


(なのに何故…?)


 過去の一つに一応のケリがついた途端に浮上した一つの矛盾。

 その矛盾は理由いかんによっては、せっかくケリをつけた過去をまた掻き回すこととなり、現在でも多少なりの厄介事に巻き込まれることは確実となるものであったのだった。




 


 

実はこの辺の話はテイク1から大幅に内容を変更した部分です。

(最初に書いた話だと大分主人公が捻くれてて、マリ姉と昼ドラ並み(作者比)の愛憎劇を数話に渡り繰り広げていましたw)


そして問題が一つ片付いたら、別の問題が見つかるのはあるあるですよね?



いつも読んでいただきありがとうございます。


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