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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
2章  ラスト、パーティーを結成する

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36 囚われた過去、掴んだ今

お察しの通り、ヒロイン二人目でごわす。

 俺が昏睡から目覚めた翌日。

 経過観察のため、救護院で数日の安静を司祭様に言い渡された俺に、早速客が訪れていた。


「お前さんが街に来てから騒ぎがあり過ぎる気がするんだが…えぇ?」


 反応に困ることを言うのは、憲兵長ことバーンさんだ。

 確かにジョンに目を付けられてしまったことで、門でワチャワチャすることは多々あるが、それくらいの騒ぎなど酒場ではそれこそ日常茶飯事だろう。


「文句ならあんたの部下に言ってくれ。」


 暗に俺は被害者だと返す。


「スマン…って違ぇよ。

 何だよ…魔物の囮にされた借金奴隷の保護に、攻撃魔法で撃たれて生還するとかよぉ。」


 …どう考えても俺は悪くないという結論に至るのだが?(特に後者、生きてて何が悪い!)


「はぁ…分かってる、あんたは悪くねぇ。

 しっかしまぁ、どうしてこうも面倒臭い(貴族の絡む)件が集中するかね…。」


 要はバーンは俺に愚痴っているだけだということだ。

 憲兵とはそういう仕事だ、(一般人)に愚痴っていないでキリキリ働いて欲しいものだ。


「…あのぅ、そろそろ私の件について話しませんか?」


 俺の元に訪れた客は憲兵長のバーンさんだけでは無い。

 むしろ俺の元をバーンさんが訪れた理由である人物が、未だに愚痴を吐き続ける(一部の愚痴は俺に関係無くないか?)バーンさんに本題を促す。


「ああ、誰のせいだと言いたいがね。

 …というわけで彼女をどうする、ラスト。」


 見舞い客用の丸椅子に座るバーンさんが、視線を彼の横で床に座る彼女に向ける。


「えっと、久しぶり…。

 …で良いのかな、ラス君。」


 長い黒髪に紫水晶の瞳。

 魔に属する者の証と言われる褐色の肌。

 尖り帽子にローブという、如何にも魔術師といった格好に、首には〈隷属の首輪〉。

 記憶より更に綺麗になり、何より絶壁が二つの高い山となっている。


「うん、久しぶり…マリ姉。」


 同じ痛みを抱えた同士(なかま)、俺の初恋…そして俺の抱える心的外傷(トラウマ)の原因。

 

(俺は今、どんな顔をしているのだろうか?)

 

 頑なに封じていた過去が、今現実となって現れたのだった。



 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。



 さて…どうしてこうなっているのか、状況を整理しようと思う。

 まず俺が昏睡する原因となった『火球』、これを撃ったのはマリ姉であることが確定している。

 魔法に限らず犯罪者以外を害意を持って攻撃したことでマリ姉はレッド(有罪)判定、憲兵に出頭し犯罪奴隷となった。

 取り調べに対しマリ姉は、


「『探索(サーチ)』で見つけた人の反応の近くに魔物の反応があったので、助けようと咄嗟に『火球』を放った。

 人だとは思わなかった。」


 …と供述したらしい。

 バーンさんがマリ姉を連れて訪ねて来たのはマリ姉の供述にあった『探索』を俺に試し、もし供述通りであった場合に同様の事故を防ぐために国へ報告するためが一つ。


「マリア、ラストに『探索』を使うんだ。」


ポウ


 バーンさんの命令に反応し、〈隷属の首輪〉の魔術紋様が僅かに光る。


「う、『探索』。」


サワッ


(ん?)


「マリア、正直に『探索』で見つけた魔物の反応の数を報告しろ。」


 マリ姉が『探索』を使った直後、再びの命令。

 どうやら命令は一度に一つらしい。(まぁ、当たり前か)


「えっ…う『探索』の結果、魔物の反応は0でした。」


「…だよなぁ。」


 マリ姉は戸惑った様子を見せたが、勝手に動いた口から出た報告に、バーンさんは分かっていたという反応を示した。


「違うんですっ、嘘じゃ無いんです!

 あの時は確かに…」


「もう良い、少し黙ってくれ。」


「ん~、むぅ~…!」


 バーンさんはマリ姉の供述を嘘と断じたようだが、俺から見るとマリ姉の様子は、嘘をついているようにはどうしても思えなかった。

 

「で、どうするか決めたか?」


 マリ姉の供述の真偽はついでであり、本題はこちらだ。

 バーンさんの「どうする?」というのは、マリ姉を犯罪奴隷として憲兵に引き渡し金を得るか、マリ姉を犯罪奴隷として引き取るかということだ。


「ぶっちゃけると俺たち(憲兵隊)としては、いつも通りの処理で済む“引き渡し”が良いんだが…。」


 バーンさんは肩を竦めてそう言うが、それだけが理由では無く、冒険者(国に属さない者)である俺に、本来国が管理すべき魔術師(攻撃魔法の使い手)を渡すのは危険というのも理由に含まれるのだろう。


「しかしまぁ…話を聞く限り知り合いっぽいし、そもそも被害者が生きてるパターン事態が稀でなぁ。」


 盗賊などは被害者が出ることで討伐依頼が出るので、被害者が犯罪奴隷の行く末を決められること自体がレアケース。

 しかも捕縛されれば、即引き渡しからの大金に代えられる“はぐれ魔術師”だ。

 バーンさんが愚痴を言いたくなる気持ちも分からないでもない。


「む~…。」


 言葉を発せないでも、俺に必死に訴えてくるマリ姉。


「…すまんバーンさん、どうせならとことん面倒をかける。」


 8年前のあの日…手酷く裏切られたと思っても尚、俺が抱いた「マリ姉を守る」という気持ちは無かったことには出来なかった。


「む~~っ!」

 

 マリ姉の紫水晶の瞳から、ダイヤの大粒のような涙が溢れる。


「…はぁ~っ、んなことだろうとは思っていたけどよぉ。

 生死を彷徨ってその判断たぁ、馬鹿みたいなお人好しだぜ…全く。」


 深い…深いため息を吐き、愚痴が次々と口から出るバーンさん。


ゴソゴソ…


「あれ、何処いった?

 …お、あったあった。」


 マリ姉が座る反対側に身を折って、床に置いた鞄を漁るバーンさん。


ピラッ


「ホレ、契約書だ。」


 渡された一枚の羊皮紙。

 それが何の契約書なのかは、訊ねずとも分かった。


「それに血を垂らしてからこう言え。

 『汝、我に従属せよ』ってな、ほら。」


ガリッ、ピッ


 俺は指を噛み、流れ出した血を契約書に振り掛けた。


「『汝、我に従属せよ』。」


ズッ…


 教えられた言葉を唱えた途端、身体から何かが抜けて行く感覚がした。


ポウッ


 俺の持つ羊皮紙と、マリ姉の〈隷属の首輪〉が同時に光を帯びた。


「よし、契約は完了した。

 これでマリアはラストの所持奴隷だな。」


「ぷはっ、…!

 ラス君、ありがとっ…ぐすっ」


 所有者が俺になったことでバーンさんの命令が解除されたのか、俺に礼を言って泣き出したマリ姉。


「あ~、終わった終わった。

 じゃあ俺は帰るから、くれぐれもマリアに犯罪行為はさせるなよ。」


 俺にそう注意して立ち上がるバーンさん。


スッ

 

 しかし帰ると言っておきながら、立ち上がったバーンさんは俺に近づき、


「コソッ(犯罪奴隷に借金奴隷の制約は無い、好きに楽しめよ色男。)」


 俺が何かを言い返す前に、さっさと出て行ってしまうバーンさん。

 その際のバーンさんの右手は握られ、親指だけが立って天を指していたのだった。


「憲兵隊はそんな奴しかいないのかよっ!?」


 そう叫んだ俺の脳裏には、ジョン・マーカス・バーンさんの良い(憎たらしい)笑顔が浮かんでいたのだった。

初恋のお姉さんを奴隷にしてGET



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― 新着の感想 ―
夜のお楽しみが合法になったことをバーンさんは教えてくれたわけで 生活に楽しみがない世界ではそう言うことが楽しみなわけで 女目線から見ても良いやつじゃん?と思うんですが
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