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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
2章  ラスト、パーティーを結成する

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35 癒えていく傷

元日の二話目更新です。

(確か俺は…ニーニャと狩りに出て)


 こういう時は確実な記憶から順を追って…


「って、ニーニャは!?」


 俺が面倒を見ている獣人の少女がいないことに気付き、いないと分かっていつつも俺が寝かされていた部屋を見回す。


「呼んだ、ご主人?」


 もしや外にいるのかと部屋の窓から見える範囲の外を探していると、窓と正反対…つまり入り口側からニーニャの声が聞こえた。


「ニーニャっ…どわぁ!?」


 声の聞こえた方に振り返ると、ベッドサイドからひょっこりと顔を出していたニーニャの、予想外の近さに驚いた。


「ご主人、良かった…。」


キュッ…


 瞳を涙で潤ませて、俺にそっと抱き着いてくるニーニャ。


「…ぐすっ」


(泣いているのか?)


 ニーニャの様子といい、見覚えの無い部屋といい、俺がただ寝ていただけで無いことは確かなようだ。


「ニーニャ、何があったんだ?」


「それは(わたくし)から説明いたしましょう。」


 俺はニーニャに訊ねるも、それに応えたのは第三者の年老いた男の声だった。


「体調はいかがですか、冒険者ラストよ。」


 謎の紋様が全体的に刺繍され、襟・袖口・裾が赤く縁取られた白いローブを来た好好爺が、先ほど部屋から駆けて行ったシスターを連れて寄って来ていた。

 …ということは彼が司祭様なのだろう。


「あぁ…まずまず、だな。

 …それでここは?俺は何でここに?」


「それは僥倖、神々は貴方にまだ死を定めていないと見える。」


 司祭様の言葉から、ここが創世教の関係する場所だということがわかった。


「冒険者ラストよ、まずは落ち着いて。」


 司祭様のやんわりとした注意に、俺は気が急いていたことを反省する。


「ラストさん…、貴方はずっと昏睡状態だった。」


 昏睡状態だと!?

 一体何年…いや、ニーニャの外見から年単位の長期間ではない筈。


(精々…一週(10日)間ってとこか?)


「…俺はどれだけ眠っていた?」


 場合によっては直ぐにでも依頼をこなさなければ、ニーニャ諸ともギルドから登録抹消されてしまう。


「…落ち着いて聞いて、良いですか?」


コクリ


「冒険者ラスト、貴方は約一ヶ月眠っていました。」


 一ヶ月(40日)間もだと!?


「あ…あぁ、うあぁ…!」


 予想以上の長期間昏睡していたことを司祭様に告げられた俺は、頭の中にこの後自分たちに降り掛かる困難が押し寄せていた。


「いかん、パニック!

 シスター、『平静(セレネティー)』を!」


「はいっ、彼の者に安らぎを『平静』っ!」


パアァッ


 温かい光に包まれたような気がしたが、俺はそれどころではなかった。


(Eランクの最低依頼受領期間は…大丈夫。

 ニーニャは期限切れだが、罰金は俺が払えば…)


「って、あああっ!」


「何と!『平静』が効いて無いだと!?」


「司祭様どうしましょう!?」


 司祭様とシスターが何やら右往左往しているが、俺はもっと大事なことに気付いた。


(宿の支払い!

 不味いぞ…ニーニャの泊まった分だけでも、俺の貯めていた金じゃ足りない!?)


 一泊3,000ゴールド×(かける)40日で12万ゴールド、オーク1/3体分の大金だ。

 俺が貯めていた金は確か10万ゴールドになるかといったところ。

 このままではニーニャの罰則金を支払うどころか、俺もニーニャも奴隷落ちだ!


「あばばばっ…!」


「どどど、どうしましょう!?」


「落ち着いて…まだ手は…ブツブツ…」


 俺以外にもパニクるシスターに、独り言をひたすら呟く司祭様。

 救護院の室内は(あ、治療の喜捨もあったか!)、はっきり言って混沌(カオス)であった。

 

パアァンッ!


「は?」(←シスター)


「ひ?」(←司祭様)


「ふぅう゛ぅ゛…っ!」(←俺)


 突然室内に響いた破裂音に目を丸くする司祭様とシスター、そして音の発生源であり頬の痛みに悶える俺。


「司祭様の話、聞く!」


 瞳孔(黒目)を開き、可愛い三角耳を伏せ(いわゆるイカ耳)たニーニャが、振り抜いた手をそのままに強い語気で俺に言った。


「ひゃ…ひゃい。」


 いつかも見たような気がするニーニャに、俺は頬の痛みを押して返事をする一択であった。


 … … … … … … …。

 … … … …。

 …。


「本当に…貴方が目を覚ましたのは、神のご加護のおかげでしょう。」


「…。」


 そう言って事の経緯の説明を終えた司祭様に、俺は何とも言えなかった。

 何でも…ここ(救護院)に運ばれて来た時点で、一目見て司祭様が治療を諦める程、俺は酷い状態だったらしい。

 それでも治療を求めるニーニャのあまりの剣幕に圧され、司祭様が使える最上の回復の奇跡(『大回復(グレーターヒール)』)を施したところ、俺が全身に負った火傷が回復していったのだとか。

 しかし回復したのは身体のみで、その場で俺の意識が戻ることは無かった。

 魔法は魔力による干渉だと以前ニーニャに説明したが、魔力の反発を押して破壊をもたらす攻撃魔法は、肉体のみならず精神も破壊する。

(だからこそ攻撃魔法は脅威とされる)

 つまり全身を魔法の火に焼かれた俺は、精神も同様のダメージを負ったということだ。

 肉体は回復したものの、精神の回復は当人次第で、二度と目覚めない可能性が非常に高い。

 それが俺の肉体を治療した司祭様の診断だった。

 その診断結果を受けたニーニャは宿を引き上げ、治療院で手伝いをしながらシスター達に教わり、この一ヶ月間俺を付きっきりで看病してくれていたらしい。(つまり下の世話も…)

 その甲斐があり俺は一ヶ月後…つまり今、こうして目覚めることが出来たのだ。


「…ニーニャ、ありがとうな。」


「ん、ご主人居なくなっちゃ嫌。」


 過分に懐かれているような気もしなくもないが、ニーニャといることが当たり前となっている自覚もある。

 ニーニャに抱く俺の感情がどういった(親愛か異性愛か)ははっきりとしないが、ニーニャといる今が幸せであることは揺るぎ無い事実であった。

話の温度差で風邪引きそう。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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