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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
2章  ラスト、パーティーを結成する

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34 夢を…見ていたんだ。

あけおめ~っ!!

新年一発目から回想スタートだぁっ!!

─ 8年前(ラスト7才の晩秋) ─


 村の連中の嫌がらせにもめげずに参加し続けた交流会の6回目。

 俺はこれまでと違いある覚悟を胸に、マリ姉のいるウィッチハント村にやって来ていた。

 

「よ~し…それじゃあ二回目の奴らは全員中に入れ。

 それとまだ相手を探している奴もな。」


 交流会の会場であるウィッチハント村の集会場の前、そこで引率役の大人がいつも通りの指示を、俺が初参加してから半分以上が入れ替わった子供たちに出す。

 俺は、前回や前々回に相手を見つけて親子連れでそれぞれの相手の元へ向かう集団に紛れて、集会場組から抜け出した。


(マリ姉、まだいるかな?)


 向かう先は二期(刈り入れ後)の交流会の時の待ち合わせ場所である、脱穀の済んだ麦藁を保管する村外れの納屋だ。

 前回の交流会の時に、俺はつい興味本意でマリ姉の婚約者の有無について訊ねてしまった。

 10才になって以降も俺と会ってくれるマリ姉に、婚約者が居るのに俺に気を使って会ってくれているのかが気になったのだ。

 その質問の答えは、マリ姉には悪いと思うが、そもそも交流会には不参加(婿探しはしていない)という、俺にとっては喜ばしいものだった。

 しかし事情を知らない者から見るとマリ姉はいわゆる“売れ残り”で、俺が婚約者の有無について訊ねたせいで、誰かと婚約を結んでしまっていたらと思うと嫌だった。


「あ、ラス君…今回も来たんだね?」


 交流会を放ったらかして会いに来た俺に、マリ姉は少し困ったように微笑む。

 

(やった、いた!)


 納屋の扉の隙間を何とか抜けて中に入ると、この二年でさらに綺麗になったマリ姉が待っていたことに、俺は飛び上がるほど嬉しかった。

 この日のために俺は前回の交流会からの約半年間、オークと揶揄される体型をどうにかしようとあれこれと試してみた。

 しかし一日中動き回ってみても疲れるだけだったし、飯を食べるのを我慢しても空腹で倒れて両親に心配をかけただけに終わった。


(マリ姉は最初から僕を嫌っていなかった。)


 美人なマリ姉に相応しい姿になりたかったが、それは俺のわがままだった。

 もはや呪いと言ってもいいほど変わらない体型。

 ならありのままの姿で、マリ姉が言ったようにうんと優しくしよう。


「マリ姉。」


「ラス君…どうしたの?」


 そうマリ姉に切り出した時の俺は、きっと今までになく真剣な表情をしていたことだろう。

 いつもと違う俺の雰囲気に、マリ姉は怪訝に思いながらも俺の話を聞く態勢になった。


(緊張で心臓が口から飛び出そうだ。)


 心臓の動きが全力疾走したよりも速くなり、地面が揺れているようで立っているのもやっと。


(言え、言うんだ…!)


 自分を叱咤し、その言葉を紡ぐ。


「マリ姉、僕…いや俺。」


 思えばこの時に一人称が変わった。


「俺…こんな(体型)だけど、マリ姉に優しくするし、仕事もいくらでも頑張るから…」


「…っ。」


 俺が何を言いたいのか察したマリ姉が表情を固いものにしたような気もするが、自分の気持ちを伝えることに必死で覚えていない。


「マリ姉を苛める奴も俺がどうにかするし、えっと…とにかくマリ姉は俺が絶対守って幸せにするから…」


 それは余りにも不恰好で、呪いにかけられた醜い男が女神に懇願するような有り様。


「だから…、俺と結婚して下さいっ!!」


 薄暗い埃っぽい納屋の中。

 しかしそれは当時考え得た、俺の精一杯の本気の求婚(プロポーズ)だった。

 そして俺の一世一代の告白に対するマリ姉の返事が…


『ごめんね、私はラス君と結婚出来ないんだ。』

 

 悩む素振りも無い断りだった。


「っ…!」


ダッ


 俺はわけも分からず、納屋の出口に駆け出した。


「待ってラス君、話を聞いて!」


 追いかけてくるマリ姉の静止を無視して、俺は納屋の外に…


ガンッ!ドサッ


「~っ!」


 身体が出口に入らず、俺は納屋の扉にぶつかり尻もちをついた。

 この呪われた体は、こういう時でさえ俺を道化にする。


「ハァハァ…ラス君、大丈夫?」


 痛みに悶絶する俺に、追い付いたマリ姉が手を差し伸べる。


パシンッ!


「痛っ…!」


 マリ姉に差し伸べられた手を、俺は(はた)き、


「マリ姉も俺を馬鹿にして嗤っていたんだろ!?

 今更俺の味方みたいに振る舞うのは止めてよ!」


 そう吐き捨て、今度こそ俺は納屋の扉の隙間に身体を捩じ込み納屋の外に出た。


(誰も、俺のことなんか…!)


 信じていたマリ姉に裏切られ絶望した俺は、そのままウィッチハント村にいる気分でもなく、半ば自棄となって一人でスマト村へ帰って行ったのだった。













─ 現在 ─


(あの後両親や村の大人たちに説教されたっけ。)


 スマト村とウィッチハント村は日帰りで往復出来る距離にあると言っても、子供が一人で通るには危険だった。

 それにウィッチハント村からの帰りに、俺がいないことで村中を捜索したらしい。


(それでも事情が事情ってことで許されたんだっけな。)


 しかしその代償に、「売れ残り女にも振られた魔豚男」というレッテルが貼られることになったのだが…。

 この交流会以来、俺はウィッチハント村へ行くことは無く、俺が8才になった年にマリ姉がトーダイ魔術学校へと入学したという風の噂を耳にしたのが最後だったか?


ガチャンッ!


 物思いに耽っていると、何かを落としたような音が聞こえた。

 

「あ…、あ…。」


 物音の方を向くと、教会のシスターが幽霊を見たような目で俺を見ていた。


「し、司祭様っ司祭様~!

 昏睡していた患者さまが目を覚ましました~っ!」


ドタタタッ…


 そう叫ぶと落とした物も拾わずに、部屋から駆けて出て行ってしまったのだった。


(何だったんだ、…ん?)


 ここに至り、ようやく俺は違和感に気付く。


「ここは…何処だ?」


 



ラストの美人トラウマの本元の出来事でした。


元日スペシャル!

本日12時00分に二話目更新します。


いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

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