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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
2章  ラスト、パーティーを結成する

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31 ニーニャのチュートリアル

ラ「何で俺がチュートリアルを!?」

ギ「そうやって回すものだからな。」

ラ「無理だって!俺もまだ新人だし。」

ギ「依頼料出るし、ランクポイントも高いぞ?」

ラ「よし、やろう。」

「ギャッギャギャッギャッギャッ♪」


 〈初心者の森・浅層〉を、歌うような鳴き声を上げながら歩く1体のゴブリン。


ひゅっ


 その正面に白い影が飛び出す。


「ギャッ!?」


ヒュッ!


 影に驚き立ち止まるゴブリン。


ブシュッ…!


「ッ!ッ!?」


 しかし次の瞬間には首から血を噴き出し、鳴き声を上げようとして出ないような様子を見せる。


パタッ


「ッ…、ッ…!」


 倒れ伏して尚も仲間を呼ぶためか、はたまた仲間に危険を知らせるためか、鳴き声を上げようとするゴブリン。


トスッ


 しかし倒れたゴブリンに白い影が近付き、無防備な後頭部に短剣を突き刺し、止めを刺した。


「…、ご主人終わった。」


 ジッ…とゴブリンを見つめ確実に死んだことを確認したニーニャが顔を上げ、隠れて見ていた俺のいる方向に顔を向けて言う。


「ああ…ニーニャ、お疲れさん。」


 流石は生まれながらの狩人である獣人族。

 初ゴブリン討伐にも関わらず、実に手並みの鮮やかな狩りだった。

 …自分の時のことを思い出し落ち込みそうになるが、いくら〈浅層〉でもそれは危険なのでぐっと耐える。


「ゴブリンの討伐証明部位は…」


「ん、ここ。」


ザクッ


 俺の説明を遮り、ゴブリンの右耳に解体用ナイフを突き立てるニーニャ。

 〈ゴブリンの右耳〉を斬り取って、血をその辺に生える葉っぱで拭ってから腰の麻袋に仕舞うニーニャを見て、俺はこれまでのニーニャのチュートリアルクエストを振り返る。


─ 薬草採取のチュートリアル依頼にて ─


 Gランク冒険者の初めての依頼は大体が薬草採取の依頼だ。

 報酬は少ないが、その分危険も少なく安定して小銭を稼ぐことの出来る依頼だ。


「あ…!」


 ギルマスからの受け売りの〈初心者の森〉の説明をニーニャにしながら、薬草の採取ポイントに向かい歩いていると、ニーニャが何かを発見したような声を上げた。


「ん?ニーニャどうし」


「えい。」


ヒュッ!


 俺はニーニャにどうかしたのか聞こうとしたが、その前にニーニャはいつの間にか用意したスリングから、道中で拾った手頃な石礫を草薮に向かって投擲した。


「え、ちょ…ニーニャ」


ガサガサ…


 戸惑う俺を他所に、ニーニャは石礫を投げた草薮に入っていってしまう。


(兎に角追いかけないと…!)


 いくら弱い魔物しかいないとはいえ、ゴブリン数体に囲まれてしまえば危ない。

 この時の俺はそう考え、慌ててニーニャの後を追い


ガサッ!


「おわっ!?」

「っ!?」


ドサッ…!


 草薮から飛び出してきたニーニャに驚いた俺は尻もちをつき、俺と同様に驚いたニーニャもバランスを崩し、尻もちをついた俺に倒れてくる。


(危ないっ!)


 咄嗟にニーニャを受け止めようと動く俺。

 そして…


チュ…ドサッ!


 ニーニャを受け止めた俺だが、勢いは止められず背中を地面に打ち付ける。


(いっ)てぇ~…。」


 頭は庇った筈なのに何故か(でこ)が痛む。


「ご主人、大丈夫?」


「あぁ、問題無…いぃっ!?」


 安否を訊ねるニーニャに反射的に返事をしたが、俺とニーニャの姿勢がヤバいことに気付き、俺は変な悲鳴を上げた。


「そう…?良かった。」


モソモソ


 俺の無事を確認したニーニャが安心した顔をしたと思えば、俺に“馬乗り”のまま動き始めた。


(止めっ、…その動きはダメだって!?)


 ニーニャが前のめりになり俺の頭上に右手を延ばす。

 この時ニーニャの左手は俺の胸に置かれ、脇腹をニーニャの太ももではさまれて挟まれていた。

 そして押し付けられて密着する互いの下腹部。


「ニーニャ、一端降り」


 このままではエレクトパート2(古の略)になってしまうと予感した俺は、ニーニャを退かそうとその細い腰を掴む。


「見てご主人、捕った!」


 目の前に掲げられる歯鼠。


「おわああぁっ!…あ?」


 急に目の前に現れた魔物に驚いた俺だが、おかげで(?)逆に冷静になれた。


「獲物!ご主人にあげる。」


 キラキラと何かに期待する目のニーニャ。

 姿だけで言えば捕った獲物自慢。

 しかしニーニャは「あげる。」と言った。


(…給餌かぁ~。)


 獣人族の習慣と一部の魔物にある習性だ。

 魔物で言うと、この行動は自らの属する群れを明確にし、自分が群れに貢献する個体であることを示すためだと言われている。

 獣人族も似たようなもので、血族同士で獲物を渡し合い親愛と関係性の強化を主な目的として、獣人族が種族単位で村を作り始める前の古くから行われてきた習慣らしい。

 このことから血族ではない俺にニーニャが給餌するというのは、ニーニャが俺を血族に近く感じているということになるのだろう。

 だとすると俺がニーニャに言うことは一択。


「ああ、ありがとうニーニャ。」


 獲物を捕ったニーニャに礼を言い、お返しというわけでもないがニーニャの頭を撫でる。


「んふふ~♪」


 予想通りご機嫌になるニーニャ。

 …しかし機嫌が良いのは分かるが、俺に乗ったまま揺れるのは止めて欲しい。


(ラットか…、調理して貰えるのか?)


 ニーニャがくれた歯鼠は食用出来ないわけではないが、体長が30cm程と小さく小骨が多いため、鼠取りの罠に掛かったらスープの出汁にする程度の扱いだ。

 ラットを渡され渋い顔をする〈旅立ちの風亭〉の女将さんを、ありありと想像する俺だった。



歯鼠は鶏ガラや煮干し的なポジションです。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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