26 昨晩はお楽しみでしたか?
メリクリ!作者から読者諸君へのプレゼントだ!
〈寝るだけの宿〉の自室に、物理と精神両方重い身体を引き摺って戻ってきた。
ドサッ
「…っ、フゥー…。」
脱力しベッドの縁に勢い良く座り、尻の骨(尾てい骨だったか?)に硬いベッドがぶつかった痛みに息を詰まらせるも、ようやく落ち着けたことに長い息を吐く。
「ご主人、どうしたの?」
訂正。
俺はまだまだ落ち着くことは無い。
先ほどまで「ご主人のにおいがする。」と言いながら、この狭い部屋の隅々を見回していたニーニャが寄ってきた。
ふわり
部屋が狭いせいかおかげと言うべきか…、寄ってきたニーニャから、ミルクのような野花のようななんとも言い難い、しかし嫌いにならない自然な甘い匂いが感じられた。
(この匂い…村の女たちが年頃になると纏っていた匂いに似ているな。)
しかし村の女たちの匂いは外で道をすれ違っただけでも分かったのに、ニーニャの匂いは狭い部屋で近寄ってようやく気付いた。
それなのに匂い自体はニーニャの方が、土や汗などの他の匂いが混ざらない…なんというか、鮮明な匂いのように思えた。
「あ、そうだ。」
ニーニャの匂いについて考えていて、俺はあることに思い至った。
「何するの?」
俺が床に置いた背負い袋から取り出した手拭いを見て、ニーニャが俺にもう一度訊ねてくる。
「ああ、身体拭かないとって思ってな。」
俺は体型のせいか汗をかき易いので、せめて毎日身体を拭くようにしている。
それにニーニャにいたっては、今日森で転んで汚れてしまったことだろう。
「ふ~ん…。」
だと言うのに当のニーニャは興味をなくしてしまう。
チャプン…
「ニーニャ、ほら。」
部屋に置かれた水差しに突っ込んで濡れた手拭いを、ニーニャに差し出す。
「…わたしに?」
そう訊ねたニーニャに、俺はようやく自分の説明不足を痛感した。
ニーニャは元奴隷で俺のことを未だに主人と呼ぶ。
俺が身体を清めようと準備したところで、ニーニャには関係無いことだと思っても仕方ない。
ニーニャも年頃の少女、自身の身を清めたくないわけがなかったのだ。
それを俺は「種族の感性の違い」として、深く考えずに流していたのだ。
「ああ、ニーニャは手拭いなんか持っていないだろ?
俺のやつは嫌だろうが、今日はそれで勘弁してくれ。」
失態に気付いた俺は、俺がニーニャを奴隷として扱っていないということを、それとなく伝える。
「ん、ありがと。」
伝わるかどうか微妙なところだったが、俺の意図はそれなりに伝わったらしく、ニーニャがふにゃりと微笑んだ。
(っ!?…はぁ~、生殺しだな。)
今は俺が保護しているニーニャも、いずれは俺の元から去る時が来る筈だ。
その時に身体が清らかであることが重要になることもあるだろう。
今俺の目の前で屈託のない笑顔を見せるニーニャが、その時になって顔を曇らせるような真似は絶対にしたくない。
しかしそのニーニャ自身が不意に、俺の辛抱を揺さぶる行動に出た。
「ん。」
シュルッ…
こともあろうかニーニャは、自身の着るノースリーブワンピースの肩紐を徐に外し、衣服に隠された上半身を晒したのだ!
「△○*■☆#ッ!?」
滑らかな白い肌に意外と高さのある2つの膨らみ。
その双丘の頂上には、小ぶりな薄紅色の蕾がツンと上向きに勃ち、その存在を主張していた。
「んっ…、あっ…。」
パニックに陥り言葉にならない叫びを上げる俺を他所に、ニーニャは身体を清め始め、時折悩ましげな声を上げる。
(おぱぱぱぱっ…!)
目と耳…ついでに鼻から与えられる強烈な刺激に、俺の思考も薄紅一色になり機能しない。
そして…
「ぷしゅ~…。」
バタン
刺激に耐え切れなくなった頭から水蒸気を噴き、俺は日に二度気絶するという、ある意味で貴重な経験をした。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
コケーッ!
「…ん。」
何処からか聞こえてきた蛇尾鶏の鳴き声で意識が浮上する。
(…酷い夢だった。)
気が付いたら暗い空間にいて、やたらと偉そうなオッサンに開口一番に「情けない」と言われ、抗議しようとしたら俺の姿を目にしたオッサンに人間か魔物かを真面目に問われ抗議する気が失せたり…。
目覚める直前には特訓とか言って、人肌より少し高めの温度にされた重石を、仰向けになった俺の腹の上に載せられた。
しかし特訓と言いつつ…載せられた重石はそれほど重くもなく、土を一杯に入れたずだ袋と同じくらいの重さでしかなかった。
ずしっ…
そうそう、こんな感じの重さだった。
「って、何だ…?」
まだ寝惚けていて夢で見たことを現実と勘違いしていると思いきや、確かに俺の体に“何か”がのっている。
(てか、俺はいつ服を脱いだ?)
昨晩は酒を飲んだとはいえ、泥酔するほどは飲んでいない。
だと言うのに昨日一日の記憶の欠落が多い。
モゾッ…
俺の上に乗った何かが身動ぎした。
「んう?…あ、ご主人起きた?」
肩に白い布をかけ、寝惚け眼でそう言う裸の猫耳美少女。
俺を主人と呼ぶ彼女を見て、昨日の記憶が一気に甦る。
「あ…あぁ、おはようニーニャ。」
「ん、おはよ。」
俺は昨日保護した猫人族の少女…ニーニャと、互いに裸で朝を迎えたのだった。
「…、ってぇえええぇ~!?」
夢で見たオッサンが「やれやれ…」と、肩を竦める姿が見えた気がした。
別のオッサン「なぁ~にぃ~!?」
※ネタバレ注意!
ヤッてません。(今は、まだ)
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