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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
6章  初心忘れること無かれ

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235 VSジャムール

Tips:〈ガイアファング〉

 魔王が出現するより遥かな太古、現在より狭く潤っていた現〈死の砂漠〉のどこかに存在した古代文明〈ア・ラビ・アッタ〉で製作された魔剣。

 大地を操る力があると伝わる伝説の魔剣であるが、非常に短い間隔で『石牙』を発動できる他、剣身に流れる砂を纏わせることで、硬い物体も切削切断するという機能しか確認されていない。

 この剣は〈ア・ラビ・アッタ〉の王であるガイア王のために当時最高峰の技術で製作された「ガイア王の牙」であり、ガイア王はこれを用いて1つの戦で千の敵を屠ったと云われる。

 ただ、当時の兵の動員数を示す記録と照らし合わせるとガイア王1人で敵軍を殲滅したこととなってしまうため、〈ガイアファング〉自体の能力的にも歴史に良くある“誇張”だと結論付けられている。



「『石牙』、行け。」


ガガガガッ!


…ジリ


 次の『石牙』発動までの僅かな合間に、1歩前進。


「『石牙』、行け。」


ガガガガッ!


ジリジリ


 今度は1回分の攻撃が止まるタイミングを見切り、2歩進めた。

 …がこの調子では、とてもでは無いがジャムールを倒す…どころか攻撃すら出来ない。

 ええい、間怠っこしい!


(…行けるか?)


「『石牙』、行け。」


 2歩前進出来る隙があるのなら、スキルの1つくらい…発動する時間はありそうだ。


ガガガ─

 

 俺は礫の雨を盾で防ぎながら、ジャムールが次のスキルを発動する隙を狙う。


─ガッ!


 一回分の礫を受け切り、盾がふっ…と軽くなる。


「『石─」

(ここっ!)

「『突撃(チャージ)』ィイッ!!」


 すぐにまたジャムールが『石牙』を発動しようとするが、俺の方が早い!


ダッ!

「なっ!」


 ただ前進するだけのスキルであるが、戦闘で相手に距離を詰められるというのはプレッシャーになる。

 実際淡々と『石牙』を発動していたジャムールは俺の急接近に驚き、絶え間無く飛んで来ていた礫の雨が止む。


 先ほどまでのジャムールは、俺に散々『石牙』を撃ってきてくれたのだ。

 今度は俺が、ジャムールに攻撃する番だ!


「『薙ぎ払い(ワイドスラッシュ)』ッ!」

ブォンッ!

 

 俺は続けざまにスキルを発動。

 ジャムールの左手側から、俺の持つ〈巨像魔猪の骨槍〉が襲う。


「チッ…!」

ガギン!


 ジャムールは俺が接近したことで後退しようとしたようだが、ここで槍のリーチが活きた。

 左手の剣で俺の槍を防いだジャムールは、思ったように動けず舌打ちを溢す。


 攻撃は防がれたが、そんなことは想定内。

 俺は更なるスキルを発動し、ジャムールに畳み掛ける。


「『シールドバッシュ』ッ!」


 『シールドバッシュ』は主に接近された際の牽制として使われることが多い技だ。

 しかし『ウェポンマスター』のオットーさんが扱えば、盾は攻防一体の厄介な打撃武器と化する。


 身体を硬い物にぶつけたら、当然痛い。

 斬りつければ血の出る剣のようにダメージが分かり易いわけでは無いが…いやむしろ、対人戦闘においては「ダメージが分かりにくい」というのは「相手の退き際を誤らせる」という利点ともなる。


「くっ…、『ジャストパリィ』ッ!」

ガギィイィンッ…!


 だがジャムールは対人戦闘のスペシャリストである傭兵だ。

 カウンタースキルを使ったジャムールが右手に持った短剣により、俺がヤツを打ち据えようと突き出した盾が捲り上げられてしまう。

 

 互いに胴体はガラ空き。

 だが俺とジャムールの反応は、全く逆のものとなる。


(しまった!)

()った!」


 俺が右手に持った槍はジャムールが左手に持つショートソードと未だに迫り合っている。

 この状況で決め手となり得るのは、俺の捲り盾かヤツの短剣のどちらか…又は両方。


 とはいえ、捲り上げられた盾と振り上げた短剣。

 このどちらが引き戻すのが速いか?といえば、当然「軽く」かつ「自分の意思で振るった」ジャムールの短剣になるだろう。


(まだだっ…!)


 だから俺は新たな条件を付けた。

 『ウェポンマスター』の“武器”は、己の身体も例外では無い。


「『ダウンストライク』ッ…!」

グワッ!


 俺はジャムールによって捲り上げられた盾を、徒手スキルにより無理やり振るう。

 下部がフォーク状の盾と相まって、左腕を打ち下ろす俺には…きっと〈殺戮巨熊(タイラントベア)〉がその凶悪な爪を振るった姿が重なったことだろう。


 何故そう思うか?

 それは─


「ッ!?…舐めるなっ!」

ギャリンッ!


 一瞬恐怖に顔を強張らせたジャムールであったが、左手のショートソードを右手の短剣で支えて受け止めた。

 先ほどは短剣で『シールドバッシュ』を弾いたジャムールだったが、やはりあの薄刃では打ち合いを避けたいのだろう。


グッ…!

「削れっ、『ガイアファング』!」

ギュイイイィッ!


 ジャムールの弱点を見つけた俺であったが、そのことに余裕を感じる暇は与えられ無かった。


バキンッ!

「っ!?」


 嫌な音を出し始めたジャムールのショートソードによって、俺の盾のフォーク部分の爪が1本…折られてしまったからだ。

 盾の加工を頼んだガンキンは上部に比べて脆くなると渋い顔をしていたが、思い切り叩き付けたならともかく…少し押し込まれただけで折れるほどでは無い筈だ。


ギュイイイィッ!

バキンッ、バキンッ!


 だがそれだけに留まらず、2本…3本と次々に爪が折られていく。


「っ!?、このっ…『鎧砕き』『同時突き(ツイン・スラスト)』ッ!」

ガガッ!


 焦った俺は「どうにかしなければ…!」と、ジャムールのショートソードに攻撃を加える。

 しかし─


ギュイイイィ、バキッ!ィン…


 ─ジャムールのショートソードから聞こえる嫌な音は止まることは無く、遂に全てが爪をへし折られてしまった。

 まさかの事態に、俺はほんの僅かな間唖然としてしまう。


「そらっ!」

ブンッ!

「ッ!」

ギャリィイッ…!


 その隙にジャムールは返す剣で俺を斬ろうとしてきたが、俺は盾を構えながら咄嗟に跳び退いた。

 剣先の掠った盾の表面には、そこらの剣では到底付ける事の叶わないような深い傷が残される。


(『防御無視』の魔剣か…!?)


 …きっと受け止めようとしていたら、盾ごと真っ二つにされていた可能性が高い。

 だが咄嗟に跳び退いたは良いものの、それは「ジャムールとの間に距離が出来る」ということ。


 フォーク部の全てをへし折られ防御範囲が狭まった盾では、胴体はともかく…足元までカバーすることは難しい。

 

「『石牙』─」

ズズズ…


 奴らは追跡者を排除することが目的なため、足を犠牲に胴を守っても意味が無い。

 かといってダメージ覚悟でジャムールと刺し違えたとして、やはりダマルは逃がしてしまう。


 あと取れる方法としては、村の救出隊が来るまで戦闘を長引かせる事。

 だが…木々を盾に出来るとはいえ、鈍重な俺が稼げる時間はそう長くは無いだろう。

 

 装着の時間を惜しみ、防具は「胸当てのみ」という超軽装で飛び出して来た俺。

 しかし今この状況に至ると、腕利き(ジャムール)と戦うことになる可能性が高いことは分かっていたのだから、きちんと手甲や脚甲も装着するべきだったと思う。


(せめてもう1人─)


 そんな弱気な考えがふと頭を過る。


(─いや、いるぞ…!)


 今は姿を見せていないが、俺は1人でここに来たわけでは無かった!

 まぁその“彼”は1人では無く1体なのだが…正直な話、村人の誰か1人が援軍に来るよりも頼もしさを感じる。


 流石にジャムールとの戦いへの参加は無理なことは分かるが、行商人であるダマルが戦えるとは思えない。

 つまり俺がジャムールを倒しさえすれば、あとは“彼”…スラストがダマルを蹴飛ばしてくれることだろう。


「…くはっ!」

ピキッ…


 「他人の恋路を邪魔する奴は六脚馬(スレイフニル)に蹴られる」というが、多少違えど例え話そのままな状況を想像して可笑しくなってしまった。


「…気が触れたか。」


 危機(ピンチ)に口から笑いを漏らした俺を見て、ジャムールは憐れみの目を俺に向けてくる。


「安心しろ、抵抗しなければ楽に逝かせてやる。」


 もう勝った気でいるジャムールだが、俺はまだ一切のダメージを受けておらず武器も…盾もまだまだ使える。

 あとをスラストに任せられるのだから、なんなら普通よりも激しく抵抗するぞ?


「はっ…「クソ食らえ」、だ。」

ピキピキッ


 俺はジャムールの勝利宣言を鼻で嗤い、槍の穂先を向けて戦闘の意思を示す。


「そうか…、行─」


 それを受けたジャムールは、俺に憐れみの目を向けたまま礫の雨を浴びせようと口を開く。

 が、その瞬間─




パキン、ポロッ…




 ─『石牙』を発動させているであろうジャムールが左手に持つショートソードが、その剣身の半ばからポッキリと折れたのであった。




 

皆大好き(←偏見)“ 武 器 破 壊 ”


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ep14「序章人物紹介」にリタのAI絵を追加しました

(↑今更!?)


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 武器破壊は確かにロマンですなぁ…。個人的には北斗○拳の拳盗捨断とか、陸奥○明流の牙斬とか、攻撃の要となる相手の拳を潰す技も好きですな。 それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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