230 自分だけは大丈夫? ※別視点あり
前半は三人称視点になります。
なんかここ数話が不人気なようで…
評価ポイントの下降が止まらぬ orz
猫人族の村に到着したその日の晩。
いつもの宿代わりの空き家に案内された行商人…ダマルと、護衛(兼監視)の Cクラス傭兵のジャムール。
ユラッ…
室内の唯一の光源であるランタンの火に照らされ、壁に大きく写った影が揺れる。
「…聞いていた話と随分違うようだが?」
ブチッ、ムシャリムシャリ…
ダマルを責めるようにそう言ったジャムールは、硬い干し肉を噛み千切って咀嚼する。
ブルッ
「お、俺にだって何がなんだか…。」
ジャムールに睨め付けるような視線を向けられたダマルは、思わず素の口調に戻りながらも「騙したわけではない」と弁明する。
…ダマルがその身を震わせたのは、単なる寒さによるものでは無いのだろう。
「チッ…それで、どうするつもりだ?」
「…ひとまず、いつも通りに商売を…。
やつらは単純だから、それで誤解は解ける筈だ。」
不満を顕に計画を尋ねるジャムールに、当初の計画通りに動くことを伝えるダマル。
「筈」と不安要素を示しているが、これまで巧くやってきたという自負…そして村人達への侮りがダマルにはあった。
「はぁ…、上手くいかなかったら?」
「…その時は仕事をして貰う、それまでは役に徹するんだ。」
「…了解した。」
まるで自分が雇い主かのように振る舞うダマルに不満を抱きながらも、ジャムールは雇い主の指示通りに渋々「了承」を示した。
(これだから人殺しにしか能の無い傭兵は…。)
自分に反抗的で何かと言えば直ぐに暴力的な手段に出ようとするジャムールを、恐れながらも内心で嫌悪するダマル。
(─とか思ってるんだろうな。
そんなんで、よく「商人」を名乗れたもんだ。)
しかしそんなダマルの内心はジャムールに見通されており、逆に見下されている始末であった。
(オレの才が「人殺し」だろうが、「能無し」よりはよほど良い。)
片や小さいながらも店舗を持つ商家に産まれ、片や母が場末の娼婦である貧民街産まれ。
しかし今はどうだろう?
商家に産まれたダマルは実家の商店を潰して行商に身を窶し、ジャムールは傭兵として成功者の部類と言われる Cクラスまで上り詰めた。
如何なる才能であろうとも、道具と同じく使い方次第なのだ。
(そういえば…)
そこまで考えたジャムールの脳裏に、ふと殺気立つ村人達を説得していた男の姿が浮かぶ。
外見は農民にあるまじき贅肉を付けたデブであったが、その身のこなしから一端の戦士であることが伺えた。
しかもそれだけでは無く、ジャムールの実力をある程度見抜いたような反応も見受けられた。
(…おそらく Bランク冒険者、その中堅辺りだな。)
ダマルの言う「その時」が来た場合、あの男は一番の障害になる。
とはいえ、1対1で戦えばジャムールの方に分があり、ジャムールとしては「如何に他の有象無象に邪魔されずに戦うか」が重要と考える。
(惜しいな…。)
今からでも傭兵に転向すれば、あの男はジャムールの良き相棒となれただろう。
しかし昼の様子を見るに、あの男とジャムールが敵対することは確実であった。
「ククッ、ククク…」
殺すのが惜しいと思う反面、あの男と戦うことを想像するだけで気分が高揚している。
「クククククッ…」
ランタンの灯りのみが照らす薄暗い部屋の中、噛み殺した笑い声を上げ続けるジャムール。
ダマルはそれ気味悪く思いながらもジャムールに気取られぬよう、部屋の隅で毛布を被り縮こまって過ごしたのであった。
─ ラスト視点 ─
行商人の護衛による、村人達の虐殺を未然に防いだ翌日。
ガヤガヤ…ワイワイ…
俺たちが依頼で運び込んだ食糧の配給を行った村の広場には、古着やナイフや鉄鍋などの金属製品を始めとして、塩・保存食糧・布・糸・釘etc…おおよそ生活の中で使うであろう品々が露店市場のように広げられていた。
驚いたことに売り物には10袋もの穀物までもが売られてあり、これはボスが村の資金で即刻買い占めていた。
また、錬成肥料も積まれていたりするのだが…、賑わう広場においてその一角だけ誰1人てして近寄らない空白となっている。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
本日が最後の商いにつき、今を逃せば二度と買えない品ばかりだよ!」
そして朝から呼び込みの声を張り上げながら広場を歩き回るのは、昨日村人達に殺気を向けられていた行商人の男ダマル。
いくら護衛が一緒に付いて回っているとはいえ、随分と図太い性格をしているようだ。
…まぁ、村一つが餓死の危機に陥るような商売をしていたので、らしいと言えばらしいか。
(それにしても…)
周りをグルリと見渡せば、賑やかに買い物をしているのは女や子供…若い夫婦で、ボスを筆頭に何人かの男連中は厳しい目で広場を監視するように見ていた。
そんな中で周りと異なる行動をすれば、当然目立つ。
「おうラスト、何か不審なもんを見つけたのか?」
すぐに俺の近くへと寄って来て、気さくな態度で物騒な事を俺に訊ねるボス。
「いや、…いつもこんな物々しいのか?」
俺は誤解する暇を与えぬよう即座に否定し、ついでにそんなわけ無いと思いつつも、この場の厳戒態勢について訊ねてみた。
「まさか!また変なもんを売り付けられ無いように睨みを効かしているのさ。
…まぁ、今んとこは「売り物が全部いつもより安い」ってことしか、変なとこは無いけどな。」
監視するように…では無く監視そのものだったようだ。
そしてボスは「売り物が全部安い」と言うが、残念なことに街で買うより割高だ。
輸送の手間賃を含めばらしい値段ではあるのだろうが、これで「安い」とは今までどれ程ボッタクられていたのやら…。
…ただパッと見、こういう時にありがちな変な品物は置いていないようなので、全くの無意味では─
「何ですか、この変な形の壺…。
ふむふむ…えっ、この壺を買えば幸運が訪れるんですか!?
値段は…金貨3枚?
う~ん…、買えなくは無いですが…。」
─って、リタそれちょっと待てぇい!?
それは無いやろw…あるやろがいっ!?
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




