214 感動(!?)の再会
「捨て子」などと聞き捨てならないニーニャへの暴言を少女に問い質そうとした俺を遮った、まだ声変わりもしていない少年の声。
ニーニャを見ては気まずそうな顔をする他の村人達の反応からすると、心底嬉しそうな少年の態度は…俺の目には異様に映った。
タッタッタッ
そんなことは露知らず、猫人族らしい軽やかな足取りで駆けて来る少年。
そして─
ガバッ!
「ニーニャ!」
ギュウゥ…ッ!
ニーニャに、締め付けるような熱烈な抱擁。
って、ニーニャに何しやがるクソガキ!
「おいっ!ニーニャを放─」
「ああ…、もう二度と会えないかと思ってた。
でもまた会えたってことは、やっぱり僕とニーニャは番になる運命なんだ!」
また俺の言葉を遮り、調子の良いことを捲し立てる少年…否、クソガキ。
更に俺を苛つかせるのは、簡単に振りほどける筈なのにクソガキになされるがままのニーニャと、クソガキに抱擁されるニーニャを睨む少女。
(…何か、この状況に既視感が。)
と俺が思ったところで、面白そうな顔をしたマリ姉が答えを言う。
「あー…これ、あの男の子がニーニャのことを好きで、あの女の子はニーニャのことが好きな男の子のことが好きっていう…。」
(…えっとつまり?)
………。
村人の少女♡→クソガキ、クソガキ♡→ニーニャの三角関係というやつか!
ていうか、これアレだ!
巨乳美少女の婚約者を蔑ろにして、マリ姉にコナかけてたケビンとかいう(※ケインです)貴族令息と似たパターンだ!
…そりゃ既視感もあるわけだ。
「ム~~ッ…!」
…と、そんなことを考えている内に、ニーニャの限界が近そうだ。
ニーニャを締め上げているクソガキは、そんなニーニャの様子に勿論気付いていない。
「スゥ~…ぷはっ、あぁ…ニーニャの匂いだ。
本当にニーニャだ…、夢じゃな─」
それどころかニーニャの匂いを嗅いで、夢見心地な…端的に言ってキモチワルい顔になっている。
「離れろクソガキッ!」
グイッ!
「グェッ!?」
俺はクソガキの首根っこを無造作に掴み、ニーニャから強引に引き剥がす。
なんか変な声を出しているが、一瞬くらいなら平気だろ。
ポイッ
「うわぁ!」
ストン…
優しく下ろしてやるつもりはさらさら無かったので適当に放り投げたが、クソガキでも猫人族らしく足から綺麗に着地しやがった。
「おいお前っ、いきなり何すんだ!」
「ニーニャ、大丈夫だったか?」
「ん、平気。」
クソガキが何か喚いているが、今はニーニャの無事の確認が最優先だ。
「…ハッ!お前がニーニャの主人なんだな!?
このオーク野郎!」
(その罵倒、なんか久々に聞いたなぁ…。)
今更ガキにそんな陳腐な罵倒をされても「ああ、…だから?」とかしか思わないし、むしろ俺の婚約者達は揃って「そこも良い」と言う。
マリ姉やアデリナからははっきりとした理由を聞き出せなかったが、唯一理由を聞き出せたリタ曰く「抱きしめられると安心する」そうだ。
…あまり深く考えても微妙な気持ちになると俺の勘が囁いているので、このことについてこれ以上考えるのは止そう。
「おいっ無視するな!
…クソッ、こうなったら…っ!」
そう言えばこの状況、ケビン(※ケインです!)の時はこの後─
「おい!このオーク野郎っ、僕と闘え!
そして僕が勝ったらニーニャを解放しろ!」
─そうそう、こんな感じで決闘を…って
「はぁ?…なら俺とお前が闘う理由何か無いね。」
「こうなったら」も何も、どうしてこういう奴は決闘をしたがるのか…。
俺は肩を竦めて緩く首を横に振って「やれやれ…。」と、クソガキにも俺の呆れが分かり易いようにアピール。
身体能力が人間より優れている獣人だが、このクソガキの目は例外らしい。
でなければ、奴隷の首輪など何処にも着けていないニーニャを見て、俺に「解放しろ!」などという寝言は言わないだろう?
「くっ…、違う!…きっとこう…何か。
…何か卑怯な手を使ってるんだろ!?
そうだっ、そうに違い無い!」
こうまで言われると、いっそ清々しいくらいの濡れ衣だ。
だがまぁ…、もし俺がクソガキの立場だったら、俺も似たようなことを思うだろう。
(こういう時は…)
思い込みの激しいクソガキは無視して、用事を済ませたらさっさと帰るのが一番面倒が無いだろう。
これ以上ガキ相手に、成人した冒険者の俺がムキになっても仕方がない。
というか、非常に格好が付かない。
「あー、はいはい」
…というわけで軽く遇って─
「(ボソッ)…ご主人、わたしがやる。」
「…ゑ?ニーニャ…?」
─やろうとしたところ、可愛い三角耳をペタンと伏せ瞳孔を最大に開いたニーニャが、俺とクソガキの間に割って入ってきた。
何がそこまで琴線に触れたのかは分からないが、ニーニャの珍しい激怒状態だ。
(「やる」が「殺る」に聞こえたのは、俺の気のせいだよな!?)
…誰かそうだと言って欲しい。
「ヒェッ!?」
雷虎を幻視するほどのニーニャの怒気に当てられ、腰が引けるクソガキ。
…だがこれで大人しく退くなら、クソガキは「クソガキ」ではないのだ。
「ぼ…僕とニーニャに闘う理由は無いだろ!?」
(いや、それさっきの俺の言葉だろ。)
と、ニーニャが激怒したことで気持ちが凪いでしまった俺は、内心でクソガキに突っ込む。
だがこの時、俺は静観してしまっていたせいで、クソガキの突拍子も無い行動を許してしまった。
「そいつから逃げるんだ、来い!」
グイッ!
「あっ…!」
激しく怒っているニーニャの手を引くという、まさかの行動に出たクソガキ。
これには当のニーニャも驚いたのか、目を丸くして─
タタタタッ…!
(って、ニーニャが連れて行かれた!?)
追いかけようにも、こうも出遅れては追い付け無い。
「ニーニャ…。」
(どうして…。)
無意識の内に俺の口がニーニャの名前を呼ぶ。
しかしその呼び掛けは届くことは無く、ニーニャの小さな背中は少年に手を引かれるままに遠ざかって行ったのであった。
これはNTR!?それともBSS?
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