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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
1章  冒険者ラストの初心者生活

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20 実績解除:緊急救助

急げラスト、走れラスト!

必ずかの暴虐な豚を殺さねばならない!


セリヌン(゜Д゜)<「メ○~スッ!」

    ο-+-ο

「くそっ、何処まで行った!?」


 森へ逃げた白い人影と人影を追ったオーク、人影を追ったオークを俺が追うが、始めが少し距離があったせいか、中々追い付けずにいた。


(このままだと〈中層〉に入っちまうぞ…!)


 オークが通ったところは荒れているため方向を見失うことはない。

 しかし白い人影は街道からほぼ垂直に森へ入っているらしく、最短距離で森の〈深層〉に向かっている。

 〈中層〉になると危険度は〈浅層〉の比ではなく跳ね上がり、ラットやラビが少なくなり、縄張りに侵入されたことで攻撃的になったウルフや、オーク複数体、ゴブリンの上位個体が出て来るようになる。

 

(…引き返すか?)


 俺はまだ〈浅層〉でオーク1体を倒すのがやっとの腕前だ。

 このまま〈中層〉に踏み込んでも死体が一つ増えるだけだ。

 ならばせめて遺体を回収できるように、ギルドへ報告してベテラン冒険者に任せた方が良いのではないか?


「プギッヒィー!」


 白い人影の保護を諦めかけたところで、近くからオークの喜色が滲む鳴き声が聞こえる。


(間に合うかっ!?)


 鳴き声が示す喜びがどういった状況から来るものなのか?

 追い詰めたのか、既に仕留めたのか。

 悲鳴が聞こえなかったことを考えると後者かも知れない。

 しかし万が一気絶しているだけだとしたら、トドメを刺されてしまう前に助けなければ!

 そんな僅かな望みをかけ、俺は鳴き声の聞こえた方に走る。


(いた!)


 俺に背を向けて立ち、丸太の棍棒を振り上げるオーク。

 その足元には倒れた白い人影。

 このままでは惨劇を防げない!


「うおぉおっ!」


ブンッ!


 俺は咄嗟に背負った槍を、オークの無防備な背に目掛けて投擲する。


バシッ!


「プギャウッ!?」


 芯がブレた壊れかけの槍は、オークの背に穂先が当たることすらなかったが、柄が当たったことで注意を引くことは出来た。


「ブギィ~ッ!」


 良いところに水を差されたオークは、邪魔者に怒り、排除しようと向かって来る。

 

(やっぱデカイってのは(こえ)ぇな!)


 デブでノロマの代名詞にされるオークだが、実は脂肪はイメージされされるほど多くはなく、代わりについている筋肉が、人間の大人が逃げられない脚力を発揮する。

 そんなオークが怒りに燃えて、俺を殺そうと棍棒を振り上げ向かって来る。

 人間に残されたなけなしの本能が、オークからの逃走を強制しようとしてくる。


「クソッタレがあぁっ!」


 本能に逆らいしっかりと地に足を着け、オークに向けた槍を両手で保持に全力を尽くす。


ドスッ…


「プギャアァ~ッ!?」


 槍の突き刺さる鈍い感触とオークの悲鳴。


「ギャアァアッ!」


グンッ!


「うおっ…と!?」


 まだまだ元気に暴れるオークに、突き刺さった槍が持っていかれそうになるのを阻止。


「このヤロッ!」


ググ…グッ!


 肋骨か何かに引っ掛かってしまったのか抜けない槍を、オークに刺さったままに下へ向かって押し付ける。


「プッ!?プギ~ッ!」


 徐々に拡がっていく傷口に、暴れていたオークも驚き、続いて襲ってきたであろう激痛に動きを止め悲鳴を上げる。


「おおおぉ…!」


ズ…バァッ!


 流石は30万もした業物の槍だ。

 一応穂先の横も刃になっているとはいえ、オークの左胸の下から右の脇腹までを、斜め一直線に斬り裂くことに成功した。


ドウッ…!


「ブヒュッ…ブヒュッ…。」


 流石のオークにもこれは致命傷なのか、倒れたオークは悶えることなく、弱々しく息をするだけだ。

 確かにオークは人種に一番身近な脅威だ。

 しかし長い歴史の中で人種は脅威に対する手段を生み出してきた。


「人を舐めるなよ?」


ドッ!


 俺はそう呟くと、仰向けに倒れたオークの眉間に槍を突き刺しトドメを刺した。


「…ふぅ、うおっ!?」


 オークにトドメを刺せたことを確認し、一旦周囲の警戒をしようと顔を上げ、こちらを見る一対(二つ)灰青色(ユークレース)の瞳と目が合い、驚く。


獣人族(セリアンスロープ)の…、女の子!?)


 走ったことで乱れた短い白髪に、猫人族と思われる髪と同色の毛に覆われた三角の耳。

 土と草の汁で汚れた白のワンピースから延びる手足の肌は、透き通るように白く眩しい。

 背中の後ろには、おそらく腰から生えているだろう長い尻尾がゆらりと揺れている。


「…あ、君大丈夫?

 俺はラスト、冒険者だ。」


 慎ましやかな胸元に視線が向かったところで、俺はセリアンの女の子をまじまじと見過ぎていたことに気が付き、誤魔化すように安否の確認と自分は怪しい者ではないことを伝える。


「…ニーニャ。」


 それがセリアンの女の子が、俺と対面してから初めて発した言葉だった。

 魔物(オーク)に襲われた直後だというのに、感情のこもらない端的な言葉。


(可愛…い、いや違うだろ。)


 感情のこもらない言葉だというのに、まさに鈴を転がしたようなというのがぴったりの声に意識が割かれるが、セリアンの女の子が発した言葉の意味を考える。


(ニーニャ…名前っぽいな?)


 しかし彼女は見た感じ猫人族。

 猫人族は言葉に独特の訛りがあるらしい。


「ニーナが君の名前か。

 ニーナここは危険だ、立てるか?」


 猫人族は言葉の訛りをからかわれるのが嫌いらしいとも聞く。

 俺は訛りに気付かなかったフリをして、正しいと推測した名前を呼び、この場からの退避を促す。


「ん、違う…ニーニャ。」


 頷き、立ち上がる少女。


「あ、ニーニャ…で合ってるのか?」


 もう一度言われた名前に、失礼を承知で確認をとる。


「ん…、私はニーニャ。」


 何気に初めて二文節以上で話したニーニャ。

 

「あ、ちょっと待ってな。」


 俺に近寄ってきたニーニャに断りを入れ、俺は倒したオークの尻尾(討伐証明部位)を切り取る。


「…よし、行こう。」


「ん!」


 せっかく倒したオークの素材が勿体無いが、今はニーニャの保護を優先するべきだ。

 幸いこの場所は〈浅層〉と〈中層〉の境目であり、放置したオークの死体に魔物が寄って来ても大きな問題は無い。

 そういうわけで俺とニーニャは連れ立って、改めて街道へと向かうのだった。

 …さて、ここで一つ内心でツッコませて欲しい。


(てか、訛らないのかよっ!?)


 噂は所詮噂に過ぎなかった。



本編20話にして、ようやく第1ヒロインの登場です!

ケモ耳奴隷ヒロイン…お好きでしょ?



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