209 尻に敷かれる(物理)
※お知らせ※
〔 ep.197 190 リタ in 〈白の大樹〉 〕
にて、リタ冒険者verの画像を貼りました。
猫人族の村への食糧運搬の依頼受注から、荷馬車で揺られること一週間近く。
ザッ…、ザッ…
「ハァ…、ハァ…。」
2月間近でもまだまだ寒さの厳しい山道を、俺は10kgの穀物袋(まぁ…〈拡張袋〉なのだが)を背負い登っていた。
「…ラス君、少し代わる?」
今は目的地まで半ば程といった地点だが、1歩毎に荒く息を吐く俺を見兼ねたのか、マリ姉が荷負いの交代を申し出てきた。
フルフル…
「ハァ…いや、ハァ…マリ姉もハァ…荷物…フゥ。」
だが俺は首を横に振り、マリ姉のその申し出を拒否。
途切れ途切れになってしまったが、ちゃんと「マリ姉も荷物を持っているじゃないか?」と伝わっただろうか?
寒さ厳しい中1晩ならともかく、何日もいつもの野営装備では確実に風邪を引いてしまう。
…というわけで今回、俺たちはただでさえ重く嵩張る冬用の野営装備に加え、大量の毛布を用意して来たのである。
荷物は増えたが、おかげで夜は寄り添い合えば寒さで眠れないということも無かった。
また、ギルドが好意で用意してくれた乗り心地が一切考慮されていない荷馬車で、皆が尻を痛めるのを防げたのも俺的にはナイスだった。
ズク…
まぁ、俺は諸事情あって“皆”には含まれていないのだが…。
(…にしても、)
そして俺は尻に僅かに残る違和感を気にして、ふと思う。
(俺の膝はそんなに乗り心地が良かったのかね?)
─ 6日前 ─
事の起こりは、二度目の夜営を終えた3日目の朝。
その日は空を灰色の雲が覆い尽くし、風も少し強めに吹いていたこともあり、ここ最近では特に寒い日となっていた。
朝食の干し肉と屑野菜のスープで無理矢理身体を温めた俺たちは、寒さに追い立てられるように野営装備を片付けると、これから少しでも暖かくなることを願い出発したのだった。
ガタゴト…
しかしその願いも虚しく、それぞれが毛布に身を包んみ顔を伏せて寒さを耐え凌いでいた時。
クイックイッ
「ん…?ニーニャどうした?」
「こんな時こそ比較的寒さに強い俺が…!」と顔を上げて警戒していた俺は自分の毛布が引かれた感触に、もはや毛布の塊と化したニーニャに何の用かと訊ねる。
「…寒い。」
毛布団子状態のニーニャからは、そんな返答が籠った声で聴こえた。
モゾリ…
「おっ、ちょ…ニーニャ!?」
モゾ…、ぴょこっ
「ご主人…、暖めて?」
「うっ…!?」
俺の膝に跨がるように乗ってきたニーニャに驚き反射的に退かそうとした俺だったが、寒さで震えるニーニャの上目遣いには敵わなかった。
「…分かった、ほら…。」
俺は熱が逃げるのを承知で、被っていた毛布を広げてニーニャを迎え入れる。
ササッ…
ニーニャは遂に「ん。」という短い返事すら言うことなく、俺の懐に潜り込んで来た。
そして俺はこれ以上熱が逃げないよう、ニーニャが落ち着くのを待たずに広げていた毛布を閉じた。
モゾモゾ…モゾモゾ、モゾ…
そうして暫く毛布の中で蠢いていたニーニャだったが、俺の膝に座る姿勢で落ち着いたようだった。
…ポカポカ
(おぉ…!)
毛布を閉じてニーニャのクッションに徹していれば逃げた熱が再び籠るのだが、ニーニャから伝わる体温の暖かさに感動する。
それはまるで、ニーニャが日向ぼっこで蓄えた陽の熱を、凍える俺に分け与えているようであった。
「ん…、あったかい…。」
ニーニャの身体の震えもいつの間にか止まっており、俺に体重を預けてリラックスした様子で呟くニーニャ。
…明らかにニーニャの体温の方が暖かいと俺は思うのだが、どうやらニーニャはこれで満足らしい。
そしてニーニャを膝に乗せた俺は、そのまま警戒を再開─
「あ~!?」
─というわけにもいかないのは、贅沢な悩み…嬉しい悲鳴というやつだろうか。
実際悲鳴のような驚きの声を上げたのはリタであるが、何かが襲撃して来たということも無く至って平和な(荷)馬車旅だが、一体どうしたと言うのだろう?
「マリアさんっ、アデリナさんっ!
ラストさんとニーニャちゃんが、私たちそっち除けでイチャイチャしてますっ!」
「ブフォッ…!?」
リタのまさかの言い掛かりに驚き、俺は思わず吹き出す。
(人聞きの悪いことを…!)
…と思ったが俺の今の状況は、言うなれば
「寒さを耐え偲ぶ婚約者3人を放ったらかし、寒さを凌ぐことを名代として猫耳美少女と密着している男」である。
もし俺が未だに独り身でこの話を耳にしたならば、少なくとも「捥げてしまえ…!」と血の涙を流すことだろう。
人聞きが悪いも何も、単に事実を言っているだけだった。
むしろリタの言い方は優しい方で、マリ姉やアデリナも寛容だったために、俺の首はまだ繋がっていると言える。
ヒョコッ
「リタ。」
騒ぎを聞きつけ、態々顔を出したニーニャがリタを呼ぶ。
「何ですか?」
騒ぐ割にはそこまででなかったのか、呼ばれたリタはけろっとした様子でニーニャに応えた。
「ご主人の膝は1人用。」
片足につき1人乗せれなくも無いが…まぁ基本的に、乗せるなら1人か…特に今は。
当たり前(?)のことを告げられたリタは、だからこそ「ズルい」と騒いだのだろうが…
「だから…、早い者勝ち。」
心なしか、勝ち誇った様子のニーニャ。
そしてニーニャに煽られたリタは─
「もぉ~~~っ!
ラストさんっ、明日は私を乗せて下さいね!?
あ、明後日はマリアさんで、その次はアデリナさんですからっ!」
… … … … … … …。
… … … …。
…。
というわけでその翌日はリタを膝に乗せて移動したわけだが、そこまでは特に問題は無かった。
問題が起きたのは、その更に翌日。
今度はマリ姉を膝に乗せたわけだが、2日連続のクッション役で、俺の尻のクッション性が限界を迎えたのだ。
決してマリ姉の身体の肉付きがニーニャやリタ以上…ではあるが、決して重かったとは言わない。
だが昼食を兼ねた休憩の際に俺が尻を庇っていることを見抜いたマリ姉は、悲しい顔をしながらも「満足したから…。」と昼食後の俺の膝上は空くこととなった。
そしてアデリナには始めから俺の膝に乗ることを遠慮され、俺の尻の不甲斐なさを棚に上げて少しショックを受けた俺だった。
その後はニーニャとリタが休憩時に乗ってくる、という風に落ち着いたのであった。
ニーニャはお猫様、リタはワンコ。
…よし、リタにも獣耳と尻尾を付けるか(ゲス顔)
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




