207 そろそろ次の依頼でも…
前回のニーニャとアデリナは何処へ?
アデリナ →普段通りに起床。朝食後教会の手伝いへ
ニーニャ →リタが朝食中に起床。朝食後は厚着をし
て二階のベランダで日向ぼっこ
※作中は1月半ばくらいなんですよね~…。
盗賊団討伐依頼から二週間が経った。
まだまだ金に余裕はあるが、俺はまだまだ強くならなければならない。
これ以上せっかく鍛えた身体を鈍くらにするわけには行かず、魅惑の日々に暫しの別れを告げる。
…ということで、訪れた冒険者ギルド。
その受付にて確保された俺達は、もはや恒例となったギルマスの執務室にて─
「20日間もの超長期間の休暇とは。
…お前らも随分と立派になったもんだなぁ?」
額に青筋を浮かべたギルマスに、盛大な嫌味を浴びせられていた。
(理不尽だっ!?)
本来、冒険者の依頼を「受ける」「受けない」は冒険者次第。
そして自己責任な部分が多い分、どのようなペースで依頼を受けるかもそれぞれ異なる。
まぁ…この街に多い F・E ランク冒険者は金を稼いでもその日の宿代と飲み代に消えるので、結果として毎日何らかの依頼を受けていることになる。
その他冒険者に比べると…いや、比べるまでもなく20日間の休暇が長いのはその通りではあるが…。
「ったくよぉ…。
一体何処のギルマスが、D ランク冒険者に頭を下げるってんだ。」
(「今、俺の目の前に。」、…とか言っちゃ駄目なんだろうな。)
…しかし、ギルマスが頭を下げるとなると重要な依頼だったのだろうが、そこらの Dランク冒険者に任せられているあたり、その依頼の重要性がよく分からないことになっている。
…もしかすると、それがギルマスの嫌味の理由だったりするのだろうか?
チラッ、…チラッチラッ
(あんたがそれをやってもなぁ!?)
「ほら、聞いてこい」と言いたげなギルマスの少しウザく感じる視線を受け、内心でツッコミつつ表面上は平静を保って訊ねることにする。
「で、どんな依頼だったんだ?」
かなりぞんざいな口調になってしまったが、まぁ…将来的には身内なので勘弁して貰うとしよう。
「お前なぁ…って今は置いとくぞ。」
…願わくは、そのまま置き忘れて欲しい。
「お前らが領主名義で受けた依頼が関わることなんだが─」
はい、解散!
スッ…
ガッ!
「まぁ聞け、な?悪い話じゃねぇ。」
「領主」という言葉を聞き、反射的に厄介事だと察した俺。
その勘に従いその場から素早く離脱しようとするも、ギルマスが遥かに上手だった。
(くっ…、俺もまだまだかっ…!)
…ボスッ
しょうもないことで元 Aランク冒険者の実力を肌で感じた俺は、ギルマスの「悪い話じゃない」という言葉を信じて再びソファに落ち着く。
「んで………、なんだったか?
…ああ、そうだ。」
元は俺が悪いとはいえ、なんともベタなボケを噛ますギルマス。
…ボケだよな?呆けるにはまだ早いぞ?
「お前らから依頼達成の報告を受けた3日後、まぁ盗賊団の副官を捕えて来たことから明らかだったんだが、盗賊団の壊滅が確認された。」
俺の密かな心配をよそに、俺たちが依頼を受けたその後のことを話し始めるギルマス。
(街と村の往復だけでも4日は掛かる…って、ああ…魔馬でも使ったのか。)
例の盗賊団の素性が「隣領の元敗残兵」で、元々は「裏の一味」だったとなればそういう対応にもなるか…。
そして割り増しとなった報酬を既に受け取っている手前、「実は別動隊が残っていた!」…なんて事態にならなくて良かった。
「そしてすぐに、盗賊団に略奪された村を含め、辺境伯領寄りの村々への食料支援が始まったわけだが…」
(まさか予想した通りだったとは…。)
ギルマスの話を聞いてそう思う俺だったが、予想していたより遥かに早い動きに驚いてもいた。
いくら「事前に準備していた」とは言っても盗賊団がいつ討伐されるのかは不明なため、どうしても直前に用意しなければならない物がある筈。
(………、そういうことか!)
そもそもの前提からして間違っていて、“盗賊団が排除されてから準備をした”のではなく、“盗賊団が排除されるから準備をしていた”と考えるのならば次の動きの迅速さに納得がいく。
そりゃそうだ。
あの領主代理のお嬢様が、領内を荒らす盗賊団の討伐を冒険者に任せきりにするわけが無い。
今回は偶々、兵を動かす直前に俺たちの帰還が重なり、兵隊を動かすより俺たちに任せた方が色々と都合が良かったのだろう。
盗賊に成り下がったとはいえ他領の兵と戦うとなると、伯爵領と辺境伯領の争いになる可能性も無いとは言えないのだ。
「この食料支援だが…D ランク冒険者のパーティーに協力を要請して、用意された荷のほとんどは出発…又は既に到着済みだ。」
(ふむ…。)
この街周辺を行く荷車の護衛であれば、E ランクパーティーでも事足りる。
それらの依頼も領主名義なのだろうから報酬も割り増し、万年金欠の冒険者はこぞって依頼を受けるだろう。
(ああ…、領主の依頼だからか。)
護る荷は何の変哲も無い…なんなら粗悪に片足を突っ込んだ食糧だろうが領主…、つまりは貴族名義の依頼であり失敗するわけにはいかない。
…まぁそれは半分冗談だとして、ギルマスがD ランク冒険者に頭を下げまくったのは、魔物よりも人を警戒してのことだろう。
(灰髪男達のような元兵士の奴らが、もういないとは限らないからな。)
灰髪男達のように辺境伯領を跨いだ先で盗賊をするという気合いの入った盗賊団は稀だろうが、その分遭遇すれば E ランクパーティーでは誰にも知られること無く消息を絶つことだろう。
ならD ランクパーティーなら対抗できるか?と問われれば、答えは「同数相手でも分が悪い」となる。
…そこは後が無く形振り構わない盗賊と、荷を護りながら戦うことになる金で雇われただけの冒険者の違いだ。
だが 実力や信頼が Eランクより高い Dランクパーティーが消息不明となれば、それは盗賊でなくとも“明らかな異常”だと分かるのだ。
そんな Dランク冒険者を、悪く言えば捨て駒扱いしている中で残っている依頼か…。
(やっぱり厄介事じゃないか!?)
「「やっぱり厄介事じゃないか!?」…ってか?」
「なんっ…!?」
俺の内心に被せるかのように、俺が思った事を一言一句違えずに言い当てるギルマス。
俺の理解度が現状一番高いマリ姉ですらなかなかやれない事をあっさりやってのけたギルマスに、俺の胃はキュッとなる。
(これが、恋…?)
なわけ。
「…何をそんなに驚いてんのか知らんが、はっきりと顔に書いてあったぞ?」
久々にとち狂った思考となった俺に、「鍛え直しだな…」と恐ろしいことを呟きながら告げる師匠。
腰の引けた俺に、ギルマスは本件の方でも畳み掛ける。
「まぁ、その通りっちゃその通りなん─」
(オウチ二カエルッ!)
ドタタッ!
ギルマスの肯定に騙されたと覚った俺は、今度こそ止められること無くドアノブに手をかけ─
「─だが、目的地に行くのがちと難解ってだけだ。」
ピタッ
─る直前に動きを止めた。
…目的地に行くのが難解?
(…てことは、辿り着けさえすれば他の依頼と変わらない?)
と、疑問が浮かんだことで少し冷静となった俺に、ギルマスはすかさず囁く。
「その分報酬金は他よりいくらかは高いし、現地で支援物資を置いたら、運搬に使った〈拡張袋〉は好きにして良いとさ。」
(俺たちは金には困っていないのだが…。)
と俺が思ったところで、
「〈拡張袋〉!?サイズは!?」
オマケに付くという〈拡張袋〉に、マリ姉が激しく反応を示した。
「期待したとこ悪いが、中サイズだそうだ。」
「なら拡張は50倍ね、充分よ!」
ギルマスとマリ姉の会話から察するに、何気にずっと欲しいと思っていた〈収納袋〉のようなものだろうか?
…と暢気に考えていると、
「ラス君っ、この依頼は絶対に受けるべきよ!」
「お、おぅ…まずは話を聞こう、な?」
マリ姉の猛烈なプッシュにより、とりあえず依頼内容を聞くことが確定したのであった。
[祝]アニバ&50万字到達記念[!!]
1.5倍増量でお送りしました。
誤字報告ありがとうございます。
前回、誤字や誤字と誤解される表記が多かったようです。
アルファベットの半角スペースやルビの括弧等は本作の仕様です。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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