19 ラストの特性その1と2
おにゅ~のぶき、うれしいな♪
ラスト「誰だお前?」
作者 「( ;´・ω・`)」
予定外に惰眠を貪ったおかげというか何というか。
翌日の俺は一割増しくらいに軽い身体で、30万ゴールドの力を試すべく、〈初心者の森〉でゴブリン狩りをしていた。
そして今、チュートリアルの再現のように、群からはぐれたらしい3体のゴブリンと遭遇した。
「ほっ!」
俺はまだ攻撃的になっていないゴブリンの、先頭の1体の胸に目掛けて槍を突き出す。
トスッ
俺が突き出した槍の穂先は狙い通り、棒立ちしていたゴブリンの胸に、軽い抵抗の後沈み込んだ。
「ギャ?」
自分の胸に突き刺さった槍を見て尚、何が起きたか理解出来ていないゴブリン。
ズル…
しかし体は死を覚ったようで、俺が槍を抜くまでもなく、突かれたゴブリンは後ろに倒れ込む。
「ギャギャ~ッ!」
「ギイィ~ッ!」
血に濡れた槍の穂先を見て、後の2体はさすがに状況を理解したようで、顔を醜悪に歪めて警戒態勢を取った。
「はっ!」
ビュッ!
俺は警戒する2体のゴブリンに構わず、自由になった槍を横薙ぎに振るう。
ザッザシュッ!
今度は粗鉄の槍で突いた程度の抵抗を感じたが、だからといってどうということもなく、2体のゴブリンの腹を同時に切り裂いた。
「「ギャアァ~ッ!?」」
痛みにのたうち回る2体のゴブリン。
「済まんが、俺はオークじゃないんだ。」
トスッ、トスッ
ゴブリンのものであっても悲鳴を聞いて喜ぶ趣味はないのでトドメを刺した。
「ふぅ。」
(この体型…、ゴブリンに有効過ぎるだろ。)
ゴブリンが厄介とされる理由の「人種とみるや否や跳び掛かって来る」という習性。
これが本来なら、槍のような長柄武器やハンマーなどの重量武器持ちに相性が悪いと言われる。(ゴブリン自体が弱い魔物の一種のため、被害が出るか否かは別とする)
ギルマスもチュートリアルでその辺を体験させ、ゴブリンを侮らないようにさせる予定だったそうだ。(別の要因で一応目的は達成されている)
それはともかくとして、槍初心者の俺がゴブリンを楽に倒せているのは、俺のコンプレックスである体型にある。(というギルマスの推測だ。)
人種には例外なく敵対するゴブリンであるが、人型魔物のオークやオーガとは共生(使役されるとも言う)することもある。
つまり俺は、ゴブリンに仲間と勘違いされることで必ず先手を打つことができ、その後も混乱するゴブリン相手に優位に立ち回れるというわけだ。
俺のこの特性は初心者冒険者垂涎の的だが、同族に嫌悪されるという代償は、果たして妥当なものなのか。(いや無い。)
「…帰るか。」
ゴブリン3体の討伐で3,000ゴールド。
ベビーリーフタウンで暮らすだけなら十分と言える成果を出した。
自分のコンプレックスについて考え気分が沈んだ俺は、早々に狩りを切り上げることにしたのだった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
ゴト…ゴト…
(お、馬車か…珍しいな。)
〈初心者の森〉を出て街に続く街道を歩いていると、前を幌馬車が行くのが見えた。
(荷馬車か?無用心な…。)
森を出たと言っても、この街道は〈初心者の森〉の切れ間を拡げた道となっている。
主な利用者は〈初心者の森〉に入る者か、森を突っ切ってでも急ぎたい歩きの旅人か早馬などだ。
乗り合い馬車や荷馬車は基本的に、森を大きく迂回した別の街道を利用している。
荷馬車のこの街道の利用は0ではないが、その場合は護衛がついていることが前提だ。
だから護衛も付けずに(馬車に乗っている可能性もあるが)、森近くを音を立ててゆっくりと行く荷馬車は、魔物の格好の的になる。
「ヒヒーンッ!」
「ブヒイーッ!」
魔馬の嘶きと興奮したボア系魔物の鳴き声。
(あ~あ…、運の悪い。)
荷馬車の持ち主はよほど悪いことをしているのか、よりによって〈浅層〉でも珍しいオークに襲われた。
「~~~ッ!」
何を言っているかまでは分からないが、御者が慌てていることが伝わって来る。
この期に及んでも馬車から護衛が出て来ないということは、護衛などいないのだろう。
(はぁ…、仕方ないか。)
護衛も付けずに森を突っ切ろうとした御者の自己責任だが、目の前で襲われているのを見過ごせば寝覚めが悪い。
(それに報酬が貰えるかも知れないしな。)
こういった場合は緊急救助として、護衛の報酬の相場に何割か増しで報酬を支払うのが“習わし”だ。(旨味がなければ救助する者などいなくなる為)
下心を正義感で包み隠し、俺は荷馬車の救助のため走り出す。
ドサッ…
(なんだ?落荷?)
俺が走り出した直後、蛇行しながらオークから逃走する馬車から、白い布袋のようなものが落ちた。
粗方御者の着替えか、穀物等の袋だろう。
むくり…
しかしその落荷が起き上がったことで、俺の予想は覆された。
「人っ!しかも子供!?」
御者の身内か森へ入っていた街人か。
素性はとにかく、立ち上がった人影は明らかに背が低い。(小人族の可能性もあるが)
ダッ…!
「あっ、おい!」
何故か馬車に戻らず森へと走って行く白い人影に、俺は聞こえないと知りつつも声を出さずにはいられなかった。
「プギイィッ!」
白い人影を追うオークに、森へ逃げた白い人影に構わずに街道を逃走する馬車。
「…、くそっ!」
一瞬の逡巡。
俺はオークから逃げ仰せた馬車に見切りを付け、森へと走った白い人影とオークを追うことにした。
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