194 盗賊団退治
本編200話記念は本編連投か特別編か…。
今のところ連投が良さげ?
スマト村に拠点を構えて3日目。
この間俺たち〈白の大樹〉は村の連中と交流することなく、淡々と依頼の盗賊団の寝蔵を捜索していた。
…と言ってもこの辺のことは俺がある程度知っているため、水や狩場といった観点から盗賊団の寝蔵になりそうな場所を見て廻っているだけなのだが。
正直なところ、1日目は体調の調整を兼ねて近場を軽く廻り、2日目は万が一各々で散って逃げる事態となった場合のため、地形の下見となるように廻った。
そして3日目となる今日は、完全装備を整えて本命の場所に一直線だ。
崖に出来た深い横穴。
それが盗賊の寝蔵となっている…と、俺が予想した場所だ。
カサッ…カサ…
「マリ姉、『探索』を使ってくれ。」
「了解、──『探索』。」
「………、どうだ?」
その横穴のある崖が見えるか見えないかの場所で俺は、俺が勝手に因縁を感じている魔法をマリ姉に使うように言う。
もし盗賊団の奴らが狩りや採集といった真面目な活動をしていれば、この辺でマリ姉の『探索』に何かしらの兆候が現れる筈。
「人の反応は無し。
…だけど、〈角兎〉や〈ゴブリン〉の反応も無いわ。」
「…こりゃ“当たり”、だな?」
狩りの主な獲物である〈角兎〉や、森に限らず何処にでも居ると言われる〈ゴブリン〉の反応が無いというのは明らかにおかしい。
そしてその理由として今一番しっくりくるのが、盗賊団により狩られたというものだ。
〈角兎〉は当然食料として、〈ゴブリン〉は寝蔵周辺の安全確保のために狩られ、生き残りは逃げた後。
だからマリ姉の『探索』に反応が無いのだ、…という理屈だ。
「皆、警戒を厳に。」
コクッ
ここからは、何時会敵しても不思議は無い。
俺の指示に皆は、話し声で気付かれぬよう頷く仕草で了承を示す。
パパッ、クイクイ
俺はハンドサインで、屈んで着いて来るように指示。
……カサ……サ……
そのまま俺たちは藪に紛れながら、時折微かな葉擦れの音を出しつつ、目的地へと迫ったのだった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
そして幸いなことに、俺たちは途中で盗賊に会うことなく崖の横穴を観察出来る位置にたどり着いていた。
「入り口に見張りが2人、出入りは今のところ無し…ね。」
観察を始めてから、もう鐘一つは経とうかといった頃合い。
この様子だと盗賊の連中は仕事に出ているか、中でお楽しみ中のどちらかだ。
留守なら見張りの二人を倒して寝蔵に罠を仕掛ければ楽なのだが、在宅の場合は危険度が段違いに上がる。
とはいえ今回の場合、見張りを排除した後にマリ姉の『火球』連射で窯焼きにしてしまっても依頼の達成に何の問題も無い。
しかし皆…特にアデリナの手前、拐われた女達が居ると分かっていてその手段を取るのは躊躇われる。
それにマリ姉への負担が大き過ぎるので、この作戦が一番合理的だとしても俺が採用することは決して無い…というか本人がやると言っても絶対却下だ。
まぁ、それも盗賊の連中があの中に居る前提での話だ。
「…ニーニャ、どうだ?」
兵士崩れとはいえ盗賊。
見張りは暇をもて余しているらしく、お喋りにこうじているように見える。
何か情報を拾えないかと、獣人であるニーニャの耳に期待して待機していたのだが…。
フルフル…
「何かは言ってる…けど、分かんない。」
力無く首を横に振り、耳と尻尾を萎れさせるニーニャ。
「そうか…、ありがとな。」
ポスッ…
「んっ…。」
申し訳なさそうにするニーニャだが、何事にも限界はある。
俺はニーニャに無茶を言ってしまった謝罪と、慰めの意味をこめて頭を撫でた。
「どうする?」
と、俺に訊ねてくるマリ姉。
マリ姉の質問の意図としては「今仕掛けてしまう」のか、「戦力を確認するまで出直しする」のか?ということなのだろうが…。
チラ…
「「…。(コクリ)」」
すぐにでも拐われた女達を救出したいアデリナと…恐らく初の対人戦となるリタは、真剣な表情で頷いて「今から仕掛けても大丈夫だ」と俺に示す。
(…まぁ、そうだろうな。)
リタが対人戦にやる気なのが少し意外だったが、冒険者としてやっていく以上いつかは通る道だと思い直す。
マリ姉とニーニャに関しては、俺がやると判断したら淡々と行動に移せるよう、既に準備を完了している。
〈白の大樹〉の雰囲気は最早、「今から仕掛ける」以外の雰囲気では無い。
事前に得た情報では盗賊の人数は最低でも8人はいたとのことだが、兵士崩れという点を踏まえて、敵は軍の基本的な1部隊の人数である12人だと考える。
(まず…あの見張り2人は、マリ姉とニーニャがここから排除するだろ?
バレずに中に入ったとして、奇襲で…2~3人は倒したいな。)
アデリナを非戦闘員として…上手く行けば、敵の人数は最大でも此方の戦闘要員の人数の倍となる8人か…。
Dランク冒険者20人と戦って16人もの人数を殺したと考えると、…正直言って厳しい戦力差だ。
(取り敢えず、あの見張り2人を始末するか。)
盗賊団の連中に警戒されてしまう可能性もあるが、見張りの交代で更に2人を気付かれずに始末出来る可能性も十分に高い。
仮にバレても、狭い洞窟内で倍の人数と戦うよりは戦い易いだろう。
「コソッ(マリ姉、ニーニャ、3つ数えるから1人1発で倒せるか?)」
「コソッ(任せて、私は右を狙うわ。)」
「コソッ(ん、じゃあ左。)」
俺の問いに逡巡することも無く頷き、それぞれ狙いを定める二人。
実に、頼もしい。
「コソッ(良し…カウント、3…、2…)」
二人の視界に映るよう、3本立てた指をカウントに合わせて折っていく。
そして…
「コソッ(1…、今っ!)」
「コソッ(─『魔力矢』ッ…!)」
シュッ…!
「ん…!」
パシュッ!
俺の合図に合わせて放たれる、魔力の矢と弾。
ニーニャが僅かに遅れ…否、態とタイミングをずらしたことで、魔力の矢と弾は同時にそれぞれの標的の眉間を撃ち抜いた。
スナイパー・マリア&ニーニャ
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