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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
1章  冒険者ラストの初心者生活

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20/218

18 休日終了

ネタバレ注意

『新人冒険者、30万の槍を買う』

 結局俺はガンキンの売り文句(セールストーク)にまんまと乗せられ、30万ゴールドの高級槍(量産品)を手にすることとなった。


「28…29の大銀貨が30枚、30万ゴールドきっちり受け取ったぜ。」


 昨日オークの売却で受け取った銭袋から、大銀貨を一枚一枚数えながら取り出したガンキンに、俺は訊ねた。


「どれが一番良いやつなんだ?」


 選択肢は4つ。

 どれも今の槍と比べれば業物には違い無いのだが、一本一本が手打ちである以上は品質にバラつきが出る筈だ。

 高い買い物をするのであれば、少しでも良い物が欲しくなるのは自然だろう。

 しかし素人目では違いが分からないので、専門家の目を頼るのだ。

 逆に一番質の低い物を掴まされる懸念もなくは無いが、その時は俺に人を見る目がなかっただけだと割り切るしかないだろう。


「残念だがそういうのはサービス外だ。」


「何でだよっ!?」


 サービス付きと言っておきながら、いきなりのサービス外告知に、俺は思わずガンキンにツッコミを入れた。


「分からないモンをプロに聞くってのは良い姿勢なんだがな、武器に関しちゃそうもいかんのさ。」


 ガンキン曰く、職人が現品の中で最上の武器を見繕ったとして、その武器を使用した冒険者が負傷した場合、冒険者の腕の問題だったとしても武器を選んだ職人とトラブルが発生するらしい。

 実際過去にその手のトラブルで職人が殺害される事件があってから、職人ギルドでは一品のみの推薦を固く禁じているという。


「お前さんならそんなことはないだろうがな、他人に選ばれた武器と自分で選んだ武器じゃぁ、武器の扱いに明らかに差が出るんだ。」


 いわゆる愛着というものだろう。

 多少品質が良いものを与えられたところで、使う当人が質の良さに頼り切ってしまうだろう。

 その反対に、自分で選んだ武器なら自分の選択を良いものとするために、使用者は努力を重ねることだろう。

 武器は使用者がいて初めてその能力を発揮する。

 使用者の姿勢と質の上ブレでは、使用者の姿勢の方が重要というわけだ。

 そう言われてしまえば、自分で選ぶとしても適当に選ぶわけにはいかなくなった。


「う~ん…。

 ちょっと持ってみても?」


 見て分からないものを悩んだところで決められる筈もなく、俺は感触に頼ろうとガンキンに訊ねる。


「数打ち品で試しをする奴は初めてだよ。

 ここ(屋内)では持つだけにしろよ?」


 呆れたように言われたが、ガンキンの許可が出たので、右端の槍から順に持ち上げ構えを取る。


「ド素人が一ヶ月で随分と様になってやがる。」


 ガンキンが俺の構えを見て言った言葉に、俺はこそばゆく感じた。


「…決めた、これにする。」


 一通り構えてみて、最初に持った槍がしっくり来たのでガンキンに見せる。


「なんだ、目利き出来てんじゃねぇかよ。」


 どうやら俺の選んだ槍が、4本の中で最上品質の槍だったらしい。

 凄い偶然だ。


「んじゃ…、これとこれ…後これもやるよ。」


 そう言ってガンキンが渡してきたのは握り革とやたら長い革紐、それと


籠手(ガントレット)まで、良いのか!?」


 籠手というよりは肘までを覆う革手袋(グローブ)と言った方が正しく思えるが、左手側が板金で補強された立派な防具であった。


「まあ“お試し”ってやつだな。

 次は具足(グリーグ)を買いに来るのを待ってるぜ。」


 つまり籠手で防具の良さを実感させ、次の商売に繋げるというガンキンの強かさだ。

 しかし損をするわけでもなく、今にいたっては完全に得しかない。

 それに握り革や革紐は消耗品ではあるが、これらは善意によるものだと分かる。(特に革紐は胸当ての装着紐との交換用だろう。)


「ああ、機会があればな。

 …そうだ、ちょうど欲しい物があるんだが─」


 新しい槍とサービス品を持って倉庫(?)から出ようとしたところで、俺は昨日の狩りで感じた不便を解消する道具の存在を思い出した。


「穴を掘れるやつは無いか?

 出来れば副武器(サブアーム)になるやつで…。」


 解体時に出る不要部分を埋めるための穴。

 槍が限界を迎えたのは、穴掘りに使ったことも理由の一つかも知れないと、今思い至る。


「サブアームぅ?

 …そうか、お前さんは収納袋が欲しいんだったな。」


 スコップを持って行けば良いのだろうが、狩りに荷物は極力減らしたい。


「お前さんのサブアームは…ああ、鉈か。

 …ならトマホークがベースになるな。」


 今日何となく腰に吊るして来た鉈を見せると、考え始めるガンキン。


「斧刃は幅広にして、柄は真っ直ぐか?

 穴を掘るなら土に刺さり易くしねぇとな。」


 俺をそっちのけにするガンキンに、言い出した手前放置して帰ることも出来ない。


「なんなら万能道具にするのも面白いな。

 …おい、他に欲しい機能はあるか?」


 何やら話が膨らんできたようだが、とりあえず気付かない振りをして、欲しい機能を考える。


(狩り、解体、トマホーク…、そうだ!)


「枝打ち…ノコ刃なんか良いんじゃないか?」


 俺の狩場は〈初心者の森〉だ。

 森と言えば木があり、密集した枝は通行等の邪魔になることが多々ある。

 手折るのも生木は中々折れないし、太い枝はそもそも手じゃ折れない。

 それらを解決するには、やはりノコギリだろう。


「なるほど。

 なら片方はそのまま刃にして、反対はノコ刃、先端は刺さるように尖らせて、柄はスコップみたいに真っ直ぐ…これだ!」


 ガンキンの中で構想が纏まったらしい。


「んじゃ今から図面を引くからよ、用事は済んだな?

 また3日後に店に来な、あばよ!」


 そう言うとガンキンは自分の世界に没頭したようで、槍の片付けをしないまま、懐から取り出した植物紙を広げ書き込みを始めたのだった。

 こうなるとドワーフは声をかけても無駄だという噂だ。


「3日後だな?」


「……。」


 一応次に訪れる日の確認を取ろうとしたが、噂の確認が取れただけに終わった。


「邪魔したな、俺は帰るよ。

 …槍、ありがとうな。」


 なんだかドッと疲れた俺は、この後も街をぶらつく気にならず、〈寝るだけの宿〉に一直線に帰宿し惰眠を貪ったのであった。

服屋とか行くと店員さんと会話するの疲れない?

床屋とかでも作者はそっとしておいて欲しい人種です。(陰キャゆうな!)




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― 新着の感想 ―
鍛冶職人ドワーフの技術や職人魂だけじゃなく コッソリ見せる優しさが良い感じなんよ 今は無き昔気質の町工場職人のジッチャン達みたいで好き(*^ω^*)
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