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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
5章  忍び寄る戦争の影

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191 厄介事

Tips :〈古代の童話の羊皮紙片・承2〉

 古代の遺跡やダンジョンの宝箱から稀に発見される劣化した羊皮紙の一部。

 この羊皮紙片はどうやら、〈古代の童話の羊皮紙片・起〉の続きの2枚目らしい。

 以下が判読された部分から復元された内容。


『しかし姫を溺愛する王様は、何とか他の褒美に出来ないかと、あの手この手を使い貧民の青年を説得しようとします。

 ですが貧民の青年は姫に一目惚れしたと、他のどんな褒美にも頷きませんでした。

 結局、王様は御触れを破るわけにはいかず、姫と貧民の青年の結婚が決まりました。』

 後日。

 リタをパーティーに加えた俺たちは、日を改めてギルマスの執務室へと訪れた。


コンコン、ガチャ

「…おう来たか、とりあえず座れ。」


「それで…、本題は?」


 実を言うとマリ姉の用事は日を改めるまでも無く、その日オットーさんが帰宅した晩に済んでいる。

 そのマリ姉の用事だがリタの装備に関してであり、リタの装備はオットーさんが現役時代に得た素材と伝手で誂えた物ということらしい。


 …で、そのリタの装備が以下の通り。


主武器  ダマスカスレイピア

副武器  ダマスカスナイフ

  頭  結界石のネックレス 

  胴  〈皇殻鎧(インペリアルアーマー)(アント)〉の軽鎧

 右腕  〈皇殻鎧蟻〉の手甲

 左腕    上に同じく

  足  〈砂塵王蜥蜴(キングサンドリザード)〉の防刃ズボン

その他  身代わりの護符


 …とまぁ、見事に全身、希少素材による武具のオンパレードであった。

 更にそれらの武具は希少なだけでなく、希少さや値段に見合った高い性能を誇っていた。


 オットーさん曰く、あのバトラー(〈悪魔〉)と同等の Cランク魔物である〈凶爪巨熊(タイラントベア)〉の攻撃を受けても傷一つつかない…とのこと。

 間近とはいえ Dランクにもなっていない冒険者が装備するには、明らかに格が上過ぎる装備だ。


(過保護って言うのも生温いぞ!?)


 とは思うものの、俺と行動を共にするのであれば、これだけの装備でも不安があるのが現実。

 何故なら、人形スライム達が言うに、俺は〈魔王〉の標的となる可能性がほぼ確実と言える程に高いのだから。


 それに未熟な俺ではマリ姉・ニーニャ・アデリナの3人に加えリタを守るどころか、この内の1人でも守り切れるか定かではない。

 不甲斐ないことは重々承知の上で、リタが装備で身を固めているだけでも助かる。


(…だからといって、リタを放っておくとかはしないがな!)


 装備的に俺が守る必要が無くとも、未熟なりに全員を守るのが俺を好いてくれる皆への誠意だ。

 …それにもし俺が装備に任せてリタを守ることを蔑ろにした場合、オットーさんはリタに嫌われてでも俺から引き離すことだろう。


 オットーさんが用意した装備以上の物を俺が用意するか、装備が無くとも俺が全員を守り切れる程の腕になった時、俺は真の意味でオットーさんに認めて貰えるのだろう。


(…良いぜ、やってやる…!)


 どうせ、俺が目指す Aランクは生半可な腕では到達出来ないのだ。

 なら俺は、“守る”ことに長けた Aランク(人外)となろう。


 今まで漠然としていた、強くなるという目標。

 一応「 Aランク」冒険者という“骨組み”はあったものの、更にはっきりと「防衛特化」という“身”がついたのはこの時だろう。


 それはさておき。


 オットーさんが態々俺たちを呼び出したということは、ギルマスとしての用事だ。

 そしてその用事は、大概が厄介な依頼だと相場が決まっている。


「あー…、お前達…〈白の大樹〉には盗賊団を討伐して貰いたい。」


(…おや?)


 一体どんな依頼が飛び出すかと身構えていたら、盗賊の討伐というありふれた内容に肩透かしを食らった気分になる。


 まぁ…人が魔物より弱いと言っても知恵を使う分、身体能力で勝ってくる魔物とは別の厄介さがある。

 実際、人を殺すのを躊躇って野盗に全滅させられるパーティーは多いし、盗賊団と言うだけあって人数も多いのだろう。


 しかし、やはりギルマスが直接依頼してくる程ではないように思える。

 C ランクとは言っても一つのパーティーに依頼するより、ギルド主導でレイドを組んだ方が着実だとも思う。


 だが俺がその疑問をぶつけると、ギルマスは渋い顔をして話す。


「俺としてもそう思う、それがなぁ…。

 お前達に話を持って来て言うのもなんなんだが、討伐対象の盗賊団。

 こいつらが今根城にしているのが、〈スマト村〉周辺なんだよ。」


「断る。」


 〈スマト村〉…俺のかつての故郷の名前を聞いて、俺は反射的に依頼拒否の返事をしていた。


「…だよなぁ、お前が被害者だもんなぁ…。」


「それもあるが、ギルドはあそこの依頼は受けない筈じゃなかったのか!?」


 頭を抱えるギルマスに、俺は怒鳴るように問いかける。

 教会の腐敗や冒険者ギルドの不祥事を〈ラビリンス〉で見てきた俺たちだが、まさか義父となるオットーさんがギルドの決定を覆すような真似をするとは思ってもいなかったのだ。


ガタッ


「待て、早とちりするな…話を最後まで聞け!」

 

 無言でギルドを後にしようとする俺を、無理矢理引き留めるギルマス。


「今の根城って言っただろ?

 件の盗賊団は隣…つまり辺境伯領からの流れだ。」


ピクッ


 辺境伯領と聞いて、俺はこの依頼の厄介さに思いあたる。


「そして、奴らの素性は〈カクタス〉の敗残兵と思われる。」


 もしそれが本当だとしたら、D ランクパーティーでレイドを組んでも、規模によっては返り討ちに逢う…とここまで考えて俺はハッとした。


「もしかして、もう…?」


「ああ… Dランクの4パーティー20人、生きて帰ったのが6人だそうだ。」


 軍は3割やられると戦えなくなるというが、生き残りが3割とは…。


(壊滅じゃないか…。)


 盗賊団が残り何人かは知らないが、俺たちに話が回って来た理由には納得した。

 だが相手が脱走兵…しかも他領の兵だとすると、冒険者ではなく領軍の管轄では?


「ああ…、だが領軍は連邦の侵攻に備えていて出れないそうだ。」


 何でギルマスが領軍の内情を知っているのか?


「って、まさか…!」


「そうだ、領主様からの依頼だ。」


 


ナンテコッタイ>\(^o^)/



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