16 休日の過ごし方~初心者冒険者編~
ようやくプロローグの説明が出来た…!
オークのソロ討伐に成功した翌日、俺は今日を休養日として過ごすことにした。
(収納袋、便利だったな。)
一日で40万ゴールドを稼げたのは、オーク一体が丸々入る収納袋の存在が大きかった。
ウリボアにウルフと担いでギルドに持ち込んだ俺に、ギルマスがギルマス就任の際にギルドに寄贈した収納袋の、レンタル制度を教えてくれたのだ。
容量が一番小さいもの(ギルマス談)とはいえ、収納袋は高価な魔道具だ。
それをレンタルなど正気かと思った。
まあ、当然ながら盗難防止の為の対策(魔法付与)は施されていて、窃盗の意思を持って収納袋を所持すると、門などにあるカルマストーンが赤く光る犯罪者(通称赤と呼ばれるらしい)となるらしい。
街に入らなければ問題は無いが、それだと収納袋の利点が激減(それでも利点は大きいが)してしまうので効果は抜群らしい。
しかしそもそもが、寄贈主のギルマスが信頼できると判断し、オークなどの大物を狩れる者という限られた者しか知らない制度らしい。
俺がそれを紹介されたということは、その二つの条件に合致したということで、この一ヶ月の頑張りが報われたように感じたものだ。
話を戻して…この収納袋のレンタルだが、数回の利用では収納袋の値段からするとほんの僅かだが、今後継続して利用するとなると買った方が安く上がるのははっきりしている。
それに使い続けていれば、いつ妖精に唆されてしまうかと不安になる。
金銭と精神の二面の理由から、手持ちがある程度貯まってきた今、マイ収納袋を検討してみるのもアリだろう。
(てか、収納袋って何処で売ってるんだ?)
収納袋は魔道具なので魔道具屋と言われるだろうが、魔道具は魔石を使用した道具の総称で、例えば温風と冷風の出る箱は家具屋、『自動防壁』が組み込まれた鎧は武具屋というように、様々な店に高額商品として置かれているのだ。
大貴族の治める領の領都や王都などの大都市には魔道具専門店があるらしいが、今は関係ない。
収納“袋”なので雑貨屋か?はたまた布製なので服屋か?なら革製はやっぱり武具屋?
(う~ん…、あっ!)
あれこれと収納袋が売っていそうな店を考えて悩んでいたが、突然ある店が思い浮かんだ。
(〈相棒に屋〉だ!)
職人ギルドの直営店、あそこならばあらゆる種類の職人の作品が置かれている。
つまり、雑貨も布製品も革製品も纏めて一店舗で見ることが出来るのだ!
…しかしまぁ、ギルド直営店に置かれているのは見習いの作品ばかりである。(一人前の職人の作品はギルドが仲介し売買される)
高級品である収納袋の現品がある可能性は低いが、収納袋職人(?)のツテはありそうだ。
というわけで〈コンビに〉へ、れっつごー(←古の勇者語録)だ。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
「んなモンこんな小せぇ街に売ってるかってんだ。」
今日も偶々店番だったガンキンが、常識知らずにものを教えるように言う。
曰く、収納袋は〈空間拡張〉という珍しい魔法を入れ物に付与して作られるらしく、〈空間拡張〉の魔法スキル持ちは国が確保し、収納袋の流通に制限をかけているそうだ。
(そりゃそうか…あんなに便利だもんな。
だからって流通に制限かけること無くないか?)
希少品はそれだけで高値がつく。
収納袋は魔道具の中でも飛び抜けた高値らしいが、流通を制限することで貴族や金持ちしか手に出来ない値段にしているのではないか?
「収納袋なんかより装備を揃えな。
その槍もガタがきてるみてぇだしよ。」
収納袋に関して陰謀めいたものを感じていた俺に、ガンキンは装備の更新を勧めてきた。
言われて見れば、ギルマスにこの店を紹介された際に「とりあえず」で買った槍と胸当て以降装備は買っていなかった。
ガンキンの指摘ではないが、安物の槍は一ヶ月の酷使で切れ味は落ち、柄と穂先を固定する金具も歪んでいる。
胸当ても、オーク革部分は細かい傷のみだが、装着紐は解れがそこかしこにあり、今にも千切れてしまいそうな有り様だった。
(これはっ…!)
思っていたものの数倍も酷い装備の状態に、俺は昨日の狩りでオークとまともに戦っていた場合、命を落としていたことを覚り、今更ながら恐怖に震えた。
「武具はお前さんの命を守るための消耗品だ。
利便性を求めるなとは言わんが、優先順位を間違えるんじゃねぇ。」
「それにお前さんが貯めた金は収納袋を買うにはまだまだ足りんしな。」という、武具か収納袋かの二択に悩む以前の事実を加えられ、俺は装備を更新することとなった。
… … …。
… …。
…。
装備を更新すると決まれば早速槍から…
「そっちじゃねぇ、ついて来な。」
「は?」
と思いきやガンキンから「待て」が入り、店の裏口から出て行くガンキンに、理由が分からない俺は、とりあえず言われた通りについて行く。
「見習いの槍はあくまでも間に合わせだ。
長く使うならそれなりのモンを誂えな。」
ついていく俺に振り返ることなく言うと、ガンキンは〈相棒に屋〉の裏に建つ民家(?)へと入っていく。
(えっ…、不法侵入では?)
ガンキンが入っていったが誰かが騒ぎ出すようなことはない。
幸い(?)なことに家人は留守にしているらしい。
「何してやがる、さっさと入って来い!」
ガンキンが小声で怒鳴るという器用な真似を披露するが、それが俺の不信感を煽る。
(ええい…、儘よっ!)
赤化を覚悟し、俺はガンキンの待つ民家(?)に入るのであった。
※空き巣を見かけたら通報しましょう。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




