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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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174 〈悪魔〉ヒューバート

Tips :〈ダマスカス鋼〉

 〈ダマスカス鉱石〉から精錬される希少金属の一種。

 世界三大金属である〈オリハルコン〉・〈ヒヒイロカネ〉・〈アダマンタイト〉より格が落ちるものの、現実的に入手可能な素材の中では最上級の金属となる。

 性質としては〈アダマンタイト〉の完全下位互換にあたり、ただひたすらに硬く頑丈で魔力の通りが非常に悪い。

 しかし〈アダマンタイト〉より優れた点として比重が軽く、〈ダマスカス鋼〉で作られたレイピアは大剣を受けても折れず曲がらない。

 

(因みに〈アダマンタイト〉は比重トップ) 

アダ>>金>魔銀>鋼>ダマ>オリ>ヒヒ

※既出のみ(金は比較イメージ用)

 

 

 『魔化』したヒューバートによる無差別的な影からの攻撃は、一瞬にしてその場に集まっていた冒険者の約半数を即死させた。

 そして残る半数の内、パッと見で3分の1ほどが重傷を負い、残りは攻撃が外れたか、当たっても掠り傷程度といったところか。


 不意打ちかつ広範囲への攻撃だった割に、意外と被害は少ない。

 …おそらく、何らかのスキルを得たは良いものの、ヒューバート自身がまだスキルに慣れていないのだろう。


 ヒューバートをどうにかしようとするならば、ヒューバートが力に慣れる前に速攻で叩くべきだ。

 しかし強大な力というものは、雑に振るわれても脅威であることには変わり無い。


「この野郎っ!」

「よくもダチを…!」

「死に晒せっ!」


 攻撃を受けたことで傍観しているわけにもいかなくなり、短気な何人かが一斉にヒューバートに斬り掛かって行く。

 別に示し合わせたわけでもないのだろうがそれぞれの行動は噛み合い、奇跡的に格上殺し(ジャイアントキル)の可能性を秘めた連携となる。 


「アハッ…!」

ブンッ!


 だが、それを見てヒューバートは嗤い、影を纏い肥大化した右腕を無造作に振るう。

 そして振るわれた腕にはマスター・ヨーグの最後が示すように、防御というものが意味をなさない。


『バチュンッ!』


 水を思い切り地面に叩き付けたような音が、幾つか同時に重なった音。

 どういう原理か知らないし知りたくもないが、ヒューバートに斬り掛かって行った者達は皆、肉片すら残さず大量の血液と化して飛び散ったのだった。


「ひぃ…!?」

「っ!?、うぅ…。」


 後に続こうとしたものの今の一撃で再び戦意を喪失し、武器を構えはしているが尻込みをして動けない冒険者達。


「…モウ来ないノか?

 ならソコでダマって見てイロ、『魂狩り(ハーヴェスト)』。」

ズォオォォ…


 ヒューバートが何らかのスキルか魔法を呟くと、修練場全体に黒い霧が拡がる。

 それを見て俺の頭に浮かんだのは…毒だ。


「(皆っ、口を塞げ!)」


 黒い霧が毒なのか、毒だったとして口を塞いだ程度で防げるようなものなのか。

 それは分からないが見た感じから身体に悪いものなのは確実で、多少なりとも対策はするべきだ。


 …結果として、黒い霧は自力で動ける者には大した影響はなさそうだった。

 だが黒い霧は、場合によっては単純な毒よりもタチの悪いものだった。


「あ…、あぁ……。」

「うぐぐっ、ぐぅ……。」


「………。」

「おいっ、しかっりしろ!

 ………、死んでる…!?」


 最初の攻撃により、倒れていた者や仲間に担がれていた者。

 そういった重傷者達が、黒い霧が拡がった途端に同時に絶命したのだ。


ズズズ…


 そして少し濃くなった黒い霧は集まり、ヒューバートの身体へと吸収されていく。

 『魔化』の元が〈悪魔〉であることや“収穫”といった言葉の意味から推測して、俺たちがギルドに来る際に懸念していたことが思い浮かぶ。


 もしそれが当たっていた場合、ヒューバートの好きにさせていたのは非常に不味い。

 だがそうこうしている間に、黒い霧は全てヒューバートが吸収してしまっていた。


「アァ…、…このスキル凄イヨ!

 ドんどんチカラが溢れテ来る!」


(やっぱりそういうやつかっ…!)

 

 恍惚としたかと思えば次は興奮しだしたヒューバートの言葉を聞き、予想が当たってしまったことに俺は臍を噛む。

 ヒューバートに人の心は既に無く、このまま野放しにしていてはいけない。


(だがどうするっ…?)


 元となった〈悪魔〉の魔物ランクは C…いや、多くの命を喰らい力を増した今、最悪 Bランク相当も考えられる。


 〈白の大樹〉は同ランクの中でも上位の実力であると自負しているが、それでも所詮はランク Dパーティーなのだ。

 魔物ランク B相当が予想されるヒューバートを相手にするには、実力不足も実力不足だ。


「(おいっラスト、こっちだ!)」


 最悪、俺たちだけで〈ラビリンス〉から逃走することが選択に上がる直前、この状況では非常に頼もしい人物の声が俺を呼んだ。


「(ビルダーさん!、…と〈筋肉同盟〉?)」


 声を辿り俺たちが移動した先には、ビルダーさんと昨日ビルダーさんに話し掛けて来ていた筋肉が3人。

 意外…でも無く、寧ろしっくり来る組み合わせだ。


「(ああ、昨日パーティーを組んでな。

 …って、それは後で話そう。)」


 ビルダーさんが新たな仲間を得たことは喜ばしいが、ビルダーさんの言う通り今は暢気に話している場合では無い。

 何故なら、こうしている間にもヒューバートが得た力を試すように、自棄糞で掛かって行く冒険者達を一人ずつ殺しているからだ。


 今は向かって行っている冒険者で遊んでいるヒューバートだが、いずれ向かって行く冒険者がいなくなれば蹂躙を開始するのだろう。

 そうなってしまえば連携も無く、ヒューバート自身も今より強化されるわけで、いよいよ勝ち目が無くなってしまう。


 つまり、ビルダーさんが俺を呼んだ理由は─


「(俺たち(〈筋肉同盟〉)お前ら(〈白の大樹〉)、…それとあと幾つかのパーティーに声を掛けて部隊(レイド)を組むぞ。)」


 強大な魔物を討伐するために組まれる精鋭による部隊、その参加の打診であった。



 


 


 

 


 

 


ということで、プロット[VS悪魔]開始です!

(ファンタジー最強金属はやっぱりオリでしょ?)



いつも読んでいただきありがとうございます。


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