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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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159 I'll be back ~また会う日まで~

Tips :〈ML変換銃口装着装置〉

 「単発じゃ当たらない?…なら当たるまで撃てれば良いんだよ!」 by 妖精猫の武器開発主任


 以上のコンセプトで開発された、〈M1試製魔力狙撃銃〉のマズルアタッチメント。

 単発で発射される魔力弾を、トリガーを引く限り照射するように切り替える機能がある。

 この機能を十全に発揮させるため、銃身の魔力熱の冷却機能も内蔵する、無駄に技術の塊。

 更に単体では半実体の刀剣として使える他、マズルに取り付けることで剣槍として使うことも可能。

 本体が開発中止となったため当装置も同様の措置となるかに思われたが、半実体の刀剣という携行性の良さに着目され、士官や特殊部隊向けの携行武器として独自に発展することとなった。



「マズルに取り付けることで~」

Zのロ○グビ○ムサー○ル的な?

 「巨人絶対殺すマン」な〈魔王〉と戦うことになる可能性が非常に高いということで、ショゴちゃんの依頼は受けざるをえない俺たち…というよりか俺。


 巨人の末裔は俺以外にも兄二人がいることは確定しているが、どうやら俺は先祖返りというやつで巨人…〈巨躯の星戦士〉の世界を補強する力が強いらしい。

 おかげで故郷(スマト村)では人間の異物を排除しようとする本能により、体格だけでは少々過剰とも言える嫌悪に曝されたという…。


 まぁ…この身体のおかげで貴族にマリ姉を奪われずに済み、リタと良い感じになるきっかけの一つとなったと考えると…

 いやいや、どう考えても「〈魔王〉に付け狙われる」というデメリットがデカ過ぎだ。


(いかん…、話が堂々巡りだ…。)


 とりあえず今は装備を整え、実力を上げることを優先だ。

 それに、いくら勇者ではないと言っても異世界人は強くなる素養があるらしく「勇者」もやる気なので、倒してくれるならそれはそれで両手を挙げて歓迎しよう。


 ショゴちゃんの依頼も、世界を壊そうとする奴がいるから倒して欲しいというものであって、誰が倒すかは関係無いのだ。

 …〈魔王〉が「真の勇者しか倒せない」とかいう存在じゃなくて、本当に良かったと思う。


「『双方用件は済んだな?』」


 頷く俺たち。


「『では上まで送ろう、行くぞ。』」


カッ!


 …………………。

 …………。

 …。


 眩しい光と一瞬の浮遊感の後目を開けると、そこは既に巨大闘技場のど真ん中だった。


「っ…。」


 マザーに連れられあちこち寄り道したことで、かなりの時間が経っているように感じていたが、どうやらそうでもないらしい。

 その証拠に、半日も経てばダンジョンに吸収されてしまう筈の“痕跡”がまだ残っていた。


「『…では此処は切り離す故、末裔にはこれを渡しておこう。』」


 そう言ってショゴちゃんが渡してきたのは、黒曜石に七色に瞬く粒が入ったような、握るのに丁度良いサイズの石だった。

 …見間違いでなければショゴちゃんの手の平から生成されていたように見えたが、この石のような物体の正体は知らない方が賢明かも知れない。


「これは…?」


 だとしてもこれが予想通りの物体だとして、これを渡された理由は聞かねばならないだろう。


「『此処に来る為の(しるべ)だ。

 回収した漂着物を見に来るのに必要であろう。』」


(………ああ、「切り離す」ってそういう…。)


 確かにリスクを考えると、いつまでもダンジョンに繋がっているのは不味い。

 それにダンジョンの変遷などでも、いずれここは〈楔の宮〉から消失する。


 この石は遺物の回収や生成物の補給のため、ここへ再訪するために必要なアイテムということだ。

 おそらく先ほどのような現象が起きるのだろうが、こんなものをポンと渡してくるとは、またマリ姉がおかしくなりそうだ。


「『心配無用、導は末裔自身のみが使えるようにしてある。』」


 まぁ…奪われたりする可能性を考えると、そのように対策するのは当たり前だな。

 マリ姉もそう誰でも使えるわけではないと聞き、頻りに頷いている。


「『だが末裔の庇護下にある者は、無制限に末裔に同行出来る。

 万一の時は頼るが良い。』」


 …今のところその兆候は無いがヤることはヤっているため、〈魔王〉襲撃のタイミングによってはマリ姉達が戦えないということもあるだろう。

 そんな時にはマリ姉達をここ(スライムの森)に避難させることで、俺は後ろを憂うことなく戦えるわけだ。


 しかも「俺の庇護下の者は無制限」。

 これは、俺の庇護下…つまり俺と深い関係にある者たちを一回に避難させられる、ということだろう。


 ショゴちゃん的には〈魔王〉が襲撃して来たらさっさと戦えということなのだろうが、俺が俺の大切な人たちに順位を付けずに済むので大助かりだ。

 …まぁ、マリ姉達が避難するかと言えば現時点では「無い」という回答になるので、実際にそういった用途で使われるかは怪しい。

 この機能が活きるとすれば精々、集められた遺物を物色する際くらいなものだろう。


 …マリ姉?

 マリ姉なら無事に、アデリナの『平静』の世話になっていたよ。


「『それでは、そろそろ暇とするとしよう。』」


「ああ、色々と助かった。」


 伝説のアイテムやら世界の成り立ちやら俺の血筋やらの話で何度も衝撃を受け、最終的には〈魔王〉と戦わなければならない身となってしまったが、〈ハイポーション〉なんか目じゃ無い伝説のアイテムの補給のアテが出来たり、遺物の回収をして貰えたり、絶対安全な避難場所が出来たりと、トータルでは莫大な利をもたらしてくれたスライム達。


 自分でもつくづく現金だと思うがここまで良くして貰えたら、初対面時に感じていた脅威などもはや欠片も無い。

 むしろ個性的な人形スライム達と別れることに、また会えるにも関わらず寂しさを感じている。


 だが無理を言って俺たちに同行しても、周りは最初の俺たちと同じかもっと過激な反応をすることは明らかだ。

 そんなのは俺たちにもスライム達にも得は無い。


 だから俺は、寂しさなど感じてないように、軽く言葉を掛けて見送るのだ。


「『あっ、そうだ。これも渡しておこう。

 それは末裔が持つに相応しかろう。』」


 スライム達が転移して行く直前、ショゴちゃんは俺にもう一つの石を投げて寄越す。


「あっ、ちょ…これは何なんだ!?」


 慌てて尋ねる俺。

 しかし、


「『ではサラダバー』」

カッ!


 との言葉を残し、人形スライム達はまるで最初からいなかったかのように消えたのであった。

要るか要らないかで言えば、要らない寄りの話。

次回「ダンジョン脱出」(予定)


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