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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
1章  冒険者ラストの初心者生活

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14 実績解除:臭う…臭うぞ!

 「そこでラストが目にしたものとは…!?」という幻聴が聞こえてきそうなギルマスの振りに、俺はギルマスの隣まで行きギルマスの指差す方を見た。


「ギャッギャギャ?」


「ギャア?」


「ギャ~…。」


 子供ほどの痩せた体躯に暗緑色の肌、毛の無い頭の横についている耳は若干尖っている。

 雑に剥いだ何らかの毛皮を腰に巻いた、二足で歩く魔物。


「ありゃハグレのゴブリンだな。」


 何の感慨もなく、その人型魔物の正体を言うギルマス。


「あれが…。」

 

(ゴブリン、か。)


 角兎やらと違い駆除するためだけに討伐される魔物。(魔物なので魔石は取れるがクズ石だ。)

 この〈初心者の森・浅層〉で最も注意すべき醜悪な魔物…なのだが。


(思っていたのと違うな?)


 幼い頃に悪戯をすると両親に、


「悪い子のとこにはゴブリンが来て、森へ拐って食べられてしまうんだよ?」


 と言い聞かされて育った。

 出発前にギルドでも、姿絵付きの魔物図鑑でゴブリンの生態を調べさせられた。

 図鑑の姿絵のゴブリンは、子供心に思い浮かべた通りのいかにも邪悪といった顔をしていたのだが、今実際に目の前でうろついているゴブリンは、何だかマヌケな顔をしていてむしろ愛嬌すら感じる。

 特にしきりに鳴き声を交わしている2体から少し離れたところにいる1体なんか、しゃがんで野花を愛でている。


「ギャッギャギャギャア!」


「ギャーギャギャ!」


 そして鳴き声を交わしていた2体が茂みの向こうに去っていく。


「よし、行って来い!」


 ギルマスは小声でそう言うと、残った花を愛でているゴブリンの方へと、俺の背中を押し出した。


「ちょっ…、うわっ!?」


 いきなり背中を押されバランスを崩した俺は、あろうことかゴブリンの目の前で地面に膝をついた。


「ギャッ!?」


 突然現れた俺に驚くゴブリン。


(ヤバいっ、槍…いや鉈は!?)


 見付かった(?)以上、次の瞬間にはゴブリンが襲って来る。

 しかしこの近距離では槍より鉈が良いと咄嗟の判断で槍を放り、腰に吊るしていた鉈に持ち変えた。


「ギャッ!」


 腕を振り上げるゴブリン。


(来る…!)


 ようやく武器を持ち変えた俺は身構えた。


「ギャッギャ~!」


 しかし予想したような攻撃は無く、ゴブリンはまるで俺に「ヤッホ~!」というような鳴き声を上げたのだった。


「お、おう…。」


 つい左手を控えめに上げて応える。


「ギャーギャギャ、ギャギャギャギャギャ?

 ギャギャギャギャ、ギャギャッギャギャ。

 ギャギャギャギャギャ〈ギギャ〉、ギャギャギャ?」


 やたらと鳴き声を上げるゴブリンに、俺はどうしたものかと困惑する。


「ラストッ、さっきの2体が戻ってきた!」


 ギルマスが姿を表し、俺に注意を促す。


「ギャンギャギャ!?

 …グギィ~ッ!」


 ギルマスに気付いたゴブリンが、酷い嫌悪を感じる鳴き声を上げ、図鑑の姿絵が弛く感じるほど醜悪な顔になる。

 手を延ばせば届く近距離、俺の目の前で。


「うわあぁあぁっ!」


 俺はあまりの恐怖に叫び声を上げ、そして…


ゴシャッ!

「ギゥッ!」


 右手に持っていた鉈を、ゴブリンの脳天に振り降ろした。


ぴっ


 ゴブリンの血が顔に跳ねる。


「ギャーギャーッ!」


「ギャッギャウギャギャギャギャギャ~ッ!」


 仲間を殺されるところを目撃した、戻ってきた2体のゴブリンが、俺目掛けて駆けて来る。


「ひぃっ…!」


 俺は鉈を両手で握り締め、引き吊った悲鳴を上げることしか出来ない。


「「ギャ~ッ!」」


 鋭い爪の生えた手を振り上げる2体のゴブリン。


(あの爪で俺はズタズタにされて、殺されてしまうのだろう…。)

 

 という他人事な考えが浮かぶ。


「『大切断(スラッシュ)』!」


ズパパンッ!


 しかしその考え通りにはならず、ギルマスが両手剣(ツーハンデットソード)の一振で2体のゴブリンを斬り捨てた。


「す、すげぇ…。」


 これが元凄腕の実力か。

 ゴブリンなどいくら来たところで、恐怖など微塵も感じることなく軽くなぎ払うことだろう。

 対する俺は…


じと…


(あぁ~っ、15にもなって…。)


 羞恥に穴を掘って埋まりたい気分だが、俺の黒歴史は人の知ることになる運命らしい。


「ラスト、終わったぞ!

 …ラスト、これくらいでへたったのか?

 ほら、立ちな。」


 倒したゴブリンから魔石を回収し、その死体に何らかの液体をかけたギルマスが、俺が腰を抜かしたと誤解して立たせようとする。


「ちょ、待…」


 静止しようとするも、一気に引き上げられ間に合わない。


「…あ~、悪い。」


 立たせた俺を見て、気まずそうに目を逸らしながら謝るギルマス。


「大丈夫だ、冒険者には良くあることだ。

 それに俺は口が堅い。」


 ギルマスの口の堅さなんか知らないし、良くあることと言っても“こういうこと”ではないだろう。


「ま…まぁ、ゴブリンは1体倒せただろ?

 良くやった。

 ゴブリンも早く見付かったおかげで、閉門までにはまだ時間の余裕がある。

 だからバレないって、な?」


 流石にバツが悪いと感じているのか、必死に俺を宥めようと言葉を尽くすギルマス。

 そんなギルマスを黙って睨む俺のズボンは、股間部分が内側から濡れていたのだった。

豆腐メンタル主人公

失禁主人公     ←New !

不名誉な称号が増えた主人公でした。


因みに作者はビックリ系のホラーが苦手です。

(映像も勿論ですが効果音が…。)



いつも読んでいただきありがとうございます。


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