153 知識も財産ではあるけれど…
Tips :〈ショートソード〉
兵士から冒険者まで広く使用される両刃の直剣。
打ち合っても折れない程度には頑丈だが切れ味はそこそこで、重量を利用して叩き斬る使い方が一般的。
剣の長さに関係なく、歩兵が使う両刃直剣はショートソードに分類される。
※Tips がネタ切れになるので巻きでいきます。
結論。
俺は巨人の末裔らしい。
そして俺が聖戦士と勘違いしていたのが、“星”戦士であることも判明した。
わぁ、スケールぅ…。
「Why… ?」
マザーらがその結論に至った理由として、俺から感じる気配も理由の一つではあるのだが、ここがダンジョンに繋がったのが決め手らしい。
というのもダンジョンの隠し部屋というものは、ここのように独立した次元に漂う世界の残滓が似た性質に引き寄せられて繋がったもの…らしい。(引用元 マザー&エリちゃん)
そしてここは例の殺戮を生き延びた巨人達が「どの性質にも寄らない性質」にしたらしく、本来はダンジョンに繋がることは無いのだとか。
何故そうしたのかと言えば、巨人達のように殺戮されることを避けるためらしい。
その当時はまだ数体の巨人がいたらしく、問題なく世界の維持が出来ていたようで、つまりここはスライム達(と生き延びた巨人)の避難所だったというわけだ。
…俺が思ったより焦る理由が、重大な理由だった。
話を戻して、では何故ダンジョンに繋がらない筈のここがダンジョンに繋がったのかというと、実は「どの性質にも寄らない性質」というのは不可能らしい。
虚無ですら「無」という性質に囚われるらしいのだから、その不可能さ加減が何となく分かる。
ではここがどのような性質を持っているかというと、それは「巨人」なのだ。
当時、ここには生き延びた巨人の全てが揃っていたと思われていたため、外側にここを引き寄せる性質がいない=どの性質にも寄らない空間の出来上がり…というわけだな。
生き残りの確認はしたらしいのだが、「戦乱の最中で行方不明となり、状況的に死んだ」と思われていた者が「実は生き延びていた」というのは良くある話だ。
そしてその生き延びた巨人は他の巨人が滅びたと思い、世界の維持のために何らかの方法で人と交わったのではないか?…というのがマザーらの考えだそうだ。
(人と巨人が交わる…?)
巨大闘技場の巨大アンデッド…実はあれは巨人の遺骸にスライムが入り込んで動かしていたらしいのだが、あの巨大さを思い知らされた身としては、人と巨人が交わることが不可能なことなど見て分かる。
方法があるとすれば実在するらしい『縮小』の魔法だが、巨人は御噺の通り魔法には無効化といった具合に耐性があるが、魔法を使うのは滅法苦手な種族だったようでその可能性も低い。
(…いや、男側が人ならワンチャン?)
………、最早それは体格差とも言えないのでは?
しかも、それを巨人が人サイズになるまで繰り返す?
そもそも巨人に性別はあるのか?
因みにというか勿論というか、マザーらには無いらしい。
(…まぁ、スライムだしな。)
カサリ…
「あ~、シルちゃんやほ~。」
不意に聞こえた葉擦れの音、それに気付いたマザーが音の鳴った方を向き手を振る。
(…おっ、また人型スライムか?)
考え事をしていた俺は、遅れて音の鳴った方に顔を向ける…が─
「ヒィッ、ニンゲン!?」
シュバッ!
俺が分かったのは怯えた声と、素早く動く銀色の何かの残像だった。
もう影も形もない「シルちゃん」の正体を、マリ姉が俺に耳打ちしてくる。
(今のって〈ミスリルスライム〉じゃ…?)
(あ?…………、あぁ~…。)
そりゃ悲鳴を上げて逃げる。
何なら、〈ミスリルスライム〉の遺骸とも言える〈ミスリルスライムジェル〉も持ってるし…。
「あら~シルちゃんどうしちゃったのかしら~?
…まっ、次行きましょ~。」
エリちゃんはマザーの仇討ちで襲って来たが、マザーは怯えて逃げたシルちゃんのことは気にしないことにしたようだ。
仲間想いなのか違うのか、よく分からん態度だな…。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
フワ…
(ん?この匂いは…。)
マザーに付いて歩くことしばらく、森の匂いとは異なる香りを感じた。
「お酒臭い…。」
鼻の良いニーニャが、顔をしかめながら呟く。
「あら~、イレちゃんはお酒が苦手なのね~?」
振り返って、ニーニャにそう言うマザー。
獣人だからといって酒に弱いという話は聞いたことがないが、やはりニーニャはまだ子供だということだろう。
「酒を飲むのか?」
スライムだから食べられないものはほぼ無いのだろうが、マザーの酒を嗜むような言い方が気になり訊ねる。
「そうよ~、アルちゃんの作るお酒は~、と~っても美味しいの~♪」
(またスライムの生成物か…。)
〈ハイポーション〉を青草ジュースと言ってカパカパ飲んでいるマザー達のことだ。
「アルちゃんの作るお酒」とやらも、普通の酒ではないのだろう。
…まぁ、こんな特殊な場所の素材を使っている時点で希少な品なのは分かり切った事だ。
フワッ
先程まで仄かに漂っていた酒の匂いが強くなる。
…しかし匂いが強くなったとしても、不思議と酔いそうな感じはしない。
ニーニャは相変わらずのしかめ面だが…。
「アルちゃ~ん♪」
「マーちゃん、またお酒?」
甘えるようにマザーが抱きついたのは、呪術師がそうするように木の枝を角のように頭に生やした黄金色の人型スライム。
「…あら、ヒト?」
「うん~、同胞の末裔と~そのお仲間さん達~♪
アルちゃんのお酒~、美味しいから~分けてあげよ~って♪」
アルちゃん(さん?)が俺たちに気付いてからの紹介といい、紹介のいい加減さといい、明らかに酔っているマザー。
アルちゃんに対する態度は甘え上戸のそれである。
「そうなの、…容れ物はあるかしら?」
確認に頷いたマザーを見て、俺たちに容器を要求してくるアルちゃん。
「ええ、これで良いかしら。」
俺の持って来た空瓶には〈エリクサー〉が詰められたため、マリ姉が空瓶を渡す。
「これだけで良いの?じゃあ、…レロ」
…ツツー
出し方にはもう何も言うまい。
エリちゃんの出し方に比べたら、口咬み酒のようなものだと思えば問題は無い。
(ほー…、綺麗な琥珀色だなぁ。)
少しとろみのあるその酒は、仄かに発光していると錯覚するほど美しい。
「ラストさん、これっ〈神酒〉では!?」
はっはー、 知 っ て た 。
プチ発狂する主人公。
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