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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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150 事情説明と謝罪の品

Tips:〈ハイポーション〉

 言わずと知れた魔法回復薬〈ポーション〉の上位互換。

 〈ポーション〉の材料である〈薬草〉の治癒成分が非常に高濃度に含まれているため、〈ポーション〉では治療不可な外傷も癒すことが可能。

 しかし〈薬草〉に含まれている治癒成分は変化しやすいため高濃度で抽出するのは困難であり、結果現在〈ハイポーション〉は貴重なアイテムとなっている。

カクカクシカジカ…。

マルマルウマウマ…。

イアイア。


 マザーの記憶がどこかに流れていってしまったため、俺たち視点になるが事の次第を説明した。


「ふむん…?、…なるほど…。」


 俺の説明を聞き首を傾げるも、納得した様子の粘液少女。


「あ~、そうだったわね~。

 エリちゃん、ごめんなさいして~?」


 そして俺の説明を聞いて用件を思い出せたマザーが、粘液少女…エリチャンに俺たちに謝るように促す。

 確かに勘違いで襲われたのだが、襲われた原因はマザーのうっかりでは?


「………うん…、そうだね…。

 ごめんなさい…。」


 間を置いてから頷いたエリチャンが、俺たちに向き直り謝罪してくる。

 俺同様にマザーに思うところがあったようではあるが、それはそれとして俺たちに頭を下げるあたり、エリチャンは素直な性格なのだろう。


「誤解が解けて何より。」


 酸で火傷した腕がジクジクと痛いが、どうしてかエリチャンを責める気にはなれなかった。

 ………、誰か治療してくれ~!


(いや、痛い痛い痛い…!)


 一先ずの区切りがついたことで気が弛みでもしたのか、激痛に襲われる俺。


「あっ、ラストさん!」


 慌てて俺を治療しようとするアデリナ。

 しかし、アデリナが神請魔法を発動させる前に動いたものがいた。


トプン…


 唐突に何かに包まれる、俺の両腕。

 俺の両腕を包む“何か”は柔らかく、ひんやりとした冷たさが火傷に心地良い。


「んっ…、ダメッ…!

 ナカで動かさないで…、ふぁっ…!」


 悩ましい声を上げるエリチャン。

 …そう、俺の両腕はエリチャンの体内に入れられていたのだ。


 なるほど。

 火傷して痛いなら、痛いところを(物理的に)失くせば良い…というわけだな?


「………、アホかっー!?離せー!」


 そんなことをしなくても、普通にアデリナに治療して貰えば良いのだ!

 余計なお世話というやつである!


「ひぁっ…!?

 や、暴れちゃ…!」


 しかしエリチャンの体内に入った腕は、固定されているわけでもないのに何故か抜けない。

 抜こうと焦る俺と、咥え込んで離さず喘ぐエリチャン。

 そしてその瞬間が訪れる。


「ふぁああぁっ…!!」

シュワァアアァッ


 エリチャンが一際大きい嬌声を上げると、エリチャンの体内に取り込まれた俺の両腕が淡く光る。


ヌポッ!

「あぁんっ…。」


 光が収まり、エリチャンの体内から抜ける腕。

 そして自分の腕を確かめた俺は、思わず叫ぶ。


「治ってる!?」


 粘液で濡れてはいるものの、俺の両腕は火傷の跡一つなく治癒していたのだった。

 俺が酸の火傷を負っていたという名残は、溶けてボロボロになった腕の装備だけ。


「あの火傷を完全に(跡も残さず)癒したのですか…?」


 この結果には治療された俺は当然として、本職(治癒師)のアデリナも驚きを隠せない。


「あっそうそう~、エリちゃんの作る青草ジュースっておいしいんだ~。」


 青草ジュース?エリチャンが作った?

 つまり俺の怪我はジュースで治るのか?

 

ブチッ


「…もしかしてその青草ジュース?の材料ってこれ?」


 この森に生えていた草を無造作に引き抜き、その草をマザーに見せるマリ姉。


「そうそう~、わたしたちも自分で作るんだけど~、エリちゃんのが一番濃くておいしいの~。」


 濃い………。

 先ほどのこともあってか、見た目少女の(少女に擬態した)エリチャンのあられもない姿を想像してしまう。


「ラス君っ、これ〈ハイポーション〉よ!?」


「何だって!?」


 マリ姉の話が本当ならば、エリチャンは俺たちの目的の一つでもある〈ハイポーション〉を、それこそ常に飲めるほどに生成できるということだ!


「欲しかったら~、いくらでもあげるわよ~?」


 驚く俺たちに首を傾げ、まるで作りすぎたジャムを配るような気軽さで言うマザー。


「いくらでもは…、無理…。」


 ほら、やっぱりそんなことは無いらしい。


「でも…、池一つ分くらいなら良い…。」


 ………、池一つ分の〈ハイポーション〉とは?

 少なくとも、樽一つ二つの量では収まらないことは確実だ。


(そりゃ、人が来るって焦るわけだ。)


 〈ハイポーション〉を生成するエリチャンもそうだが、マリ姉がマザーに見せたようにこの森には〈ハイポーション〉の希少と言われる薬草も群生している。

 このことが知られたら大勢の人が詰めかけここを棲み家とするスライムを駆逐し、この森を丸裸にしてしまうに違いない。


「どのくらい…、欲しいの?」


 恐ろしいことを想像する俺に、当のエリチャンは生成する〈ハイポーション〉の量について訊ねてくる。


「あ、ああ…。」

ゴソゴソ…


「どうせなら~、エリちゃん特製のキラキラジュースをあげたら~?」

 

 あまりにも普通の態度のエリチャンに戸惑いながらも、俺が空の〈ポーション瓶〉をいくつか用意しようとしていると、マザーがまた何やらエリチャンにムチャ振りを言う。


「…これに頼む。」


 俺は取り敢えずマザーへの反応をスルーして、ポーションポーチから取り出した瓶をエリチャンに渡す。


「分かった…、ちょっと待ってて…。」


 そう言ったエリチャンは俺が渡した〈ポーション瓶〉を、徐に足の間に持っていく。


「ちょっ、まっ…!」


「んっ…。」

チョロロロ…


 俺の制止は間に合わず、空瓶が緑の結晶がキラキラと浮かぶ薄黄緑色の液体で満たされる。

 あれがマザーの言うキラキラジュースなのだろうが、〈ハイポーション〉は〈ポーション〉より濃い緑色をしていると聞く。


 尚…瓶を充たすあの液体が、一部の変態の言う「聖水」である可能性は認めないものとする。

 人の形をしているエリチャンであるが、あくまで人の形をしているだけなのだ!


「嘘…、まさか…。」


 必死に脳内で言い訳をする俺だが、マリ姉も今の光景に言葉が無いようだ。


「この色と結晶…、間違い無いわ。」


(あ、あれ…マリ姉?)


 何だか話の行方が怪しくなってきたような─


「…ラス君、これは〈蘇生薬(エリクサー)〉よ。」


 ナ、ナンダッテー!?

 

エリクサーを生成するからエリちゃん…。

………、安直っ!!



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。


「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。


本章が長くなっているので、メリィ、アデリナ、マザー、エリちゃん4名のAIイラストを〈みてみん〉にて先行公開してます。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ハイポでも「やべぇよ…やべぇよ…(DB並感」なのに、まさかのエリクシャー来ちゃったよ…(驚愕) 激烈貴重品だから一本だけ有り難く頂戴しとこう…というのが当たり前の判断ですが…。ビ…
蘇生(瀕死の状態でも助かる)薬かな?
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