148 人の形をしたスライム
Tips :ラストの現装備
主武器 巨象魔猪の骨槍
盾 薄金の大盾 (放棄)
副武器 万能シャベルナイフ (刃引)
頭 オーク革の革兜
胴 板金補強革鎧
右腕 ハイグリップグローブ
左腕 鋼の厚籠手
足 板金補強革ズボン
総評 資金の充実とメンバー増加により、以前より
重装化している。
〈薄金の大盾〉は泣いても良いと思う。
片方の爪だけデカいカニがいたような…。
「それはそうと、同胞とそのお仲間さん達はどうやってここに来たの?」
俺が浮かんだ疑問を何から訊ねようか整理していると、マザーと名乗る女型スライムが俺たちに訊ねてきた。
「は?…いや、そこからだが?」
俺は後ろにポッカリと空いた穴を指差した。
マザーがいつからここにいたのかは気配に敏感なニーニャですら気付けなかったが、最初に声を掛けてきた時の言葉からしてしばらく潜んでいたに違い無い。
だから最初から居て、俺たちがあの穴から飛び出して来たところを見ていた可能性は高い。
「そうじゃなくて~上よ、う~え。」
上…、そういえば俺たちは巨大アンデッドから逃れるために滑り降りて来たんだったな。
となると、マザーはあの巨大な闘技場と御噺の巨人のようなアンデッドのことを知っているのか?
「おま…マザーが巨大な闘技場のことを言っているなら、ダンジョンの隠し通路があそこに繋がっていたんだ。
それより、あの巨大なアンデッドは一体何なんだ?」
ビルダーさんを殺し、マリ姉が『火球』を連発しても怯むだけだった未知の巨大アンデッド。
あれを倒すためには、少しでも情報が必要だ。
「ダンジョン?…ああ、楔の周りの歪みのことね~。
…って不味いわ、ここに歪みが繋がったってことは人が一杯来ちゃうってことだもの!」
しかしマザーは俺の問いに答えることはなく、この場所に人が来る可能性にちょっとしたパニックになっていた。
確かに棲み家に人が来るとなればスライムには一大事なのだろうが、人を虫けらのように潰せる巨大アンデッドの方がよほど脅威ではないか?
スライムは魔石を持たないから生物とされているが、やはり人とは違い魔物と共存できる故か…。
(魔石があろうが無かろうが、結局はバケモノってことだな。)
ドラゴンは言うに及ばず、スライムもマザーのような存在がいると知った今、俺のその考えは強くなった。
「みんなにも伝えなくちゃ!
…同胞とお仲間さん達もついてきて説明してくれる?」
…図らずも、俺たちはマザーと同様の存在を確認出来そうだ。
「………、ああ。」
俺たちは一瞬視線を交わし合い、マザーについて行くことにしたのだった。
「まぁっ、ありがと~!
じゃあ急ぐけど、ちゃんとついて来るのよ?」
俺たちが頷いてみせると、マザーは俺たちが頷くと思っていなかったかのように驚いた後、満面の笑みで感謝を伝えてきた。
その無邪気な様子とマリ姉たちに匹敵する体つきに、一瞬「クラッ…」っとキてしまった俺は欲求が溜まっているのかも知れない。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
ペタペタペタペタ…
ポヨンッ、ポヨンッ、ポョヨンッ!
陽の光を反射し、キラキラと宝石のように輝く粘液が所々に滴る、ある種神秘的な光景の森の中。
迷い無い足取りで進むマザーと、マザーの足元で弾む多数の水色スライム。
…心なしか、弾み方に必死さを感じる。
ザッザッザッ…
その後ろを、俺たちはダンジョンならではの光景に目を奪われながらも警戒して歩く。
…そう、歩いているのだ。
「「「………。」」」
「…なぁマザー、急いでるんじゃなかったのか?」
「自分について来られるか?」などと心配するものだから、てっきり俺…俺たちは〈ミスリルスライム〉並みの素早さを想像していた。
それとも、話し方からしていかにもマイペースな性格のマザーにとっての“大急ぎ”ということだろうか?
「急いでるわよ~、集中したいから今は~話しかけ」
ガッ!
「「「あっ。」」」
ズベシャァッ!
やはり“のほほん”とした口調で抗議していたマザーが、木の根に躓き人の形を失って地面に拡がる。
(えっ?…死ん)
脅威と見なしていたマザーのあまりの呆気なさに、俺たちはその場に唖然と立ち尽くす。
「キャアアアッ、ヒトゴロシヨーッ!」
「ヤメテッ、ワタシニランボースルンデショ!?」
「ドウジンシミタイニ、ドウジンシミタイニッ!」
「ワタシハオマエタチニナドクッシナイッ!」
「「「クッコロ、クッコロ!」」」
たった今起きたマザーの惨状に、恐慌をきたし一斉に騒ぎ始める水色スライム達。
(コイツらも言葉を!?)
村にいた頃…増えすぎたスライムを処分した時には言葉どころか鳴き声一つ聞いたことが無い。
スライムの鳴き声らしきものを初めて聞いたのは、ミスリルスライムを狩った時だった。
ビュッ!
あまりにもあんまりな状況にどうでも良いことを考えていた俺に、何処からか何かが飛んで来る。
「っ!」
バシャッ…!
反射的に振るった左腕が濡れる。
(…水か?)
俺は一瞬そう思ったが、この場所はスライムの棲み家だ。
シュウゥゥ…
「ぉわあっ!?」
溶け始めた〈鋼の厚籠手〉を、俺は慌てて外して投げ棄てる。
「鋼を溶かす強酸…、〈アシッドスライム〉ッ!?」
(何だって!?)
幼い子供でも倒せる〈水色スライム〉に対し、攻撃性とその強酸から Eランク魔物に相当する亜種スライムだ。
だが、今さら Eランクの一体程度…俺たちの敵ではない。
しかし攻撃してきた〈アシッドスライム〉が、通常の〈アシッドスライム〉ならば…だが。
「次は…、外さない…っ。」
そう流暢に人の言葉を話しながら現れたのは、緑色の粘液少女だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




