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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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144 隠し通路の先で待ち受けるもの

ルラギッタンディスカー!!

 通路を隠していた壁を破壊し、交代で穴を掘り進めること体感数時間。

 落盤跡のような土より岩石が多い土砂を掘っては固めを繰り返し、俺たちはようやく人一人が屈んで通れる奥行き1メートル程の穴を開通させた。


 この場所が細い枝道の行き止まりということもあってか、俺たちが穴掘りをしている時に来た探索者は一人としていなかった。

 「これは急ぐ必要も無さそうだ」ということで穴掘りで消耗していた俺たちは、一応掘った穴を隠すように座り食事がてらの休憩を取った。


シャッ…、シャッ…


 その休憩中、俺は酷使されたシャベルナイフに砥石をかけてはみたが、刃物としての機能が復活することはなかった。


 それはさておき。


 十分な休憩を取った俺たちは穴を通り、いよいよ隠し通路の探索を開始した。

 穴が開通した時に既に分かっていたことだが、隠し通路とは言ってもいきなり環境が変わるわけでも無し。


「…何かツルツル?」


 しかし多少の変化はあり、ゴツゴツとした掘りっぱなしの地面だった通常の通路と異なり、隠し通路は地面や壁…そして良く見れば天井までもが磨いたように滑らかだったのだ。

 〈城〉や〈屋敷〉フィールドなんかの床一面に敷かれたカーペットやら天井に吊られたシャンデリアなんかに比べるとよほど自然なのであろうが、見た目が自然の岩肌なだけに一面が磨かれている異様さが際立つ。


「…この先に〈大地竜(アースドラゴン)〉がいるかも知れん。」


 ウッドさんの呟きに、にわかに緊張を走らせる俺たち。


 〈ドラゴン〉、それは英雄譚で必ずと言って良い程語られる最強の“生物”だ。

 生まれたてでも Cランク魔物に相当し、成体となれば最低 Aランク魔物以上になると言われている。


 魔物ではないためダンジョンに発生(ポップ)することはあり得ないのだが、確かダンジョン内に棲み着いていたということがあった筈…。

 最強生物たるドラゴンにとって、魔物(エサ)が定期的に発生するダンジョンは棲み良い穴蔵でしかないのだろう。


 もしウッドさんの言うように〈アースドラゴン〉がこの先にいるのだとしたら、魔物が一体もいないこの磨かれたような通路にも納得がいく。

 岩を喰らう〈アースドラゴン〉の『胃酸吐瀉(アシッドブレス)』が原因だ、と。


 岩をも溶かす『アシッドブレス』を人が食らえば、岩よりも簡単に溶けて死体も残らない。

 死体がなければ『死者蘇生』も不可能だ。


 そんな即死攻撃が通路の奥から飛んで来ることを警戒し、俺は盾を構えマリ姉たち3人の前を歩くのだった。

 …まぁ、木の大楯に薄い鋼板を貼り付けた〈薄金の大盾〉が『アシッドブレス』に耐えられる可能性は低いが。


 最悪俺自身が(肉壁)となれば良いのだ。

 肉の一片でも残ればアデリナが生き返らせてくれる、…完璧な計画だと思わないか?


 …………………。

 …………。

 …。


 というのが、今までの振り返り。

 なら現在の俺たちがどうしているかというと─


オオオオォオオォ……


 まるで怨霊の呻き声のように風の鳴る、円刑闘技場(コロッセウム)のような開けた場所を見下ろしていた。

 正しくは隠し通路と一体化していた、闘技場と観覧席を隔てる壁の縁に立っている。


「何だあの死体、でけぇ…。」


 俺は闘技場内に転がる複数の人型の死骸を見て、思わずそう呟く。


 その巨大さを説明するとなると、俺たちが立っている場所から闘技場の地面までが目算3~4メートル。

 そして壁に凭れ掛かるようにして死んでいる一体は、肩が壁の縁より出ている。


 仮に上体と足が同じくらいだとして、全長が6~8メートルと推測される。

 俺よりも体格のあるビルダーさんが2メートル弱であることを考えると、その巨大さが分かるだろう。


「…魔物部屋(モンスターハウス)だな。」


 俺が巨大な人型に驚愕していた横で、ビルダーさんは冷静にこの場所の正体を推測していた。


「魔物なんてここに入ってから見てないけど?」


 ビルダーさんの推測に、真っ向から反対するような質問をするマリ姉。

 …俺もその疑問は尤もだと思う。


「経験不足だな…。

 良いか?ここはダンジョンだ。」


「「っ!」」


 ビルダーさんに諭すように言われたことで、俺とマリ姉は理解する。


 ダンジョンの魔物は倒すとドロップ品を残して消える。

 ダンジョン内で死亡した生物(探索者)の死体も、一定時間でダンジョンに装備ごと吸収される。


 ダンジョン内であるここに、死骸があるのはおかしいのだ。


「つまりあれらは彷徨う死体…〈アンデッド〉、ということですね?」


「ああ、罠型(トラップタイプ)のな。

 …おそらく、下に降りたりしたら動き出すんじゃねぇか?」 


 創世教の印を組みながら訊ねたアデリナには、ハッチさんが自分の推測を交えて答えた。


 古代遺跡のゴーレムしかり、特定の条件を満たすと作動する罠というのは、割とありふれたものだ。

 しかし…闘技場の地面には元は巨大な武器だったらしい錆びた塊も幾つか見えるが、下に降りてまで欲しいかと言われたら答えは「No」だ。

 一応未知の金属の可能性もあるが、錆びている時点で価値は低いも同然、つまり…


「だあっ、隠し通路もハズレかよ!?」


 ヘルトゥスさんの言うことが全てだった。


「…いや、あそこを良く見てみな。」


 そう言ってハッチさんが指す方に、釣られて視線を向ける一同。


「あっ…、入り口?」


 一番先に気付いたのはニーニャだったが、確かに薄っらとではあるが、丁度ここと反対側の下辺りに通路が続いているのが見えた。

 

(つまり、下に降りたら走り抜けろってか?)


 一斉に飛び降りたら、死骸が動き出しても出口に間に合いそうだ。

 問題は帰りで、悠長に壁登りをしている時間はいくら何でも無さそうだ。


(こりゃ縄梯子が必要か?)


 縄梯子自体は無いが、各自の持つロープを結び合わせれば作れなくも無い。

 そう考えて、提案しようと俺が出入り口から目を離し振り返ろうとした瞬間─


ドンッ


 背中に感じる衝撃。

 出入り口を見るために前のめりの体勢だった俺は、いとも簡単にバランスを崩して落下する。


(ウソだろ…!?)


 落下の瞬間、辛うじて背後を見た俺の目に映ったのは、右足を蹴り上げたハッチさんのニヤついた笑みだった。

やりやがったな、ハァアッチ!!


…名前の元ネタがね、しょうがないよね…うん。



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― 新着の感想 ―
ハッチじゃなくてパッチじゃねーか!
ハッチ貴様ぁ! それはそれとしてアンデッドならアデリナさんがなんとかしてくれるじゃろ(楽観)
あのハゲか やらないわけないよな お約束だし
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