表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

148/218

143 ダンジョンドリーム、大体夢で終わる

故に“浪漫”!


昨晩135.5話を投稿しているので、実質本日2話目の更新になります。

 すっきりしないことがあったものの、気を取り直していよいよ〈第6層・迷路〉の探索である。

 そして今回の変遷では珍しく坑道タイプの〈迷路〉らしいのだが、〈第5層〉を隔日で周回していた俺たちには、はっきり言って見慣れた風景でしかない。


「おっ、宝箱だ!こりゃ運が良い。」


 見慣れた風景ではあっても、そこはやはり〈坑道〉と〈迷路〉。

 斥候であるハッチさんとニーニャが選んだ“人の通った痕跡や気配が無い”通路を進んで行くと、床に埋もれるようにして薄汚れた宝箱が放置されていた。


「おっ宝、おっ宝~♪︎」


 発見者のハッチさんが、そう機嫌良さそうに口ずさみながら無警戒に宝箱に近付く。


「あっ、ちょ…!?」


 基本的に宝箱の中身は発見者か発見したパーティーの物…なのだが、この連合を組むにあたって俺たちが欲しい物は俺たちが貰えることになっていた。

 では何故俺がハッチさんを止めようと焦っているのかというと、ダンジョンに限らずちゃんと管理されていない場所にある宝箱は〈箱魔物(ミミック)〉の可能性があるからだ。


「心配すんなよトーシロ、こういう埋まってたりするのは〈ミミック〉じゃねぇ。」


バカンッ!


 焦る俺を“素人”と揶揄し、勢い良く宝箱を開けるハッチさん。

 「やれやれ…。」と言いたげに首を横に振るビルダーさんたちの様子を見るに、どうやら俺たちはからかわれたらしい。


「っ…ん?何だぁこれ?」


 そう言ってハッチさんが宝箱から取り出したのは、入っていた宝箱同様の古びた銀(?)のペンダントだった。


「このシンボルは…、教会のものに似ています。」


 〈迷路〉にはあらゆる時代、あらゆる世界のアイテムが“流れ着く”フィールドだ。

 おそらく、大昔にダンジョンで力尽きた信者の持ち物だったりするのだろう。


「…ま、宝箱に入っていたんだ。

 何か効果のあるアクセサリーかも知れんし…、『鑑定』行きだな。

 ハッチ、お前が持っていてくれ。」


 この場では判断がつかず、〈第1層〉にある〈鑑定屋〉行きとなった。


 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。


 古びたペンダントを入手して以降も連合は幾つかの通路を探索したが、空の宝箱があるかそもそも空振りに終わった。


「…そろそろ帰還しないと、ダンジョン内で野営になる。

 今回の探索はここまでだ。」


 探索を優先していたこともあり、道中倒した魔物のドロップは放棄している。

 帰りに倒した魔物のドロップを回収したとして、8人で山分けすれば僅かな稼ぎだろう。


 唯一の成果物である古びたペンダントの鑑定結果次第では大金を得られるのだろうが、まぁ…アテにはならない。


「このくそ〈迷路〉がっ!」


ガンッ!…ボロッ


 奮わなかった成果に、ヘルトゥスさんが腹立たし気にダンジョンの壁を叩く。


「ヘルトゥス、落ち着け!」


「落ち着けったって、こんな情けない…くぅっ。」


 ビルダーさんがヘルトゥスさんを宥めるが、ヘルトゥスさんはこの結果に納得がいかないようだ。

 仲間内でなら「こんなこともあるさ!」で済ませられても、俺たちに良いところを見せられずプライドが傷ついたらしい。


ヒュォオォ…


「風の音?」


 しかし今回に至っては、ヘルトゥスさんの癇気は良い方に向いたかも知れない。

 ニーニャが砕けた壁の隙間から、風の音がすることに気付いたのだ。


 風というのは空気の流れで、壁から風が通るということは壁の向こうに空間があるということだ。

 そして、ダンジョンで壁の向こうの空間と言えば…


「嬢ちゃん良くやった、隠し通路だ!」


 隠し通路、その名の通り隠された通路だ。

 この隠し通路はただ隠された通路というわけではなく、強力な効果を持つアーティファクトや価値の高いアイテムが眠っていることが知られている。

 それこそ、隠し通路のアイテムを一つでも入手出来れば、最低でも十年は遊んで暮らせる大金が手に入るのだ。


「…だがどうやって掘る?」


 隠し通路の発見に沸く俺たちだったが、ウッドさんの言葉で冷や水を浴びせられた。

 ある程度のフィールドには対応出来るような準備はしてきたが、採掘用のハンドピッケルはあるものの、土を退かすスコップはさすがに持って来ていない。


「手で掘るしかない…のか?」


 坑道型の〈迷路〉と言っても、その壁はほぼ硬い岩石だ。

 いくらピッケルで細かく砕いたとしても、人一人が通れる穴を掘る前に、穴を掘る手が使いものにならなくなってしまうことだろう。

 …そう、普通なら。


「ふっふ…、こんなこともあろうかと!」


ジャジャーン!


 そんなファンファーレを幻聴しながら俺が取り出したのは、中々活躍の機会がなかったマイ・サブ・ウェポン〈万能シャベルナイフ〉だ。

 マリ姉に燃やされた初代解体ナイフの代わりにガンキンに特注したものだが、ダンジョンに来てからは解体にすら使用する機会がなく腰の重りになっていたのだ!


「何だ?そのヘンテコナイフ。」


グサッ!


 [ ラストは 精神に そこそこの 傷を負った ! ]


 ビルダーさんの体質を暴露(カミングアウト)した時から薄々感じていた(ついでに頭も…)が、ウッドさんは物事をはっきり言うきらいがあるようだ。


「…ま、今は便利なことに変わりは無ぇ。

 携行食を忘れたやつはいないな?」


 俺がビルダーさんのフォロー(?)にじんときたのもさておき、ビルダーさんの確認に頷いて見せる連合の面々。

 全員一致で、どうやら帰還の予定は無しになったようだ。


「よしっ、交代で掘るぞ!」


「「「「「応ッ!」」」」」

「んっ!」


〈シャベルナイフ〉は58話でしれっとラストの副武器になっています。

そして、野郎共のテンションについて“行かない”マリ姉と、冒険者のノリに戸惑うアデリナであった。



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ