141 迷宮、一攫千金
1万ポイント、感想100件、総合[年間]ランクイン…。
さすがにもう、暫く記念は無いなw
ダンジョン〈楔の宮〉における〈第6層〉の環境は〈迷宮〉。
他の自然的なフィールドに対して、〈迷路〉フィールドは明らかに人の手が加わった様相の迷路となっている。
迷宮の中にあるフィールドなのだから、どのフィールドもある意味で〈迷宮〉じゃないかっ…て?
ノンノン、逆なのだ。
この〈楔の宮〉は様々なフィールドがある珍しいダンジョンのためややこしくなるのだが、大多数である同系統のフィールドで統一されたダンジョンなんかは「迷宮」というよりは「異界」と言った方が表現的には正しいだろう。
しかし迷宮と呼ばれるこれらの異界には共通した特徴があり、それが〈迷路〉フィールドの存在なのだ。
この〈迷路〉フィールドはどんなダンジョンにも必ず一層は存在し、ダンジョンの系統に合ったあらゆる時代あらゆる世界のレアアイテムや遺物が入手出来ると言われている。
そして構造を保持するというダンジョンの特徴に反し、〈迷路〉フィールドは定期的にその構造を変える。
これがダンジョンが迷宮たる理由であり〈迷路〉フィールドが「ダンジョンの本体」…というのは、各〈迷宮都市〉の住民であれば子供でも知っている話だ。
…とここまで俺が行商のヘリーさんやマリ姉に教えられたことを確認したところで、現状の話だ。
元々〈楔の宮・第6層〉の〈迷路〉フィールドの変遷周期は、〈第6層・迷路〉の変遷が初めて確認されてから数百年、およそ一ヶ月前後というのが知られていた。
そして〈楔の宮・第6層〉はつい先日まで、「〈楔の絆〉壊滅事件」を受けて数ヶ月封鎖されていた。
つまり今の〈楔の宮・第6層〉は変遷後手付かずの状態であり、もしかすると数ヶ月分の貴重なアイテムやアーティファクトが眠っている可能性もあるのだ。
これまで運悪く変遷後の探索に遅れてしまっていたパーティーなども、今ならスタートは全員一緒。
(レアアイテムやアーティファクトが、今なら選り取り見取り…ってか?)
そりゃ、ダンジョンになだれ込んで行くのも「然もありなん」と言ったところ。
しかし…ここの〈迷路〉フィールドは〈第6層〉と他のダンジョンに比べて比較的浅い層だが、〈楔の宮〉は異界系ダンジョンであることを忘れてはならない。
あらゆるフィールドを内包する異界系ダンジョンの〈迷路〉フィールドは、系統が統一されたダンジョンの〈迷路〉フィールドと異なり交雑としている。
そのためあらゆる準備が重要となり、準備不足の代償は命となる。
そんな〈楔の宮・第6層〉〈迷路〉フィールドに、先行した探索者達に遅れること1日。
「おっ、揃ってるな。準備は万端か?」
「「「応!」」」
「ああ。」
「ええ。」
「ん。」
「はい。」
ビルダーさん率いる〈絶対正義の力〉4人と俺たち〈白の大樹〉4人、合計8人の連合で挑む。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
「グギャギャ~ッ…ギャ?」
ズバッ!
無謀にも俺たち8人の連合に単独で襲いかかって来たゴブリンを、一瞬見せた隙にビルダーさんが大斧で両断する。
ダンジョン外の魔物と異なり、人を見たら襲わずにはいられないダンジョンの魔物に同情を禁じ得ない光景だった。
「…なあ、なんかゴブ共の動きが鈍くねぇか?」
そう言うのは〈絶対正義の力〉の斥候、「卑怯者」のハッチさん。
罠に待ち伏せに毒…とあらゆる手を使って成果を出すことへの嫉妬を含んだ侮蔑のアダ名だが、そんなアダ名を名乗った本人は「おれたちゃにとって『卑怯』は褒め言葉なんだぜぃ?」と誇らしげに笑っていた。
「あ~…、なんか俺をオークかなんかに勘違いしているみたいで…ほらこんな体ですし?」
他にも俺のような体格の冒険者はいるというのに、何故か似たような話は聞かない。
まぁ…「ゴブ共が俺をオークと勘違いするんだぜ!」とは、あまり声高に言いたいことでもないのだろうが。
「あぁ、カシラと似た体質なんだな。」
使い込まれた革鎧にショートソードと標準的な装備の「草臥れ」ことウッドさんが、俺にとって割と重大なことを呟いた。
「ビルダーの場合オークも逃げ出すことがあるだろう?
きっと中身はオーガに違いね」
ゴッ!
「ェブフッ!?」
ウッドさんの呟きに反応してビルダーさんの制裁を食らったのは、「鉄球制裁」ヘルトゥスさん。
元教会戦士で、武器は棘付き鉄球鎚だ。
大斧に暗器に剣に鎚、この近接寄りの物理一辺倒パーティーが〈絶対正義の力〉だ。
ダンジョンのある街の代表にもなるベテランパーティーの構成を見て、魔法職が二人もいる俺たちの異様さを再認識する。
(前衛職がもう一人欲しくなるなぁ…。)
アデリナが加入する前はニーニャにマリ姉を任せることで何とかなってはいたが、アデリナの加入で〈白の大樹〉はパーティーバランスが悪くなっている。
俺とニーニャで前衛をこなせはするが、ニーニャは斥候であり完全な前衛は俺一人なのだ。
(かといってヘタな野郎は勘弁だしなぁ…。)
勧誘が酷いマリ姉たち3人だが、偶に前衛として〈白の大樹〉への加入を希望する奴もいる。
しかしそういう奴も魂胆はマリ姉たちを勧誘する奴らと変わりはしなかった。
むしろ内側に入り込んで隙を見て奪おうとするあたり、より質が悪い。
(どっかにソロの女戦士でも落ちてないか?)
俺はその辺を半ば冗談で見渡すも、さすがのダンジョンでも人が落ちていることなど無かった。
街はまさに、大探索時代!
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