表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/218

140 解禁直後のテンションって異常

ランキング総合[年間]入り記念!!

※作者のテンションも異常

 ヒューバートの帰還と〈悪魔〉の使役。

 それは冒険者ギルドには確かに重要な出来事なのだろう。


 しかしギルドに属する冒険者達には、そんなことよりもっと関心を向けることがある。

 …まぁ、全くの無関係というわけではないが、今この街(〈ラビリンス〉)で活動する探索者の関心事。

 そう…、“ダンジョンの解放”である。


 〈悪魔〉の異常発生により封鎖されたダンジョン〈第6層〉以降だが、封鎖された理由の〈悪魔〉がテイムされるというまさかの事態。

 しかしダンジョンから異常発生した〈悪魔〉は除かれたわけで、いつまでもダンジョンを封鎖していても誰も得をしない。


 最近は回復していっているように思えるがギルドはこれ以上冒険者達の機嫌を損ねるわけにもいかず、それを分かっている気の早い一部の冒険者なんかは6層以降の解禁を「今か?…今か?」とソワソワしている。


カタン、トコトコ…


 そして、そんな様子を見せる冒険者達の期待に応えるかのように、ギルド職員がカウンター向こうから出てきてギルド掲示板に向かう。

 もしこれであの職員が手に持つ羊皮紙の内容が「ダンジョン解禁のお知らせ」でなかったら…。


シン…


 先ほどまでの騒つきは鳴りを潜め、ギルド内に緊張が漂う。

 しかし、そんな俺の心配は必要なかったようだ。


ゴクリッ…


「ギルド広報です!

 本日より『ダンジョンの封鎖解除』、ダンジョン第6層以降の探索を解禁します!!」


 誰かの唾を呑み込む音が聞こえそうな静けさの中、ギルド職員が張り上げた声で羊皮紙の内容を読み上げる。


「う…」


「「「「「ウォオオオッ!!」」」」」


 期待した朗報に、ギルド内が冒険者達の歓喜の咆哮で満つ。

 ドラゴンにも引けを取らないのではないかと思わされるそれは、空気を震わし…ともすればギルドが弾け跳んでしまう光景を幻視した。


「お前ら、装備は持ってるな!」


「「「「「応!」」」」」


「良しっ、〈丸太戦士隊(ログス・ファイターズ)〉行くぞ!」


 と、全員がメイスを装備した男6人のパーティーがギルドを出て行ったを皮切りに、


「っ、〈白き片翼(ホワイト・ウィング)〉も行くぞ!

 奴らに遅れを取るな!」


「お前らだけに任せられるかよ?

 〈守護の誇り(ナイト・ハート)〉も行くぜ!」


「お宝は全部〈強欲の(ファフニール)眷属(・ファミリー)〉のモンだ!

 そうだな?お前ら!」

「「「「ブルァアア!!」」」」


 次々にギルドを後にする冒険者パーティー。

 最初のパーティーのように一部はしっかりと装備を整えていたが、大半のパーティーは「ダンジョン解禁」の報せを受けての勢い任せでのダンジョンアタックだ。


(あの中でどれだけのパーティーが無事に戻って来るのやら…。)


 俺たちを含むギルドに取り残されたパーティーのメンバー達は、ほぼ全員がそんな“呆れ”の雰囲気を纏っていたのであった。


ゴツ、ゴツ、


「よぉ、ラストとラストの女たち。」


 そんな時、重い足音をさせながら俺に声をかけてきたのは〈絶対正義(パワー・オブ・)の力(ジャスティス)〉リーダーのビルダーさんだった。


 …ただ、その言い方は止めて欲しい。

 身内パーティーなのは間違っていないが、なんかこう…イメージが良くない。


「…代表パーティーは高見の見物か?」 


 準備万端で真っ先にダンジョンに突入しそうな〈絶対正義の力〉が残っていたことを意外に思い、ちょっとした仕返しを兼ねてそう訊ねる。


「いや何…ちょいと新顔に、「ダンジョンの歩き方」ってのを教えてやろうと思ってな?」


 それはビルダーさんによる、〈絶対正義の力〉と〈白の大樹〉の合同探索の誘いだった。


「…良いのか?」


 現状このギルド一番のパーティーと合同で探索が出来るなど、分かる者には非常に価値のある体験だ。

 しかし反対に〈絶対正義の力〉に俺たちと組む利点(メリット)は少なく、思わず確認してしまう。


「ああ、勿論さ。

 …俺らが数ヶ月どうしようもなかった問題を、あっさり片付けやがって報酬無しってのはナシだ。」

 

 …確かになり行きでとは言え、俺たちがギルド存続の危機を救った形になる…のか?

 少なくともビルダーさんはそう思っているようで、こうして身銭を切ろうとしているわけだ。


(あぁ…、カッケェなぁ。)


 初対面時こそ絡んできたという印象だったが、脳筋(考え無し)な見た目とは裏腹にビルダーさんは確かなベテラン冒険者だった。

 見た目はまさにイケメン騎士のレオン率いる《光の騎士団》に、《絶対正義の力》が対抗できていたのもビルダーさんの人徳によるものだったのだろう。 


「………。」

コクリ、コクッ、コックリ


 ビルダーさんの言葉に俺が仲間を見渡すと、マリ姉・ニーニャ・アデリナ全員が頷く。

 …頷き方一つにもそれぞれ違いがあって面白い、と感じたのは関係のない話だったりする。


「それなら是非とも!」


 パーティーメンバーの了承も得たことで、俺はビルダーさんに右手を差し出す。


「応、よろしく頼むぜ。」


ガシィ…!


 固く結ばれる右手同士。

 ここに〈白の大樹〉と〈絶対正義の力〉の連合(レイド)パーティーが結成されたのであった。


「んじゃ早速レイドの条件を詰めようぜ?」


 そう言って笑みを浮かべたビルダーさんだったが、その笑みはまさに「カモが詐欺に引っ掛かった」と言いたげな悪どいものだった。

※尚、提示された条件は〈白の大樹〉にかなり有利なものだった模様



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ