137 さあ、語り合おう
※ネタバレ!!
ラストが独占欲を発揮するだけの回
今に限っては余計なことまで思い出してしまったが、ここ最近で積んだ経験上、今マリ姉たちに絡んでいる男3人は修練場で土舐めコースだ。
というのも、あの妙に自信満々な奴らにはどんなに正論や現実をぶつけたところで、自分たちに都合の良いように解釈するか、そもそもこちらの声が聞こえていない。
話が通じない野獣であるのならば、身体に痛みを与えて躾るしかないだろう?
まぁ…俺的にはそっちの方が手っ取り早いし、気分がスカッとする。
それにこれをやると、しばらくは害獣が寄って来なくなるので一挙三得なのだ。
「おい、お前ら」
「おいおい、お前ら。
こんなトコで犯罪者との繋がりを出すたぁ…、随分大胆じゃないか…えぇ?」
俺がマリ姉たちに絡む3人に威嚇しようとしたところ、俺以上の威圧が込められたドス声が奴らに浴びせられる。
「「「ヒィッ!?」」」
野獣らしく危機には敏感なのか、恐怖で縮み上がる野郎三人組。
(………、まぁ良いか。)
縮こまった3人にゆったりと歩み寄る蛮族スタイルの巨漢を見て、俺は俺が手を下す以上の制裁を予想して引き下がることにする。
「あっラス君、終わった?」
「ん。」
「ラストさん、お疲れ様です。」
ジリジリと壁際に追い詰められる野郎三人組を尻目に、俺が来たことに気付いたマリ姉たちが輪に迎え入れてくれる。
「大丈夫だったか?」
「えぇ、見ての通り。」
俺の毎度の心配に、呆れを滲ませたマリ姉が代表して応えた。
今回は始めから見ていたので大丈夫なのは分かっていたし、そうで無くともあの程度の野郎に怯えるほどマリ姉たちは“か弱く”ない。
「「「ヒェエエェッ!!」」」
野郎の情けない悲鳴が、三人分上がる。
どうやらもう制裁は完了したらしい。
「…ちょっくら行って来る。」
自分達でどうとでも出来たとはいえ、結果的に助けられた以上一言挨拶はすべきだろう。
それに思いの外制裁があっさり済んだことに不満を抱え、俺はマリ姉たちに断りを入れて座ったばかりの席を立ったのだった。
「よう、…って邪魔したみたいだな。」
自分に近付いて来た俺に気付き軽く手を上げて挨拶してきた巨漢…ビルダーさんだったが、俺の顔を見るとバツが悪そうに顳顬を掻く。
「…まぁ、仲間が絡まれたんで…。」
俺は態度を取り繕うこともせず、チクリと嫌味を吐いた。
「あー…、済まねぇ。」
蛮族な見た目とは裏腹に、俺の嫌味に素直に謝罪するビルダーさん。
こんなことをしていたら《絶対正義の力》の元クラン員に非難を浴びそうなものだが、「〈光の騎士団〉逃亡事件」での一幕の再来にはならなかった。
というのも、《光の騎士団》の分解に伴い《絶対正義の力》も解散されており、ギルドの正常化に貢献したパーティーとしてビルダーさん自身が俺たちに気安く接するように言ってきたのだ。
俺としてはわき腹を斬られて寝て起きたら全部終わっていたという認識なのだが、まさにそのおかげだと言われたら強く拒否する理由も無い。
というわけで街…どころか冒険者パーティーとしても新参の〈白の大樹〉は現在、〈迷宮都市・ラビリンス〉における現代表パーティーと同格という立場にあるのだ。
「…いや、あまり俺が好き勝手しても不満が溜まるだけだからな…。」
但し…やはりというか当然“格の違い”というものがあり、ビルダーさんを立てた方が面倒が少ないのが実状だ。
「…悪いな、今度訓練でも探索にでも呼んでくれ。」
それはありがたい、俺としては特に訓練が。
元 Aランクのオットーさんに手解きを受けたとしても、ベテランとの訓練はそれはそれで学ぶことが多いのだ。
マリ姉たちにはあまり関係の無い話だが、幸いなことにマリ姉たちは俺の良いようにやらせてくれる。
…本当に俺には勿体無いくらいの良い女たちだ。
(だからといって、誰かにやるつもりなんか毛頭無いがな!!)
こうして、多少のトラブルがありつつも、結局はいつもと同じような一日が過ぎて行く。
かに思われた。
ギィイ…
蝶番を軋ませ開くギルドのドア。
……ズリッ…コッ、……ズリッ…コッ
何かを引き摺るような音をさせながら、冒険者ギルドに誰かが入って来る。
(ああ…、外専の奴か。)
ダンジョンに馴染むと忘れがちになるが、ダンジョン外の魔物はドロップ品を残して消えたりなどしない。
…大方、狩りが長引くかなんかの理由で、獲物を解体せずに持ち込みでもしたのだろう。
俺だけでなく誰もがそう思い、入って来た人物から興味を失う。
ズリッ…コッ、ズリッ…
「はいはい、解体が必要ならまず裏の解体場に持って行って…」
入って来た人物にやる気無さげに対応していた、受付嬢の言葉が途切れる。
ザワザワ、シン…
何らかの異常を察し、静まりかえるギルド内にその報告は意図せず響き渡る。
「〈荷運び〉ヒューバート、ダンジョンより只今帰還しました。」
それは当時の状況から、生存が絶望視され捜索すら行われなかった「〈楔の絆〉壊滅事件」の行方不明者…ヒューバートが自ら行った、帰還予定から数ヶ月遅れての帰還報告だった。
OBACYAN「なんや、アンタ生きとったんか。」
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