132 この手記を読んでいる時─ ~過去の俺へ~
ボソッ(“マカ”の呪い…。)
プロットに合流すると筆が進みますね…。
結論から言おう。
俺たちは生きている、むしろ余裕まである。
…まぁ、さすがに疲労感が半端じゃないが。
コトが無かったわけがないので“無事”とは言わない。(逆に、ずっとコトをしていたと言える)
…そういうわけで、“サキュバスの性”に対し、俺は謎の大勝利を収めた。
「そんな…、まさか…。」
比喩抜きに“腹いっぱい”となったアデリナが、気だるくしている俺を見て唖然としている。
アデリナの“得体を知れないモノを見る目”で見られた俺は、心にダメージを…受けなかった。
何故か?
自分でも自分の精力にドン引きしているからだ。
マリ姉たちとシていた時は「俺、絶倫だな~」と軽く考えていたが、いくら何でも異常だということを実感させられた。
…具体的にはアデリナの、少しぽっこりと膨れた下腹のことだ。
アデリナのサキュバスの性が満足するまで何回出したかは不明だが、相当な量なのは確かだ。
これを「絶倫」の一言で片付けるのは無理がある。
(う~ん………ま、後だな。)
少し考えて、当然原因は分からず思考を放り投げる。
幸い(?)性欲はセーブ出来ているし、緊急性は感じない。
(それよりもアデリナだ。)
呪いにより〈サキュバス〉に転じたアデリナだが、アデリナのサキュバスの性は俺が治められることが証明された。
しかし俺はアデリナに付きっきりというわけにはいかない。
アデリナの〈魔化〉で有耶無耶になったが、そもそもの目的がアデリナの勧誘だ。
「アデリナ…って、えぇ!?」
部屋の惨状に頭を抱えるアデリナに勧誘の話をしようと目を向けた俺は、アデリナの姿に驚いた。
「ラストさん?なんで…って、えぇ!?」
どうやらアデリナも自身の変化に気が付いたらしい。
「「元に戻ってる!?」」
ハモる俺とアデリナ。
…そう。
呪いにより魔物へと転じたアデリナだったが、今のアデリナからは羽と尾が消え失せていたのだ。
「…呪いが解けた、のか?」
もしそうなら喜ばしいが、アデリナの勧誘という点を考えると複雑だ…。
「………。」
目を閉じ、自身に意識を集中するアデリナ。
「…いえ、呪いは健在のようです。」
目を開けたアデリナは、僅かに肩を落としてそう告げた。
「…本来の〈悪魔〉は実体が無いと言われています。
それが事実だとすると、呪いによる変化が一時的に抑えられているのではないでしょうか?」
……………、なるほど?
つまり、今は満足したから引っ込んだだけだと。
となるとサキュバスの性を継続的に満足させられるのであれば、アデリナは表面上はこれまで通りに暮らしていける…と。
(…いや、無理じゃね?)
既に呪いが発動し解呪されたわけではない以上、サキュバス化の度に密かにサキュバスの性を満足させるのは難しいだろう。
…現状、俺以外には。
しかし俺からこれをアデリナに告げるのは、弱味につけこむを通り越して脅迫だろう。
あくまでも俺は、互いに納得づくでアデリナを〈白の大樹〉に迎えたいのだ。
「…あの、ラストさん…?」
アデリナが平穏に人として生きていくには俺の協力が不可欠という結論に俺が至ったところで、アデリナが不安そうに俺を呼ぶ。
「昨晩私が言ったこと、なのですが…」
「昨晩」…というと、サキュバス化したアデリナが連発していた言葉は実に下半身に響いた。
アデリナも自分で言って思い出したのか、羞恥で紅色に肌を染め上げている。
「あのっ、昨晩のことは忘れて下さい!
…あ、いや…その。」
忘れろと言いながらも、何か昨晩のことで言いたげなアデリナ。
その雰囲気に共感を覚え、俺はあることに思い至る。
スッ…
俺は口を開いては閉じてを繰り返すアデリナの前に片膝をつき、アデリナの顔を見つめる。
(確かこんな感じだったか?)
思い出すのは古の勇者の物語で、魔王を倒した勇者が聖女に思いを告げるシーン。
「アデリナ。
これからの人生、俺と伴に歩いていかないか?」
俺がアデリナに対して行ったのは、つまるところ求婚だ。
恋愛という段階をすっ飛ばしてしまってはいるが、俺は昨晩アデリナとコトに及ぶ際、アデリナに「責任を取る」と宣言しているのだ。
「ヤッたんだから結婚してね!」は行き遅れた女の常套手段として男が警戒している状況なのだが、今の俺とアデリナの状況に非常に似通っている。
これが俺の勘違いならとんだ赤っ恥だが、アデリナが何を“言いたいけど言えない”のかを考えるとこうなった。
「っ…、はい…!
不束者ですがよろしくお願いします。」
物語と異なり問いかけという形で“逃げ”となったプロポーズだったが、アデリナには無事了承の返事を貰えた。
アデリナのパーティーへの勧誘に頭を悩ませていたかと思えば、アデリナとパーティーメンバーを優に越えた関係になった瞬間だった。
(…マリ姉にリタにアデリナ。)
俺は目尻に涙を湛えるアデリナを腕の中に抱きながら、俺と婚約関係にある女たちを思い浮かべた。
明確な婚約関係だけでも3人、そこに婚約予定(?)のニーニャを加えて4人。
しがない農家の三男坊の俺、冒険者になったらハーレムが出来ていた。
…なんて、村にいた頃の俺には、とてもではないが想像がつかないことだろう?
タイトル回収!(「サキュバス」がゲシュ崩寸前…)
※尚、ラストとアデリナはありのままの姿
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




