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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
序章  農家の三男、家を出る

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12 街初日終了

ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます!

※最終回ではありません。

 ガンキンと名乗った岩窟人(ドワーフ)は、俺の渡した鍬を見て言う。


「刃床は総鉄製、柄も良い木材が使われてる。

 手入れも丁寧にされていたのか、劣化というほどの劣化も無し。

 問題と言えば柄がちと(なげ)ぇことだが…まあ、切ってヤスリがけすれば問題にならんだろ。」


 リタ同様に槍と勘違いしていたガンキンだが、金物には違いないのでこうして査定をしている。

 まだ使い始めて3年と、農具としては中古というほど使っていない俺の鍬だが、こうして街の職人に高評価を得るほどには良い品だったらしい。


(2万ゴールドしただけはあったのか…。)


 正直な話「“鉄製品が村に不足がち”と理由を付けて割高にされたのでは」と、親父と村の鍛冶屋を疑っていたが、相応の価値はあったらしい。

 恐らく本来であれば、俺が家を出た後ガンキンが言ったように、柄を短くして使う心づもりだったのだろう。

 それをこうして持ち出せたのは、本当に運が良かった。


「それで、いくらくらいになるんだ?」


 感傷に浸る俺に代わり、ギルマスが査定結果をガンキンに訊ねた。

 ギルマスに俺の鍬に対する思い入れなど無いのは承知しているが、もうちょっと情緒を考えて欲しい。


「これなら村へ行く行商が喜んで買っていくだろうな。

 ここで15,000ゴールドで売るとして、12,000ゴールドで買い取るぜ?」


 元の価値より銀貨8枚分(8,000ゴールド)も下がっているが、職人が他の職人の作品の価値を下げるような真似はしないと思うので、これが妥当な買い取り値になるのだろう。

 幸い購入予定の「粗鉄の槍」の代金1万ゴールドに加えて、銀貨2枚が余る大健闘だ。


「分かった、それで売ろう。」


 去らば3年の畑仕事を共にした相“棒”よ、お前のおかげで俺は冒険者(新しい道)で歩んで行ける。


「おう、毎度。

 せっかくならついでに胸当てでもどうだ?」


 釣り(?)である金を受け取ろうとしたところ、ガンキンが防具を勧めてきた。


[オーク革の胸当て 4,000ゴールド]


 またお前(オーク)か!

 しかし最低限急所(心臓)を守れる程度の胸当てでさえ、買ってしまうと今日の宿代が払えなくなってしまう。


「なんでい、お前さん手持ちが1,000ゴールドも無いんかい!?」


 その旨を伝え断ったところ、ガンキンは俺の手持ちの少なさに驚く。


「いや、手持ちは銀貨2枚と少しだ。」


 「銀貨1枚の差がどうした?」と言ったところだが、ガンキンの勘違いを正しておく。


「なら一泊分は残んだろ?

 まあ…晩飯は我慢することになるだろうが、胸当てくらいは買っておいた方が得だ。」


「いや、だから一泊分すら残らないんだって。」


 一泊分の宿代と自分の生命を天秤にかけるなら、俺は銀貨の1枚や2枚ケチりたくは無い。

 しかし今はその銀貨1枚ですら余裕が無いのだ。


「ああ、お前さんは村出身だったな…。

 良いか?

 まずお前さんの手持ちは2,000ゴールドだ。」


 勘違いを訂正した上で、俺に説明を始めるガンキン。


「お前さんの鍬が12,000ゴールド。

 お前さんの手持ちは14,000ゴールドだ。」


 それで1万ゴールドの槍と4,000ゴールドの胸当てを買ったらスッカラカンだろ。


「んで槍が9,000ゴールド、胸当てが3,600ゴールド。

 合わせて12,600ゴールド。

 余りは1,400ゴールド、銀貨1枚と銅貨4枚だ。」


「ちょっと待て、槍と胸当ての値段が違うぞ!」


 店を開いて(商人の真似事をして)いても所詮は職人、売り物の値段すら把握できていないようだ。


「あん?

 …おいオットー、お前が連れてきたのに違うのか?」


 俺の内心で馬鹿にした指摘に少し考え、何故かギルマスに尋ねたガンキン。


「いや、俺はちゃんと説明したぜ?」


「…あ。」


 ギルマスの説明という言葉に、何故職人ギルド直営店にきたのかを思い出した。


「初回の割引…。」


「ああ。

 ウチではチュートリアルの冒険者に限り、初回の買い物は1割引きになってんだ。」


 槍は1万から1割引きで9,000、胸当ては4,000から1割引きで3,600…ガンキンの言う通り宿代と少しが釣りになる。

 本来の馬鹿は俺だったようだ。


「理解できたようで何よりだ。

 …で、胸当てはどうする?」


 少しニヤついて俺に訊ねるガンキン。

 そんなのもう一択だろうに。


「買う…、買わせて貰うよ。」


「毎度ぉ!」


 職人だとしても店を開いている時点で立派な商人だった。



 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。



 粗鉄の槍と胸当てを抱え店を出た俺とギルマス。


「んじゃ、次回はいよいよ依頼(クエスト)をこなしていくぞ!

 しっかり休めよ!」


 そう言ってギルドに戻って行くギルマスの背を見送り、俺は〈寝るだけの宿〉の扉を開けた。

 

「いらっしゃい、ここは〈寝るだけの宿〉だよ。

 一晩銀貨1枚、食事は一回銅貨5枚で出してやるさね。」 


 〈寝るだけの宿〉に入ると、宿の受付に居た婆さんが気だるそうに言ってきた。


「とりあえず一晩頼む。

 食事は『グギュルル~』…晩の分を頼む。」


 食事は要らないと言おうとしたが、今朝から何も食べていない腹が反対した。


「フッ…、1,500ゴールド出しな。」


 鼻で嗤った宿の婆さんに銀貨1枚と銅貨5枚を渡す。

 これで残りは240ゴールド。

 ギルマスは次回と言っていたが、明日依頼を受けなければ宿代が払えない。

 

(しっかり休めって、俺が明日行くってわかって言ってたな?)


 あれだけ金が無い金が無いと言っていれば、俺の懐事情を把握されるのはさもありなん。

 

「毎度、部屋は二階の一番手前に入りな。

 飯は今食べるかい?」


「いや、一回部屋に行く。」


「そうかい。

 晩飯は早めに来な、火を落としたら用意しないからね。」


 「その場合金は返せないよ」と言い、宿の婆さんは台帳に炭棒を走らせた。

 


 こうして、部屋に荷物を置き晩飯を食べた俺は、濃すぎた街初日を振り返る間もなく、薄いシーツの硬いベッドで睡魔に沈んだのだった。

第3話から10話(約20,000文字)に渡り、やっと1日進みました。

基本的な設定はある程度出せたので、次回からもう少し話の流れが良くなるかもです。


また本日12時00分に登場人物紹介を投稿します。

登場人物達のバックストーリーが気になる方は必見です。(但しネタバレっぽいのもあるので嫌な方は自己責任でお読み下さい)



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

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