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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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119 トラブル? ~〈光の騎士団〉~

「がっ、ハッ…!?」


ずしゃっ


 〈第二師団・一番隊〉最後のメンバーが、右肩から袈裟斬りにされて崩れ落ちる。


ギィンッ!


「くっ…、なんで俺たちを切るんですか!?」


 一人残された半端騎士が何とかニーニャの一撃を受けながら、乱入者である《光の騎士団》団長に必死の形相で問いかける。


「黙れ下郎、《光の騎士団》はトレイターに容赦しない。」


 しかし問いかけられた当人は同クランのメンバーにも関わらず、血濡れた直剣の切先を半端騎士に向ける。


「そんな!?

 俺たちはレオンさんの役に立つために─」


 そのあまりにも非情な態度を向けられて尚、自らのクランリーダーに言い募ろうとする半端騎士。


ズブッ…!


「ゴフッ…!?」


 だがその訴えは、一瞬で間合いを詰めたレオンに喉を一突きにされたことで途絶える。


スパッ、ヒュッ…!


 レオンはそのまま剣を振り上げてトドメを刺すと、剣を振って血を払う。


ドサッ…


 数拍遅れで倒れる半端騎士の死体。


「…悪はここに滅びた。」


キンッ


 何らかと呟き剣を納めるその姿は、人を斬ったにも関わらず嫌に芝居掛かって見えたのだった。





 … … … … … … …。



 … … … …。



 …。


 



「それで、…君たちは何故ここに?」


 トレイターと化した5人の死体がダンジョンの床に溶けるように消えた後、レオンが俺…というよりマリ姉とニーニャの方を見て訊ねてきた。

 ダンジョンに探索者がいる理由など分かり易いものだが、レオンは本気で分かっていなさそうな顔をしている。


「何故って狩り以外の理由が必要か?」


 俺は然り気無くレオンの視線を遮りつつ、あえて突き放すように答える。

 《光の騎士団》メンバーに襲われた身として、そのリーダーであるレオンと馴れ合うつもりは無い。


(だから、さっさとそこを退いてくれ。)


 俺の真正面に立つレオンの後ろを見れば、レオンのパーティーメンバー6人が通路に横に広がって各々待機している。

 一見無造作に過ごしているように見える彼らだが、そこは流石 Cランクパーティーのメンバー、警戒を怠っている者はいない。


「君たちにはこの先は危険だ。

 メンバーも足りないし、回復役(ヒーラー)も雇っていない。」


(面倒だな…。)


 やけに食い下がるレオンを振り切って先に行こうかと思ったが、リーダーがこれではメンバーも止めに入って来るに違いない。

 というより、レオンのパーティーメンバーらはそれ(強行突破)を見越した配置についているのだろう。


 自分たちでどうにか出来たとはいえ救援に入った相手に穿ち過ぎと思われるかも知れないが、証拠(死体)が消えてしまうダンジョンでは“誤解”を防ぐためになるべく不干渉がマナーと聞いた。


 道を塞ぐのは勿論のこと、レオンは俺たちに干渉し過ぎである。

 仮にも探索者の二大巨頭の片割れが、ダンジョン攻略のマナーを知らないなどとは言わせない。


 つまり何が言いたいかというと、怪しいのだ。


「」


「おっと誤解はしないで欲しい。」


 俺…というよりニーニャが警戒を一層強めたとみたレオンが、俺が言葉を発する前に弁明を始める。


「我々も礼儀を知らないわけではない。

 しかし良く考えてくれ。

 この先(〈第5層〉)のは〈第6層〉に繋がっている。」


 〈第5層〉が〈第6層〉に繋がっているのは当たり前だ。

 いくら冒険者に無学な者が多いとは言っても、数を数えられないと思うのは侮り過ぎだろう。


「はぁ…、良いかい?良く聞くんだ。」


 白けた俺たちを見て、レオンはまたあの奇妙な態度で言い聞かせてくる。


「〈第6層〉は〈下級悪魔(レッサーデーモン)〉が出現した階層だ。

 その隣の階層の危険性が高いことくらい分からないのか?」


 だから〈光の騎士団〉が自主的に〈第5層〉を封鎖している、とでも言いたいのか?

 

 俺も別に好き好んで危険に突っ込もうとは思わない。

 しかしダンジョンの攻略を進める以上、ある程度の危険は承知の上だ。


 そもそもダンジョンに来た目的の一つが修行のため、パーティーメンバー(マリ姉とニーニャ)が止めようとしない限りやれるところまで行くつもりだったのだ。

 それを他所のパーティーにとやかく言われる筋合いなど無い。

 

(…それに“これ”の手前もあるしな。)


 俺は内心でため息を吐きながら、一瞬主張するように震えたように思えた主武器(〈巨像魔猪の骨槍〉)を握り直す。


「君たちには、我々が無駄な犠牲を出さないよう骨を折っていることを理解して貰いたい。」


 誰もそんなことは頼んでいない、という言葉は呑み込む。

 …しかし言葉の綾とは分かってはいるが、犠牲を出さないようにと言いながら「骨を折っている」とは中々の皮肉ではないだろうか?


「俺たちにも“都合”ってやつがあるんだ。」


 俺は都合という言葉を強調して、暗にそれが押し付けであると伝える。


「っ!君は」

「だから、なあ…どうしたらその先(〈第5層〉)に行ける?」


 互いに都合の押し付け合いでは、いずれ俺たちが不利になる。

 だからこそ、レオンが俺の指摘に動揺した隙に妥協を引き出す。


「」

「勿論「クランに所属しろ」は無しだ。」


 向こうの都合が「人命の優先」という道義を掲げている以上、そんな個人的な条件をつけることは無いだろうが、一応釘を刺しておく。


「………。」


(…まさか本当にそう言うつもりだったのか?)


 俺がそう疑ってしまうほど長考するレオン。


「………良し。」


 そろそろ欠伸が出そうになってきた頃、ようやく考えが纏まったらしい。


「回復役…。

 パーティーに回復役がいれば、《光の騎士団》は君たちが〈第5層〉を探索することを認める。」


「…決まりだな。」


 ダンジョンを探索するのに《光の騎士団》の許可など必要ない。

 しかし、それを突っ込んで話を混ぜ返す必要も無い。


 俺たちは売れば小遣いになるというトレイターたちのギルドカードを受け取り、この日のダンジョン攻略を引き上げたのだった。
























「ひひっ、良いモン撮れたぜ。

 これでアイツらは終わりだぁ。」

〈光の騎士団〉編があるということは…?



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