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118 朱に交われば

長いものにはローリング

 待ち伏せされているという事実に動揺してしまった俺だったが、一旦冷静になって考えてみると、こうして立ち止まっている限りすぐに戦闘になるわけでは無いことに気付く。

 しかし、それと同時に厄介事であることには変わり無いということにも気付いてしまう。


「────?」

「──。」

「────!」

「──…。」


「ご主人。」


 耳をピクリと動かしたニーニャが、マリ姉が魔法で感知したパーティーの接近を知らせてくる。


「…ラス君ごめん。

 向こうにも魔法使い(キャスター)がいるみたい。」


 向こうを警戒しながらも、マリ姉が(リーダー)に謝ってきた。


「気にするな。

 …でもなんで魔法使いがいるって?」


 なんでも、マリ姉の使った『探索』の魔法はその原理上、魔力に親しんだモノほど違和感を覚えるものらしい。

 そしてダンジョン内という条件を加えると「魔力に親しんだ者」には、魔法使い(元から魔力に親しい)高ランク冒険者(スキル熟練者)かの二者が当てはまるとのこと。


 尚、この場合の高ランク冒険者というのが A ランク並みであるらしく、A ランク冒険者どころか Cランクパーティーまでしかいない〈ラビリンス〉では、自然と魔法使いに絞られるというわけだ。


 マリ姉を宥めつつ、その場で警戒すること暫し。


…チャガチャ、ガチャン


「こちらは《光の騎士団》〈第二師団・一番隊〉だ!

 そちらの所属を明らかにせよ!」


 マリ姉が感知した通りの5人組、その先頭に立った金属の胴鎧の若い男が高圧的に誰何してきた。


「…俺たちは冒険者パーティー〈白の大樹〉だ。」


 所属と言われても俺たちはクランには関係がないため、少し悩んでパーティー名を名乗る。


 というかこの男は自分のクランメンバーを把握していないのだろうか?

 小難しい口上と胴鎧だけが金属鎧という格好が相まって、中途半端な騎士といった印象が拭えない。


「何…?

 そうか、お前たちが我々の秩序を乱す奴らか。」


 半端騎士が何やら面倒臭いことを呟く。


「いや、俺たちはこの先(〈第5層〉)に用があるだけなんだが…?」


 ここの探索者は《光の騎士団》か《絶対正義の力》のどちらかのクランに所属しているとは聞いたが、クランに属さなくてはならないというルールは無い。

 秩序云々言うのであればむしろ、国公認の組織である冒険者ギルドの依頼を奪うクランの方が悪者と言える。


 しかし当のクランメンバーにその自覚がある筈も無く。


シャキンッ


「〈第5層〉では現在《光の騎士団》が活動中だ!

 団員でもないお前たちは即刻退去して貰おう!」


 と、腰の剣を抜いて宣う。


 付近に魔物がいないにも関わらずに抜剣。

 重大な探索者のマナー違反であり、明確な敵対行為である。


「ちょっ、リーダー!?」

「カミルさん、それはマズイっすよ!?」


 さすがに抜剣は不味いという常識はあったメンバーが止めに入ったが、状況に酔った半端騎士は更にとんでもないことを言う。


「奴らはトレイターとして俺たちで処分する!

 これで第一師団に入れるぞ!」


 自分の欲の為に他者を害する。

 皮肉にもその考えはトレイターのものだった。


 

 半端騎士は救いようが無いが、彼らはトレイターを駆逐したクランのメンバーだ。

 仮にリーダーであっても、正しく“対処”してくれるだろう。

 

「そりゃ本当にトレイターだったらの話だろう?」

「…じゃあ本当にすれば良いんじゃないか?」


 しかしその考えも甘かったようだ。


「「「「………。」」」」


 無言で顔を見合わせる4人。

 《光の騎士団》第一師団入りというのは《光の騎士団》メンバーにとっては、道を踏み外すことを考えるほどに魅力的らしい。


コクリ、シャキンッ


 そして彼らは頷くと、リーダーと同様にそれぞれの武器を構えた。


 3対5。

 こちらが向こうより2人も少なく、俺たちを全滅させ易いと見たのだろう。

 もしかしたら誰かを逃したところで、どうにでも出来るという楽観もあるのだろう。


「…今なら質の悪い冗談で済むぞ。」


 俺は盾を構えながら、そう警告する。

 しかし、トレイターと化した半端騎士達には通じなかったようだ。


「5対3で勝てるとでも?」

「オーク野郎が格好つけやがって!」


 ロープに長杖を構えた貴族然とした優男と、頭に草を被り顔を土塗れにした男が俺にボウガンを向けて言い返す。

 リーダーの半端騎士含む三人は、ニヤニヤと厭らしく嗤う半端騎士はともかく、リーダーを止めに入った他二人はそれなりにこちらを警戒している。


「コソッ、(ラス君、)」

「コソコソッ(待ってくれ、先に仕掛けさせる。)」


 マリ姉が先制攻撃を提案してきたが、俺たちから仕掛けては相手の主張通りになってしまう。

 ただでさえ人数的な不利があるが、そこは俺を信じて堪えて欲しい。


ピクッ、ピクピクッ


 それに、先ほどからいつでも短剣を抜けるように構えてはいても、音に集中しているニーニャが気になる。


「ポソッ(来る。)」

「はぁああっ!」


 ニーニャが呟くと同時、半端騎士が先陣をきる。


「ニーニャッ、マリ姉っ!」


 俺は二人の名前を呼び、半端騎士を迎撃するべく『盾打撃(シールドバッシュ)』を発動しようと盾を引く。


「貰った!」


 半端騎士の迎撃に動いた俺に、草男がボウガンの引き金に指をかける。


ズッ…!


「がはぁっ…!?」






















 そしてボルトが飛ぶと思われた寸前。

 草男の胸から直剣の刃が生えた。

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