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農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
4章  迷宮都市と越冬

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116 実績解除:祝?ニート

ペースアップと言いつつ、一週間ぶりです。

スマヌ > orz

 初めてダンジョンを探索した日から今日で一週間。

 主な活動の場を〈第三層〉に定めた俺たちは、以前と同様のペースで狩りを行っていた。


ガヤガヤ…


 そして今日も賑やかなギルド内を、隠し切れていない視線を集めながらカウンターに向かう。


「いらっしゃいませ~。

 あ、〈白の大樹〉の皆さんでしたか~。」


 相変わらずピリピリとした空気のギルドだが、メリィさんの担当する受付周りだけは例外だ。

 このギルドの雰囲気に未だに慣れない俺たちが、メリィさんの担当する受付に足を運ぶのは自然なことと言える。

 …隣の受付を担当する受付嬢がこちら(メリィさん)寄りの位置に座っているのは、決して気のせいなどでは無いだろう。


「依頼の完了の確認と素材の売却を頼む。」


ドサッ…


 そんな益体も無いことを考えつつも、口と身体は冒険者となってから繰り返した動作を行う。


「あら~、今日も大量ですね~。」

 

 カウンターに置かれた大量の素材(ドロップ)に、目を丸くするメリィさん。


 ダンジョンの魔物に討伐証明部位は無い。

 何故ならばダンジョンで発生(ポップ)した魔物は、討伐すると同時に霞と化して消えてしまうからだ。

 このことが、ダンジョンの魔物が幻影と言われる理由だ。


 それはさておき。

 討伐された魔物が霧散する際に魔石や素材の一部…そして何故か(ゴールド)が残るのだが、冒険者ギルドではこの際に必ず残存(ドロップ)する魔石が討伐証明部位として扱われている。

 

 死骸の処理に手前が掛からず、入手したものは全て換金可能な素材。

 狩りの効率や荷物の削減など、ダンジョンが稼げるというのにも納得だ。


 実際この一週間で俺たち(〈白の大樹〉)は、〈初心者の森〉に比べて倍近い金を稼いだ。


 しかし問題がある。


「ラス君…」


「依頼空っぽ。」


 報酬の精算を待っている間次の依頼を物色しに行っていた二人が、マリ姉は深刻そうな、ニーニャはしょんぼりとした様子で戻ってきた。


「…そうか。」

 

 その問題というのがまさにこれ(依頼の枯渇)だ。

 

 この街(〈ラビリンス〉)はダンジョンが存在するため、領都並みの大都市である。

 そしてダンジョンから産出する素材を目的として、商人だけでなく錬金術師や鍛冶師が軒を連ねている。


 必要とされる量は素材ごとに異なれど、普通なら依頼が一件も無くなるということは有り得ない筈だ。

 ならば何故こうなっているのかというと、二つのクランの存在が挙げられる。


 というのも─


「皆さん、自分の利益が大事ですから~。」


 というメリィさんの、のんびりとしながらも険を感じる一言に集約される。


 どういうことかを掻い摘んで説明すると、


1 「〈楔の絆〉壊滅事件発生」&トレイターの大量

  出没

2 二つの不祥事に冒険者ギルドが不安視される

3 トレイターを駆逐したパーティーがクランを発足

4 冒険者ギルドを介さない直接依頼が横行

5 二つのクランでダンジョンに関する依頼を独占


 ということらしい。


 つまるところ、


“冒険者ギルドに不安を感じていたところ新たに依頼の預け先ができ、信頼性と依頼料の安さから冒険者ギルドへの依頼が無くなった。”


 というわけである。


 メリィさんが言うには「依頼料がギルドより安い」と言っても、その実態は仲介手数料としてギルドに入る分が引かれただけ。

 依頼によっては、ギルドに依頼するより高くなっているものもあるのだとか。


 今の冒険者ギルドの立場は「ダンジョンへの侵入許可を発行する無駄な組織」というほどにまで堕ちていた。


 しかし、現在までは大したトラブルも無く上手く回ってきたようだが、いずれ上手く回らなくなることは明確だ。

 ギルドが国に納める金を払えず国の調査が行われた場合、ここまで大々的な脱税もないだろう。


 ならばクランを取り締まれば良いと思われるだろうが、〈ラビリンス〉の冒険者はほとんどがどちらかのクランに所属している。

 また、クランを取り締まれたとしても解決とはならない。


 その原因がダンジョン〈第6層〉の“非常に強力な魔物”とやらだ。

 この魔物が現在〈第13層〉まで攻略されているダンジョンの中間以上に居座っているせいで、単純に考えて半分以上の依頼が遂行不可能となっているのだ。


 そして〈楔の宮〉も「ダンジョンは深層になるほど得られるものの価値が高くなる」という例に漏れず、クランにより依頼が独占されている状態でなくとも厳しい現状には大差が無いことだろう。

 まぁ…これに関しては災害のようなもので、誰が悪いとかという話では無いのが唯一の救いだろうか。


「ねぇ、どうする?」


「んぉ?」


 反応のない俺に焦れたマリ姉が、俺に顔を寄せてパーティーの今後の方針を催促してきた。

 俺が考え事をしている内に、どうやらかなりの時間が経っていたらしい。


「う~ん、そうだなぁ…。」


 先ほど二人は「依頼が無い」と言っていたが、間引きの常設依頼は健在である。

 フィールドに比べて発生率は非常に低いが、ダンジョンにもスタンピードは存在するのだ。


 基本的にダンジョンの魔物や資源は、ダンジョンに流れる魔力によって生成されているというのが通説だ。

 そしてダンジョンが扱える魔力はリソースと表現される。


 ダンジョンはリソースにより魔物や資源の生成を行うのだが、この生成には上限が無い。

 このせいで未発見等の理由により、魔物の討伐や資源の採取が行われないダンジョンは溢れてしまうわけだ。


 そして〈楔の宮〉も謎の魔物により半分以上のリソースが消費されていないため、日々スタンピードの危険が高まっているのだ。


 …とか色々と考えてみたものの、結局はやれる依頼があるのだからそれをやるという話だ。

 何だったらリソースが溜まっている分、上層の素材を売るだけでも構わないのだ。


「適当に狩りをしながら常設依頼、か?」


 俺の目的からは外れるが仕方のないことだ。


「あ、すみません。

 しばらく常設依頼は取り下げになります~。」


「…………そうか…。」


 だから“常設”依頼が無くなったのも仕方のないことなのだ。

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