112 予定はあくまでも予定でして…。
等と供述しており
〈迷宮都市・ラビリンス〉に到着した日の晩。
気合いの空回りした俺は、宿で出された晩飯を摂り早々に不貞寝─
「ラス君…。」
「ご主人…。」
出来なかった。
身体を拭き小便をして「さあ、寝よう。」と俺がトイレから戻ると、頬を染め瞳を潤ませたマリ姉とニーニャがベッドの上で待っていた。
しかも、二人は既に生まれたままの姿となっている。
(全裸待機、だと…!?)
豊満な肉体と褐色の肌が艶かしいマリ姉に、透き通った白い肌の華奢な身体に愛らしい三角耳と尻尾のあるニーニャ。
それぞれ異なる特徴の二人だが、どちらもとても魅力的であるのは共通項だ。
俺の欲目もあるだろうが、どちらか片方とだけでも夜を共に出来れば存外と言える美女・美少女だ。
それが二人して「さあ、召し上がれ?」と誘っているのに、「今日は寝る。」と言える男はいるだろうか?
旅の疲れはあるものの、元 Aランク冒険者との特訓の後に比べたら些事だ。
…それに出発の前日を含めて6日。
その日によって変更することは多々あるが、一応決めたペースに当て嵌めると二回分溜まっていることになる。
つまりナニ…何が言いたいのかというと、俺の理性は塵と化したということだ。
空腹の獣の目前に、極上の餌を置いたらどうなるか?
ガバッ!
「きゃ!」
その答えを、今まさにマリ姉がその身を以て証明した。
「あの…ちょっと、ラス君?」
短く可愛いらしい悲鳴を上げたマリ姉が俺の下で戸惑っている気配を感じるが、箍が外れた俺は止まらない。
「あ、やば」
これから何が起きるのかを察したマリ姉の呟きは動き出した俺に遮られ、以降とある宿屋の一室では一晩中二人の女の嬌声が響き渡っていたとか。
…尚、俺たちの泊まる宿屋の壁は、いい値段がしただけに壁が厚かったと言っておく。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
一晩中の行為を終え…というよりは外が明るくなってきたことで区切りを付けたと言うべきか…。
スリスリ…
(不味いな…。)
ベッドに仰向けになっていた俺は、俺の左腕を抱いて眠るマリ姉をちらりと見る。
「うぅん…。」
ぎゅっ…
俺が身動ぎしたのを無意識で感じたのか、艶っぽい声を出したマリ姉は俺の腕にしがみつく。
おおっ、柔らかな弾力が押し付けられて…!
(…って、そうじゃない!!)
こうして無意識にでも縋られるのは男冥利に尽きるというものだが、非常に惜しいが俺は必死に左腕の感触を頭の隅に追いやる。
「不味い」というのがまさにこれで、普段はそこまででも無い
(…筈。)
なのだが、何かしらの切っ掛けがあると歯止めが利かなくなってしまうのだ。
スンスン…
「はふぅ…、ご主人…。」
その度に気絶させてしまうマリ姉の身体も心配になるのだが、それ以上に“ついで”でニーニャに手を出してしまうことが恐ろしい。
ズリッズリッ、
ガシッ!
「ニーニャ悪い、ちょいストップ。」
先ほどから俺の上に乗り身体を擦り付けていたり、俺のにおいを嗅いで恍惚としていたりしていたニーニャの身体を掴んで強制停止。
「むぅ、……何で?」
匂い付けは獣人種の親愛の証。
その行為を止められたニーニャが不満そうに頬を膨らませて見せるが、ニーニャがそれをやっても可愛くしか…。
…とにかく、今はもう勘弁して欲しい。
別にニーニャにマーキングされるのは全然ウェルカムなのだが、今の俺たちの格好を思い出して欲しい。
俺とマリ姉は言うに及ばず、俺たちに交ざっていたニーニャも当然ながら全裸だ。
昨晩あれだけやったにも関わらず男の朝の生理現象は健在で、マリ姉の双丘が押し付けられたことで硬度を増してしまっている。
さらにニーニャのマーキングが頭を胸に擦り付けるような甘えを含む可愛らしいものから、擦り付ける部分が下に向かうにつれ際どいことになってしまった。
大元の原因は俺の異常な精力にあるのだが、マリ姉がダウンしている今その矛先が向くのはニーニャだ。
…まぁ、マーキングの仕方からニーニャはそれを狙っている節がある。
しかしニーニャから求められた際に年齢を理由に断っておきながら、俺が我慢出来なくなったからという理由でニーニャを抱くのは不誠実どころか下種の諸行だ。
(はぁ…、オークってのもあながち間違いじゃないのかもな。)
ナデナデ
「あ…、んっ。」
俺はもて余した精力を鎮めるかのように、ニーニャを抱き寄せてふわふわの毛の感触を堪能したのだった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
「んっ、ご主人…。」
俺に散々撫でまわされ、満足気な表情で眠るニーニャ。
「…それで、こうなったと?」
一方で俺は、代わりに起きたマリ姉の前でセイザをさせられていた。
ゴンッ…
「すんません…。」
一通りの事情…と言っても大したものではないのだが、それを聞いたマリ姉の反応に俺は頭を床に打ち付けた。
「…いや、私もこんな時間まで寝てたからそこまでは…。」
俺の謝罪に、マリ姉は引いたような声音でそう返す。
そう、時刻は既に昼飯の時間に差し掛かろうとしていた。
日は天高く登り、天気は快晴。
そんな日に俺たち〈白の大樹〉は、寝坊と寝不足という冒険者にあるまじき理由により、ダンジョンアタック初回を見送ったのであった。
ラスト「うわ、俺の精力ヤバ過ぎ…?」
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