104 after 1 week (7~10days)
大変長らくお待たせしました。
作中一週間のダイジェストにリアル一週間かかるとは…。
7日目。
リタがギルマスとメリッサさんを連れて訪れ、正式な顔合わせ。
ギルマスは俺がこの街に来た当初から世話になっているし、メリッサさんはつい先日に主にリタの話をしているので今更感がある。
しかし付き合っている相手を両親に紹介するのは、余程の事が無い限り婚約と同様である。
もちろんながらこの場で本決まりというわけではないが、顔を合わせに来ている時点で前向きな姿勢であるのだ。
そして両親は帰った(ギルマスはメリッサさんに引き摺られていった)が、リタはそのまま残って一晩泊まっていった。
当然ながら何も起きない筈は無く、1対3のベッドファイトが行われた。
…のだが、ニーニャが本格参戦していないとはいえ1対3という数的不利にも関わらず、なんと俺は完全勝利を収めたのだった。
マリ姉とリタの二人を娶ることがほぼ確定していて、現時点でニーニャも俺と番う気満々だ。
嫁が複数いると夜の順番や頻度でトラブルが起こるらしい(貴族に関する噂話より)が、俺は少なくとも現状ではその心配の必要はなさそうだ。
因みに、そんな悩みを解決する貴族御用達の秘薬が存在するのだが、値段が貴族向け価格であることは勿論のこと、主な材料的に俺は遠慮願いたい。
8日目。
いつもの三人にリタを加えた4人で街巡り。
俺達だけだと大通りに面した場所しか行けなかったが、リタが加わったことで穴場的なスポットを知ることができた。
案内役のようなことをさせたリタには申し訳なく思いそれを伝えたところ、リタも俺達の一員として自分の“お気に入り”を共有したかったとのことだ。
世辞かと思ったものの、ニーニャとマリ姉に行く先々で率先して紹介するリタの楽しそうな表情を見て、俺はリタの好意に甘んじることにしたのだった。
リタをリタの自宅に送り届ける頃には、ニーニャとマリ姉とリタの三人はかなり打ち解けていたようだった。
その親密具合に俺は若干の疎外感を覚えたが、「複数の女性と付き合う際の宿命」として呑み込んだ。
…出身地でのトラウマが甦りそうになったが、その晩三人で並んで寝たことで安心したのは単純だろうか?
9日目。
3日目のリベンジに〈初心者の森・深層〉に踏み入れた。
ボスオーガやエレファントボアが揃って討伐されたことで、〈初心者の森・深層〉は修羅の国と化していた。
彼方此方で魔物が縄張り争いを繰り広げており、異種間ならまだしも同種間で争っている場合もあった。
そんな中で落ち着いて狩りなど出来ず、乱入率が脅威の9割超えであった。
あわよくばこちらが乱入して両取りしたいところであったが、思惑を砕かれる形となり即座に撤退。
何とか回収した素材で収入はあったのだが、危険に対してとても見合う利益ではなかった。
たまに消極的と批判されることがある古の勇者の『いのちだいじに』という戦いの方針は、実に理をついたものであることを実感した一日だった。
10日目。
つまり昨日は、先日の〈初心者の森・深層〉から即時撤退したことをギルマスに嗅ぎ付けられて説教からの特訓。
如何に〈初心者の森〉と言えど魔物の領域。
〈浅層〉こそ冒険者でなくとも採集に入れるが、オーガの座する(現在は不在だが)〈深層〉は軽い気持ちで踏み入ってはいけなかった。
冒険者で最も死者が出るのは「初心者」ではなく、初心者から脱却した「駆け出し」なのだとか。
何もかもが未知の「初心者」は未知により死に易いが、未知故に慎重さがある。
しかし未知がある程度既知に変わった「駆け出し」は、“駆け出し”というだけあって調子に乗り始める。
調子に乗ることを一概に悪いとは言えないが“ある程度”の既知というのが厄介で、既知に紛れた未知または調子着いたことで挑んだ未知によって命を落とすのだ。
これは「初心者」の頃に頭角の片鱗を見せた者ほどその傾向にあり(但し突き抜けた才は例外とする)、俺はまさにこのパターンに嵌まる寸前だったのだ。
ランク的には疾うに「駆け出し」から脱却した俺だが、「英雄」だのと呼ばれることを否定しておきながら、やはりどこかで調子に乗っていたのだろう。
でなければ、自ら「俺一人の力では無い」とエレファントボア討伐に関して発言していたのに、そのエレファントボアと同格の魔物が跋扈する〈深層〉に繋ぎの装備で突撃をかますなどという愚行は行わなかっただろう。(ギルマスの説教から抜粋)
何気にギルマスの評価が高いような気もするが、調子に乗ってはいつか取り返しがつかなくなってしまう。
『いのちだいじに』『謙虚に行こうぜ』
これが大事なのだ。
特に俺たち〈白の大樹〉は近いうちにダンジョンに挑む予定がある。
ダンジョンでは俺と同格である Dランク冒険者どころか、C ランク冒険者ですらあっさりと姿を消すのだ。
その危険度は〈初心者の森〉など比にならない。
「気を引き締めないとな。」
俺はそう自分に言い聞かせるように呟き、これから暫くは訪れなくなるであろう馴染みの店のドアを開くのだった。
会社と自宅を往復する日々が後一週間で終わる…。
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