103 after 1week (1~6days)
作中は大雑把に10月半ばくらいです。
リタと関係を結んでから一週間後。
特注した槍が完成するまでの期間として告げられた日数となったので、俺は再び独り街へと繰り出していた。
この10日間本当に色々とあった。
リタと関係を持った翌日は口座から現金を引き出そうとギルドに訪れたら、申し訳なさそうなリタにギルマスの執務室に案内された。
執務室にはオーガの形相を浮かべるギルマスが居て、リタの件についてねちねちと嫌味を言われた挙げ句、特訓と称して修練場でボコボコにされた。
俺も抵抗しようとはしたのだが、元 Aランク冒険者相手には録な抵抗も許されなかった。
リタが何故申し訳なさそうにしていたのかが、(物理的に)痛い程分かった。
…てか、ギルマスの職権乱用が甚だしい。
そしてその晩は、俺がリタと関係を持ったと知ってからずっと不機嫌だったニーニャが俺の部屋に押し入って来て、ニーニャのあの手この手の誘惑から一晩中必死に理性を保つ羽目になった。
こういう時にマリ姉がいれば少しは楽になるのだが、過去の一件からマリ姉はニーニャの味方であるのがほぼ確実であった。
…リタとはいつの間にか話をつけていたとは言っていたが、実はマリ姉も俺に怒っていた可能性も十分にある。
とりあえずニーニャは俺が一晩中相手をしたことで機嫌は直り、朝一で土下座する俺にマリ姉は目を白黒させることになっていた。
2日目の昼には特訓の件でリタの母親であるメリッサさんが謝罪に訪れ、その流れでリタの過去話をニーニャとマリ姉の三人で聞いた。
その話の中で家族三人で〈初心者の森〉にピクニックに行った際、花の群生地にいたゴブリンに不用意に近付いたリタが俺と同じような体験をしたことを知り、俺はなんとも居たたまれない気持ちになった。
似た体格の人の子供がゴブリンに仲間と勘違いされやすいことでたまに起こる事故らしいが、リタが無事であったことに滅多に祈らない神々に感謝した。
3日目は〈相棒に屋〉で繋ぎで買った10万ゴールドの槍を手に狩りに出るも、成果は振るわず。
ギルドで話を聞いたところ、スタンピードで数が激減したことに加え、生き残った魔物は人を警戒して避けるようになっているらしい。
またこれから訪れる冬に備え、一部の魔物は既に巣籠もりに入っているという。
「それは…、困ったな。」
別に魔物が狩れなくとも、一冬くらいなら俺が貰ったスタンピードの報酬だけでも余裕で越せる。
スタンピードで自分の無力さを痛感した今、俺にとって重要なのは金よりも戦闘経験だった。
「…でしたら〈迷宮〉はどうでしょうか?」
俺が話を聞いていた受付嬢…つまりリタが、悩む俺にそう提案してきた。
確かに〈迷宮〉なら時期に関わらず、また乱獲なども気にせず魔物との戦闘経験を積むことが出来るだろう。
しかしいくらパーティーリーダーと言っても俺の一存で〈迷宮〉に行くことは決められず、まずはニーニャやマリ姉と相談する必要がある。
二人なら特に反対はしないだろうとは思うが、戦闘経験を積むというのは俺の我が儘だ。
それに…
「リタはそれで良いのか?」
〈迷宮〉のある〈迷宮都市・ラビリンス〉は、この街からは馬車でも片道半月はかかる遠方にある。
俺はそんな無責任なことをするつもりは無いが、逃げようと思えば逃げることは容易なのだ。
「はい、私の我が儘で受け入れて貰いましたから。
…それにラストさんのことは信じていますよ?」
俺の意図を正確に受け取って尚、迷いなくそう答えたリタ。
リタとしてはそんなつもりは無いのだろうが、そんなことを言われては帰って来ないわけにはいかなくなる。
裏を返せばそれだけリタに信用されているということだが、何度か死にかけている俺にとっては中々のプレッシャーだ。
「勿論だ。
…それでギルマス、いやオットーさんに頼みたいことがあるんだが─」
俺はリタに頷き返し、ギルマスへの私的な頼みをリタに伝える。
「─ということなんだが…。」
「はいっ、お任せ下さい!」
ドンッ!プルルンッ
俺の用件を聞き終え、「任された!」というように胸を叩くリタ。
その際に激しく揺れたリタの胸部に、併設された酒場で酒盛りを始めていた冒険者達の視線が集まったのは言うに及ばずだった。
4日目。
前の晩の内にニーニャとマリ姉には〈迷宮〉行きの相談をし、狩りに出ても成果を期待出来ないならばと修練場で訓練。
俺 V S ニーニャ&マリ姉で手合わせを行ってみたのだが、ニーニャの素早さとマリ姉の魔法による的確な援護に翻弄されるという結果となった。
帰宅後には予想通り、すんなりと〈迷宮〉行きが決まった。
5日目。
この日も訓練。
組み合わせを変えたり三つ巴での手合わせを行った。
三つ巴戦以外では盾役として動いていたのだが、対象の前に瞬時に移動する『割り込み』というスキルを習得した。
これで俺の目に見える範囲でという制限はあるが、ニーニャやマリ姉を危機から守る手段を一つ手に入れた。
6日目。
この日は休息日。
…の筈だったのだが、マリ姉とニーニャの希望で例の高級宿で一泊。
休息の意味を完全に無視した一日を過ごしたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




