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Ep.62 オープニングセール その25

●前回のあらすじ:

営業マン風の男は工房での修理の交渉に詰まった。

しかし店主が現れて何とか話を取り付けた。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに

・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?

●その他の人物:

・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)

・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。


本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。

 店主と営業マン風の男が店に戻ると、ギルドの姐さん達は引き連れてきた冒険者と共に帰った後だった。


「社長、ただいま戻りました。商品は……そこそこ出たみたいですね」


 軒先の陳列台は隙間が目立っていた。

 地味な女社長もそれを眺めて、複雑な表情をする。


「そうね。お客さん、連れてきてもらったからね。本来なら喜びたいところなんだけど……」


「商品を修繕して在庫確保を急がなければならない今は、そうも言ってられない……」


「そうよ。このままだとセール期間終了を待たずに売るものがなくなっちゃうわね。で?工房はどうだったの?」


 営業マン風の男は頷いた。


「はい。店長さんが手土産に酒と生ハムの塊を渡したのが効いて、修理受付と値引きの確約はもらいました。酒と肉を経費で落とすかは今後の検討事項ですが、今日中に数点の修理を引き受けていもらい、明日に進捗を確認して修理のペース配分を決定します」


「に、肉?とにかく、やってもらえそうで良かったわ。ご苦労さま」


 報告が一段落すると、店主が促す。


「さあ、すぐ商品を選別しましょう」


 店主と営業マン風の男は、社長に一礼すると足早に在庫部屋に移動し、収納した破損品を選別し始めた。

 店主は刀剣類を指しながら言った。


「今日は三点だけと言われました。しかし、まず防具を三点選んで、更に刀身にキズがついただけの刃物は全部持っていきましょう」


「そんなことして大丈夫ですか」


「ええ。工房を見て気がついたのですが、大量の依頼というのは、おそらく軍の鎧です。定期的に補充があるのでそれでしょう。ところが、軍は発注先の分散化のために、武器は他に依頼するのが通例です。と言うことは、工房の武器部門、特に鉄を打たない研ぎ師さんは手が空いてます」


「なるほど!そういうことですか!」


「はい。じゃあ、もし親方に突っ込まれたら、今の感じで説明してみて下さい。きっと見直してもらえます。私は店でお客さんの相手をします。社長も武器のことを知らないのに接客して下さって大変だったと思いますから。じゃあ、あの高い肉を経費にする件は、よろしくお願いします」


「……はい。店長さん、ありがとうございます!経費の件は後で検討します」


 営業マン風の男は先程来た道を戻り、再び工房へとトラック型魔導車を走らせ、工房に押しかけると、運んできた破損商品を親方の目の前にドザっと広げた。鎧と盾、単品の兜が一点ずつの他に、風呂敷包みが解けて刀剣類がじゃらりと広がった。


「おい!持ってくるのは三点て言っただろ。何考えてんだ」


「お忙しいところすみません。ですが拝見したところ、軍からの防具のご注文だとお見受けしました。であれば、研ぎ師さんは比較的お手空きかと思い武器を多めに持参しました」


 親方は少し考えると薄笑みで話し始めた。


「……ほう。よく見てるじゃねえか……って言いたいところだけどな、どうせ|店長≪アイツ≫」に吹き込まれたんだろ?厄介事を増やしやがって、とんでもねえヤツだな」


 乗っけから速攻でバレてしまった。


「うっ……、やはり、私からお願いしたのでは厳しいでしょうか。何とかお願いできませんか」


「ああ、正直アンタは気に食わねえ。だが、一度やるって言ったし。それに、まあ、何つうかな、アイツとは若い時からの付き合いで、ずいぶん借りもあんだよ」


 親方は、ずいぶん遠い目をした。その目線は、工房の小さな通気窓から垣間見える白い空に向けられていた。


「借り……ですか?」


「ああ。アイツを管理する立場のアンタだから言うが……」


 工房の親方は、そう前打って若かりし日の店主との関係を語り始めたのだった。


「あれは、俺もアイツも二十代のころ。俺がここの工房で一人前にモノを作れるようになって直ぐのことだよ……」

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。


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