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Ep.61 オープニングセール その24

●前回のあらすじ:

営業マン風の男は、工房の親方に破損品リストを見せて修理の依頼をした。

しかし、多忙だと断られてしまった。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに

・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?

●その他の人物:

・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)

・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。


本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。

 営業マン風の男は、親方の背中をただ眺めて固まり、丁稚奉公の少年は、どうしたものかと二人を交互に見ていると、後ろから声がした。


「こんにちは、お世話様です」


 三人は声を振り返った。そこには武器屋の店主がいた。


「店長さん?どうして」


「心配だから来ちゃいました」


 屈託のない笑顔だ。親方の横まで歩いてきた。


「忙しそうだね。景気いいの?これ、お土産」


 店主はそう言うと、大型草食動物の肩か腿だろうか、ロープで縛られた大きな生ハムのような塩漬けの肉塊をかざしてみせた。それを鍛冶道具の置かれた台にドンと乗せ、続けて左手に持っていた酒瓶をその隣に置いた。


「お?悪いね。まあ、ちょっと量がある依頼が入ってね、へっへっへ」


 親方は肉塊を見て明らかに表情が緩んだ。灼熱の鍛冶場務めは汗だく。塩味と旨味が強い食べ物を目の前に、思わずジュっと唾液が滲む。


「それより、暴漢で店やら商品やら大変だって?一体どうしたんだよ」


「それがさ、この前、冒険者に殴られたでしょ?助けてくれたギルドの連中がその野郎をシメてくれたのはいいんだけど、逆恨みで店に来ちゃったんだよ。それでもうぐちゃぐちゃ。これ見てよ」


 そう言うと、背負いカバンから取り出した兜を目の前に出した。その兜は無残にもめっこりと凹んでいる。


「あ、ひでえな。これさ、開店祝いに気合い入れて作ってやった甲冑のやつだろ?どうすんの?修理か?」


「うーん。まあ、でもそんなに忙しいようだと、ちょっと修理を頼むのは難しそうだし……。でも、ここで作ってもらったのを他でって訳にもいかないし、困ったな」


「何だよ。水臭いこと言うなよ。そりゃさ、忙しいには忙しいけど、あんたが理不尽な目にあってるのに、何もしないなんてことはないんだぜ?」


 その言葉に営業マン風の男の目は泳いだ。さっきは頼み込んでもだめだったのに、こうも簡単に話が進んでしまった。どうして俺じゃダメなんだ。またしても役に立ってないじゃないか。

 そんな動揺など知らんとばかりに、親方は営業マン風の男に手を差し出して破損品リストを受け取り、まじまじと見つめた。


「改めてひでえな……。分かった。とりあえず何でもいいから今日中に三点持ってきてくれ。そして、それを明日取りに来てくれ。後のペースはその時に相談だ」


「え?いいの?さすがだね。助かるよ。でさ、修理代なんだけど……」


「分かってる、分かってる。開店祝いもかねて負けとくからさ。とにかく持って来てくれ」


 さっきは修理は受付できないと言ったじゃないですか!営業マン風の男のは心で叫んだ。それなのに、あっさり翻ってしまった。やっぱり、自分は役に立たないのだろうか。雰囲気良く話し合う二人の後ろで、そんな思いを押し殺していた。


「……ほんと助かるよ。じゃあ今日中に運んでくる。よろしくね」


 こうして、二人は工房を後にした。店主は魔導二輪で来ていたので、その車両を営業マン風の男が乗ってきたトラック型の魔導車の荷台に格納し、二人揃って店に戻っていった。


「やっぱり、私では役に立たないのでしょうか。店長さん交渉したら、あんなにあっさり」


「そんなことありませんよ。付き合い長いだけです。あ。でも、職人さんは、いきなり紙資料をみせても話きていもらえないかもしれせんね。やっぱり現物が効きます」 


 店主は兜の入ったカバンを笑顔で指さした。


「……本当にそれだけでしょうか。やはり私の交渉力が……」


「そんなに落ち込まないでください。それより……」


「それより……?」


「さっきの手土産の肉の塊、経費で落としてもいいですか?けっこう良い値段しましたよ」


「え!?」

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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